データ分析の重要性を語る② 戦略的に企業再生をはかるためのデータ分析の方法
【語り手】
インソースマーケティングデザイン
専務取締役 井東 昌樹
・三和銀行(現三菱UFJ銀行)で国内外の営業などに従事したのち、中堅アパレル企業や上場外食チェーンなどいくつかの企業で企業再生などに取り組む
・2009年にインソース執行役員営業本部長に就任後(2010年に取締役)、業績拡大や株式上場などを手掛ける
・その後、地元新潟にUターンし、2018年に株式会社イタリア軒(創業150年の老舗ホテル)の代表取締役社長に就任
・現在は株式会社インソースマーケティングデザイン(以下、IMD)の専務取締役として、IMDの経営に従事している
「企業経営において何よりも重要なことはデータ分析です」と語る、IMD専務取締役の井東 昌樹氏。
井東氏が過去に手掛けてきた企業再生の経験談と共に、なぜデータ分析が重要なのか、データはどう見るべきなのか、どんなデータをいかに分析するべきなのか、さらにそれをどう活かせばいいのか。データ分析を活かした売上を上げる方法の真髄について、語っていただきました。
※インタビュー実施日:2022年12月2日
目次
データ分析の視点は「時系列推移把握」「同業他社比較」「因数分解」の3つ
データ分析というと難しく思えますが、何も細かな分析でなくてもいいです。世の中の大きな流れ、業界の動向などをよく観察し、数字を分析することで、マーケットや消費者のニーズを把握し、仮説を立てるのです。
では、具体的にどのようなデータを、どう分析すればいいのか。それが以下の3点です。
①時系列推移把握
まず、最低過去3年(できれば5~10年)の業績推移を俯瞰し、会社や事業の流れやその背景、原因を知る。そして業績が伸び悩んでいる場合は、業績推移を確認したうえで、業績が落ち込んだ(伸びない)背景を捉えて、対策を検討する。
②同業他社比較
原価率や販管費率、人件費率、在庫回転率そして売り場面積あたりの売上や人時生産性などの主要指標を、同業他社と比較して絶対評価をする。
③因数分解
大きな数字を因数分解して、多面的に捉え、対策を考え、実行する。例えば、売上数字を以下のように分解する。
・客数×客単価
・売り場面積×売り場面積あたり売上
・都道府県別売上、エリア別売上
・事業別売上、商品別売上
・顧客別売上、業種別売上
・取引先規模別売上
など
このようなデータの分析をすることで、いかにして戦うべきなのか、具体的な戦略を立てることができるのです。
数字を様々な角度で分解するだけでアイデアは浮かぶ
私が過去に上記のようなデータ分析を行い実行した例がインソースであり、そして私が今専務取締役を務めているIMDです。
IMDで私がやったことは前述のデータ分析と同じことです。
まず、それまでのIMDの都道府県別やエリア別、顧客別、業種別の売上データを用意し、分析しました。売上という数字をいろんな角度から分解して、そのデータを整理して眺めるだけでアイデアは浮き出てくるものです。
例えば、IMDには多くの取引先があるが、どのような規模のお客様が多いのかをデータ化して、その数字を因数分解する。
すると、どの規模のお客様をメインターゲットにするべきなのかがわかってくる。そこから戦略的な思考につなげていくのです。
売上の3割を占める広告代理店に集中
データ分析と因数分解の結果、IMDのお客様には、広告代理店や大手人材会社、印刷会社などからの委託が多いということがわかりました。そこで、売上の3割を占めていた代理店系の案件に集中して攻める戦略をとりました。
既存の取引先からは、別の営業担当者を紹介してもらって窓口を増やし、それまで取引の無かった広告代理店にも営業をかけて売上アップを狙いました。
他にも、どのような企業規模の会社との取引が多いのかデータを分析してみると、圧倒的に小規模の会社との取引が多いということがわかりました。売上の約8割を占めていたのです。
中小企業向けの低価格パッケージ商品をリリース
IMDはしっかりと作り込むホームページの制作を得意としていた会社で、一件あたり200~300万円、もしくはそれ以上の金額の制作を中心に行っていました。
しかし、取引の数でいえばお客様は中小規模の会社が圧倒的に多い。それなのに、一件200~300万円の受注を取ろうとするのは攻め方が適切ではないと言えます。
主戦場が中小規模なのだから、そういったお客様向けの価格帯の商品を作るべきだと考えました。
そうして開発したのが「まかせてWeb」と「Web広告出稿」です。手間のあまりかからない低価格のパッケージ商品で、簡単なものなら金額は約20万円と低価格ですし、フォーマットがあるので手軽に始められます。
シンプルなアイデアなのですが、それまで、IMDでは全くそのような商品を開発してこなかったのです。このアイデアも、取引先規模別売上のデータを分析したからこそ生まれたものです。