銀子の一句インタビュー 評価者研修を訪ねる~|シルバーWEBライター銀子さんの研修川柳

評価の目的はランク付けではなく育成


銀子

どこの組織でも既に人事評価を行っていると思いますが、ことさら外部の研修が必要ですか?


K氏

必要だと思います。多くの組織では人事評価に関するマニュアルがありますが、特に外部の研修は実施せず、内部で管理職に昇格した方に向けて、マニュアルの説明会を実施するのみという組織もあります。
しかし、評価者に対する研修を実施しないと、評価が処遇のためだけで、人材の育成になかなか結び付けていかないと思います。
そういった意味で、期末の評価面談でしっかりと育成に結びつくフィードバックをできるようにするための研修や、人事評価を育成に結びつける意識付け、適切な目標設定を行うための期初の面談、評価エラーや評価者間の甘辛是正などを目的として、評価者研修を実施するのは効果的だと思います。

銀子

なるほど、そうですね。評価者研修には、どんな方が受講されていますか?

K氏

受講者は新任の管理職の方が受講者となることが多いです。30代~40代を中心に、管理職への昇格が早い組織だと20代の方もいらっしゃいます。

公平な評価を行うために必要なこと


銀子

はあ~。それにしても、他人を評価するというのは気が重いですね。個人の将来に関わることですから。評価に大事なポイントはどんなことですか?


K氏

評価者は管理職の仕事の中でも責任が重大な業務ですね。ただ、あくまでも仕事に対する評価で、その人の人格を否定するわけではないので、そこは割り切りが必要です。
被評価者に悪い評価を期末の面談で伝えなければいけないこともあると思いますが、その際は、しっかりその期間頑張ったことは労って、ただ、「この目標に対してここができていなかった」「この業務のこの部分に不安があるのでこの評価となった」など、悪い評価を付けた根拠を具体的に、できれば相手も納得できるように話さなければいけません。
そのためには期中に部下の様子をしっかりとみて、その成果をきちんと把握していなければいけません。
評価で大切なことはたくさんあると思いますが、第一といえば、やはり「部下のことをしっかりみる」ことでしょう。

銀子

評価を「公平」にすることは大事だと思いますが、完全に「公平」な評価というのはあり得るんでしょうか?

K氏

銀子さん、鋭いですね。
評価の「甘辛」といいますが、評価が厳しい方、甘い方というように評価者の間のレベル感のズレは、評価にまつわる永遠の課題ですね。
すごく評価に熱心な組織ですと、2泊3日ぐらいでホテルに評価者が缶詰となって(コロナ禍ではありえないですが......)、評価者一人ずつ、どのような根拠でこの評価を付けたということを発表し、みんなで共有する「すり合わせ会議」を行うこともあるようです。
長期間、缶詰にされることは評価者=管理職の方に大きな負担になると思いますが、効果は抜群だと思います。
弊社では、その「すり合わせ会議」を半日から1日のワークショップにした研修を開発しておりますので、興味のある方は、カリキュラムをご覧ください。

■評価者研修 ~評価基準ブラッシュアップ編(1日間)

これからの評価の在り方


銀子

今後は、働き方も雇用も変わってくると思います。これからの評価の在り方はどうなるのでしょうか?


K氏

そうですね。昨今の社会変容で、リモートワークが増えてきて、今後もその傾向は続くと思われます。
リモートワークは、部下の行動の観察などができないので、プロセスは加味せず、成果だけで評価が決まります。
従来の評価はどちらかというと、成果よりプロセスを重視する、成果としては「×」だけど、よく頑張っていたし、プロセス的にもやるべきことはやっていたと思うので「△」にしてやるか~といった温情を加味した日本的評価でしたが(さすがに×が〇になることはありませんが......)、リモートワークでは成果主義的になってくるでしょうね。
下駄を履かせて△にするというあいまいなことはなく、○か×か、できたかできなかったか成果のみで判断する評価になると思います。
先ほど、銀子さんから「完全に公平な評価はありますか?」という話がありましたが、この冷たそうなリモートワーク下での評価は、別の角度からみれば、成果・事実のみで判断する、評価者の間の甘辛なんか全く入る隙もない「完全に公平な評価」といえます。「公平」というと暖かそうなイメージ・印象がありますが、こういった無機質な側面もあります。

話は変わりますが、成果だけでみる評価になれば、誰がみても同じなので、評価者=管理職が評価をしなくてもよくなりますね。管理職がいらなくなってしまいます。
機械でもできるようになるので、人がいらなくなるともいえるかもしれません。
少し話が飛躍するかもしれませんが、今後、この評価のように、管理職の仕事がなくなって、バーチャルAI管理職なんかも誕生しそうですね。

銀子

どういうことですか?

K氏

これからは管理職や先輩に教えてもらうということは少なくなっていき、自ら成長を管理するということも多くなりそうです。
例えば、自己診断ツールがあり、自分でコミュニケーションや論理力などのテスト・アセスメントを受けて、自分の現在の知識・スキルの立ち位置を把握する。
またそれと同時に、自己診断の結果を踏まえて、課題の克服、成長のためにどのような教育プログラムが必要かを提示される。そしてそのプログラムを受ける。
その後また、テスト・アセスメントでBEFORE、AFTERをチェックする。さらに課題や次のステップの成長を図るプログラムが提示される......
といったように、そして、たまには同じレベルのスキルの人などが集まって、議論したり、共有したりして気付きを得る。

将来の教育システムはこんな感じになっていきそうですね。管理職がいらなくなりそうです。

銀子

なるほど。話を評価に戻しますが、何か評価者の方にメリットがありますか?

K氏

評価者は日頃から部下の動きを見ている必要がありますから、まず観察力が養われます。
また、面談の際のフィードバックで、説明する力や伝える力も評価を通じて養われることが評価者のメリットではないでしょうか。
ただ管理職はメリットがないとやらないということは許されないポジションですが......。それはともかく、評価を通じて学べるスキルは、評価期間だけでなく、普段の部下指導や育成でも役に立つことが多いですね。

銀子の眼

ビジネスパーソンはどのように育つのか。今まで、深く考えたことがありませんでした。評価は冷たい採点のような印象でした。しかし、評価は正しく機能すれば、企業成長の資源である人間を成長させる、よくできたシステムでした。評価者は、育成者でもあるんですね。

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