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大退職時代(グレート・レジグネーション)
世界中を襲ったパンデミックの到来。感染を避けるため、相手との距離を保ち、行動を制限され、親しい人とも会えない状況の中で、多くの人がストレスを感じました。同時に、人々が働き方や自身の価値観を見直した時期とも言えます。
感染症対策としてリモートワークが推進されたことにより、今までと同じ働き方でなくても良いのかもしれないと気づいた人も多いのではないでしょうか。以前より問題となっていた人手不足に加えて、人々の価値観が大きく変化した今、かつてないほど転職・退職を考える人が増加傾向にあります。このような時代背景を称して、テキサスA&M大学経営大学院のクロッツ准教授は大退職時代(グレート・レジグネーション)と命名しました。
企業が優秀な人材獲得にしのぎを削る中、せっかく採用した人材が早期に離職してしまうケースも多くなっており、人材の定着が大きな課題の1つとなっています。
そんな中、人材のリテンション(離職防止)について、現場管理職ができるアプローチがあります。潜在的な退職希望者の変化に早期に気づき、引き留めるマネジメントが注目されています。
多くのビジネスパーソンは、自分が目指す働き方が、今の組織では不可能だと感じると、転職や退職を考えてしまいます。定期的に対話を持つことで、個々の持つキャリア計画を理解し、今いる組織でも目的が達成できるという見通しを部下に与えることが効果的です。
また、多様化する働き方の中で、在宅で仕事がしたい、ワークライフバランスを見直したいなど、収入以外に人生の重点を置き始めた人材もいます。仕事をする上でのモチベーション・トリガーを聞き出すこともポイントです。
若年層の従業員に対し、キャリア構築やモチベーションを自身でコントロールする教育も効果があります。中堅層の従業員に対しては、役割期待に応えるためのマインドセットや、仕事を自ら面白くする工夫を教育しましょう。どの年代にも言えることですが、やりがい・働きがいを自分で見出していける人材を育成することで、ワーク・エンゲージメントを確保できればリテンションに大きく寄与します。与えられるだけでなく、自ら人生とキャリア構築を考えられる人材を育成し、導くことが必要です。
優秀な人材をつなぎとめるために、賃上げや待遇改善だけでは限界があります。しかし、ハラスメント防止や心理的安全性が保たれた環境の整備など、退職理由になる要因を除去するためにできることはまだまだあります。働きやすく、自分らしく成長できる環境であると実感できる組織を、メンバー全員でつくっていきましょう。
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