テイラーと並び称されるべき経営学者H. Fayol(ファヨル)は、フランス語がボトルネックとなってか、あまり注目されていません。今回は、そのファヨルによるマネジメント論をご紹介します。
PDCAサイクルの元祖
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.ファヨルは、マネジメントはトップ経営者の独占的特権ではなく、トップ経営者以下の管理職層の従業員とともに分担されるべき職能の1つであると唱えた。
2.ファヨルは、多くの現代組織で採り入れられている「命令一元化の原則」を唱えたことからテイラーより先見の明があったと思われる。
- ■マネジメントとは何か
- ファヨルが最も偉大だった点は、「管理」(management)を正確に位置づけ、それが何であるかを明らかにしたことです。
- マネジメントは、今では経営者の仕事であると一般には考えられていますが、彼によれば、マネジメントはトップ経営者の独占的特権ではなく、トップ経営者以下の管理職層の従業員とともに分担されるべき職能の1つである位置づけています。このような考え方は当時としては革新的なことでした。ファヨルは『産業並びに一般の管理』という書物の中で、「管理すること」は、予測し、組織し、命令し、調整し、統制する、一連のサイクルであると述べています。
- ■マネジメントのサイクル
- 「予測」は計画とも呼び代えられます。将来を検討し、活動の計画を立てることです。「組織」することとは、権限と責任の構成員に割り振ることです。「命令」とは、計画を実行させ、従業員を作業に就かせることです。「調整」とは、組織活動と構成員の努力を結合し、調和させることです。そして「統制」することとは、監視と修正をすること、即ち、全ての活動が確立された基準にきっちり則って命令どおり行われているかチェックすることを指しています(佐々木恒男『ファヨル』文眞堂、2013年)。
- ■PDCAサイクルを考案した人物
- お気づきのように、こうしたマネジメント活動は、今風にいうとPDCA(plan, do, check and action)のサイクルにほかなりません。昨今、実務上のいろいろな局面で、「きっちりPDCAサイクルを廻すことが重要だ」などと言われているのを耳にしますが、ファヨルがその淵源であることに思いを馳せる人は、残念ながらほとんど居ないでしょう。この意味で、ファヨルは、その重要性にもかかわらず正当な評価を受けていない人物と思えるのです。
- ■先見の明があったファヨル
- ファヨルは数多くの「管理原則」を編み出したことでも有名です。その中には互いに相矛盾する原則も含まれていたため、ファヨル学説は「理論性に乏しい」と揶揄されることにもなったわけですが、実はこの管理原則の中にも、テイラー より先見の明があったと思われる原則が含まれています。いわゆる「命令一元化の原則」です。
- ■命令は1人の上司から
- 周知の通り、この原則は、従業員が仕事をする上で、唯一の責任者以外から命令を受け取ってはいけないことを指しています。ファヨルは対立する命令系統が他にあってはならないと明言していますが、実はテイラーはその逆でした。
- テイラーは、あたかも一人の教師が全科目を教える小学校のような学校と比べて、異なる科目ごとに専門の教師が教える中学や高校のような方式が能率的であり、1人の労働者は、職能ごと(製造、コスト、検査など)にそれぞれ別の上司から命令を受けるべきだと主張しています。
- しかし、歴史を見ると、多くの現代組織はファヨルの主張のとおりになっていることが窺えるでしょう。経営学の祖は、テイラーだけではなくファヨルも含め、双璧として理解すべきといえるでしょう。