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ペーシング
ペーシング(pacing)とは、話す速度・声の大きさや高低、あいづちやうなずきの頻度・タイミングなど、非言語的な伝達によって信頼関係を生みだそうとするコミュニケーションスキルです。本来は心理学用語で、カウンセリングの手法の一つとして知られていますが、現在ではビジネスの分野でも広く用いられています。
社会のダイバーシティ化が進み、多様な価値観を持つ人材が集まる現代の組織において、同じ目標に向かって力を一つにしていくためには、相手の価値観や背景を尊重しつつ、言いたいことを安心して言い合える信頼関係の構築が欠かせません。
安心してコミュニケーションが取れる信頼関係のことをフランス語で「ラポール」と呼びます。このラポールを構築するうえで有効なスキルの一つがペーシングです。
具体的には、相手の話すスピードに合わせて話をする、相手が大事なことを言っていると感じた時には「間」を取る、などを意識的に行うことで、こちらに対して安心感や親近感を持ってもらえるようになります。ペーシングによって相手との間にラポールが構築されることで、こちらの提案に対して警戒心を抱かずに素直に受け入れるマインドが醸成されます。
他にも、ラポールを構築するのに有効なスキルとして、以下の3つがあります。
①ミラーリング:しぐさや表情などを鏡のように、不自然にならないように真似る
②バックトラッキング:繰り返しやオウム返しなど、相手の言葉を用いて話す
③キャリブレーション:相手が無意識に発するサインから、相手の心情を察知する
(例:相手が「大丈夫」と答えていてもうつむいたまま、ため息をついているなど)
これらのコミュニケーションスキルは、顧客との交渉やクレーム対応、職場での部下指導、プレゼンテーション、チームビルディングなどの場において効果を発揮します。しかし、作為的に相手の口調や仕草を真似するだけでは、逆に不誠実な印象を与えかねません。相手の話を"傾聴"し、心を寄せている姿勢を分かりやすく伝えるテクニックとしてこれらのスキルを駆使することで、より円滑で深いコミュニケーションの実践へとつながります。
誠実な気持ちで相手に接する、この大前提を改めて心に刻んだうえで、ペーシングを上手に活用することで、相手との「心の速度」も合わせながら協働していきましょう!