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ENERGY vol.13(2024年春号)掲載

PICKUP

ビジネスパーソンの成長希求~個人目線のリスキリング

「組織本位」で語られがちな従来のリスキリング

リスキリングへの関心が高まり、組織としての取り組み事例や、人事としてのノウハウなどは目にすることも増えてきています。
一方で、肝心の「ビジネスパーソン自身」が今、どんな教育を受けたいかについて調査・議論されることは、あまり多くありません。
この背景には、日本国内の企業文化に根強く残る「教育は会社が提供するもの」という考え方があります。日本の社会人教育は、会社が費用を負担し、業務時間内で行うのが一般的です。そのため、組織が導入するリスキリング施策についても、組織の経営層や人事部長、研修担当者の意向が反映されやすくなります。

ホンネの成長希求

昨今では「キャリアは組織に任せず、自分で築くべきもの」という考え方も浸透しはじめ、リスキリングにおいても、個人が自己実現のために選択する時代に移行しています。インソースにも「カフェテリア形式」「手挙げ制」と呼ばれる、選択型教育の導入に関するお問合せが増えています。
こうした制度を導入する際に、「従業員自身がどんな教育を受けたいか」というアンケートをとったとしても、回答者は回答内容が経営層や上司の目に触れることを懸念し、ホンネを書かないということが想定されます。
そこで本記事では、インソースが公開講座の受講者さま1,547名に対し、回答内容を所属組織へ一切開示しないことを前提に、第三者として収集した「受けたい教育」に関する調査結果をまとめます。(図1参照)

図1:研修ジャンル別リスキリング需要

ITスキルは「Microsoft Office」と「トレンド」がカギ

受けたい教育の内容で、最も多かった回答がITスキル(31%)です。中でもMicrosoft Officeの3つのソフト(Word・Excel・Power Point)に関する教育を受けたいという声が、最も多くなりました(25%)。自由記述の回答の中には、「Excelでのデータ分析方法を知りたい」「Wordの操作方法中級:インデントや行間の設定、罫線の編集」など、全くの初心者ではない「初~中級者」のスキルが求められています。
その他ITスキルの中には、プログラミングの学びはじめに人気の言語「Python」、話題のBIツールの使い方、生成AIなどが挙がっています。常にアップデートされ続けるIT活用のトレンドをおさえたい、というニーズが読み取れます。
インソース公開講座でも2023年にリリースした「ChatGPTのはじめ方研修」が大変な人気を博しています。非エンジニアにとって無縁だった「システム開発」「業務の自動化」なども身近な存在になりつつあります。今やITリテラシーや普遍的なツールの使い方は、日本語や数字と同じように、ビジネスシーンの共通言語として当たり前に必要なものになっていると言えます。

参考:ChatGPT のはじめ方研修

「汎用スキル」を求める現代のビジネスパーソン

ITスキル以外では、コミュニケーション・文書作成・マーケティングなどの「汎用的なスキル(ポータブルスキル)」への関心が目立ちます。
これらは、多様なビジネスシーンで必要となる対人能力や戦略策定力、プロマネ力などと直結し、「どこへ行っても通用する人材」になりたいという欲求が表れています。

「時間がない」を解決する、平日夜間(18時以降)の教育も20%選好

業務に係る教育を実際に受ける時間帯は、当然のことながら「業務時間内」の「平日/日中(10~17時の間など)」(44%)が最も多い結果となりました。
ただ現実的には、誰もが業務を調整して受講できるわけではありません。特に、忙しいリーダー・管理職の方や、勤務中は物理的に現場を離れることができない業種・職種の方もいます。
そこで気になるのが、次点で20%となった「平日/夜間(18時以降など)」という選択肢です。業務時間外であれば、休日よりも、主業務の延長上で受けられる平日夜間研修などの方が、負担が少ないと感じる方が多いようです。
リスキリングを推し進めるうえで必ず出てくる「時間がない」という課題に対し、夜間が選択肢の一つになりうるという事が分かります。(図2参照)

図2:リスキリングの希望時間帯(複数回答あり)

組織と個人の課題を浮き彫りにする「思いつかない」という回答

ここまでの内容とは別に、もう一つ気になるのは、全回答者の一割弱を占める、受けたい教育が「ない」「思いつかない」といった回答です。もちろん、多くは「自分が現在の状態で完璧であり、教育を受ける必要はない」とは考えていないでしょう。そのうえで「ない」といった回答が出るのは、回答者が「目指すべき姿」や「その姿と現在の自分とのギャップ」、いわゆるキャリアパスを認識できていない、ということに他なりません。
この点については、組織と個人の双方に、改善点があると考えられます。組織やチームの上長は、個人の目指すべき姿や、求めるスキルを因数分解し、スキル習得の手段とともに明示する必要があります。一方で、個人は、現状に安住しては生き残れないという危機意識を高め、常に成長意欲を持ち続ける必要があります。

個人ニーズへの感度が明暗を分ける

今回はインソース公開講座の受講者さまに対してアンケートを行い、個人の目線からみた「今」のリスキリングニーズを読み解きました。しかし、外部環境が変われば大きくニーズや教育手段も変化するため、最も大事なのは情報感度です。
大手の動画共有プラットフォームをはじめ、現代では手軽に無料で知識を吸収できます。そんな中で、組織が個人のニーズに応える教育を用意するためには、「目指すべき姿の明示」「必要な知識とスキルの明確化」「必要な手段の情報提供(レコメンド)」「必要性の啓蒙」などが重要です。
まずは組織と個人の双方に明確にメリットがあるIT教育の充実などから、「現代組織のリスキリング施策」をはじめてみてはいかがでしょうか。

文/小林 洸

株式会社インソース事業推進室上席チーフ。早稲田大学基幹理工学部卒。広告・販促の代理店にて、Webプロモーションの立案と進行管理に携わる。2018年インソース入社。自社のマーケティング・営業に携わりながら、Officeや生成AIなどの研修の企画開発と登壇を行う。2023年10月より現職。

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Vol.13 リスキリングの今

vol.13は「リスキング」がテーマです。ビジネスパーソンへの教育で今注目されている「リスキング」。激動の時代に対応するためにも、組織が理想とするリスキングを確立させていくことが求められます。 本誌では、組織、個人、人事・研修担当それぞれがリスキングをどのように捉えているのか、アンケート調査などから浮き彫りにしていきます。

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