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ガニエの9教授事象
「ガニエの9教授事象」とは、人が新しい知識やスキルを習得する際の脳内のメカニズムを分析し、学習効果を上げるために必要な外的な働きかけを9つのプロセスに整理した学習支援モデルです。アメリカの教育心理学者ロバート・M・ガニエによって提唱されました。主に教育の現場で行う授業や教材づくりのために使われていましたが、ビジネスの分野においても、目標を整理して効果的な研修を行うためのインストラクショナル・デザインとして活用されています。
この9つのプロセスは、以下4つのステップに分類できます。
■ステップ1:導入
① 学習者の注意を喚起する:
学習テーマに関するクイズなどを行い、学習モードに誘導する。
② 学習者に目標を知らせる:
この学習で、どのような知識やスキルが身につくのか明確に伝える。
③ 前提条件を思い出させる:
今回のテーマに関連する知識やスキルで過去に学んだことを振り返る。
■ステップ2:情報提示
④ 新しい事項を提示する:
新たな資料を配布し、今回学ぶ内容を示す。
⑤ 学習の指針を与える:
図やイラスト、言い換えなどを使ってポイントを整理して伝え、理解を促す。
■ステップ3:学習活動
⑥ 練習の機会をつくる:
ロールプレイングなどを通じて学んだ知識をアウトプットさせ、定着を図る。
⑦ フィードバックを与える:
間違った部分や理解不足の部分に対するアドバイスを与え、不安を取り除く。
■ステップ4:まとめ
⑧ 学習の成果を評価する:
筆記や実技テストを行い、目標の達成度合いを見える化する
⑨ 保持と転移を高める:
学んだことを今後に活用できるよう、ノートなどに記入させる。
研修の内製化を検討している企業なら、このガニエの9教授事象を参考にして企画をするのがおすすめです。また、すでに実際に上記の流れで研修を実施していて、期待するような教育効果が表れていないとしたら、この9つのプロセスのうちで見直す点がないか検証するとよいかもしれません。学習のポイントが一見して分かる資料を作るための図解力スキルや、受講者のやる気を引き出すフィードバックの仕方など、ポイントを絞って改善を図ることができます。
なお、ドイツの心理学者H・エビングハウスが提唱した「エビングハウスの忘却曲線」によると、覚えた知識を長期記憶として定着させるには、学習から1か月の間に学んだ内容を思い出すことが重要とされています。1度の研修で学んだことを完全に忘れてしまう前に、研修内容の振り返りを行う仕組みを作っておくのも、定着度を高める工夫の一つです。