【講師より】
近年、公正取引委員会(以下「公取委」という。)が、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)の運用に力を入れていることは数字上も明らかである。例えば、平成30年度は上半期だけで5,000件を超える公取委による指導が実施されており、平成30年度全体を通せば、過去最高の数字になることが予想される(現時点での最高件数は平成29年度の6,752件)。下請法違反の行為がいかに無自覚に行われているかの証左といえるであろう。
加えて10月からは消費税の税率が10%に引き上げられることが予定されており、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(以下「消費税転嫁対策特別措置法」という。)の運用も強化されることが予想される。現に、消費税転嫁対策に向け、公取委の来年度の予算の増額及び人員の増員が認められている。
このような下請法、消費税転嫁対策特別措置法の積極的運用とその強化が予想される中で、それを座して待つのではなく、公取委等の調査が入る前に自ら違反行為の芽を摘み、是正を図る体制を普段から整えておくことこそが、企業の本来のあるべき姿ではないか。
そこで本講演では、かかる本来のあるべき姿を目指すための道しるべを示したいと考えている。具体的には、公取委等の調査対応の経験や下請法・独禁法セミナー等で寄せられた現場の声を踏まえた、運用実務に沿った下請法及び消費税転嫁対策特別措置法の解説をし、まずは両法の全体像及び相違点を把握していただくことを目指す。
そして、そこから一歩進め、受け身の法務からの脱却を目指し、下請法及び消費税転嫁対策特別措置法違反行為を認識した場合の対処方法やかかる違反行為の芽を摘むために整えておくべき社内体制構築のヒントなどもご提供し、攻めの法務を実現する方策をご提案したい。
さらに、参加者の皆様とのディスカッションなども行い、多方面から両法をとらえ直す機会をご提供したい。