部下育成は立派なプロジェクトです。プロジェクトである以上、現状分析があり、要件定義があり、スケジュールがあります。 他のプロジェクトとの違いがあるとすれば、笑顔で接するとか声かけをするとか、技術力以外のスキルが必要となることだけです。
対象者を現場で考えて動ける自立した人材へと育成するためには、まず上司や先輩である育成担当者が部下育成の本質を正しく理解することが不可欠です。 ものづくりの理念や考え方、そして所属する組織の理念に合わせた骨太な部下指導が求められています。その部下指導を効果的に行う方法とされるのがOJTです。 OJTとは「On the Job Training」の略で、現場で仕事を実際にさせながら指導していくスタイルを指します。
OJT指導においては、部下の受け取り方、理解度、気持ちに配慮することが重要です。
単に仕事の処理の仕方を教えるとか、引き継ぐことばかりを考えるのではなく、指導の目標を明確にしたうえで十分に準備し、繰り返し伝えていきます。
つまり仕事の指導とは、相手のことを考え、気を遣ってはじめて行えるものと捉えていただきたいのです。
OJTの本質は、技術や組織の「考え方の軸」、いわばものづくりや組織のDNAを、部下の頭の中に摺りこむことにあります。
そのためにはこの考え方の軸をやはり何度も繰り返し伝えていく熱意が必須です。
部下の頭の中に考え方の軸ができれば、仕事の現場で判断に迷ったり、判断を間違ったりしてしまうことが少なくなります。 結果、部下が組織の中で自立して動くことができるようになり、仕事の成果や働く意欲の向上につながります。 考え方の軸が組織全体に浸透し、それぞれ確立していけば、時には力を集約して強力に発揮できるという効果も表れてきます。
OJTを行う際には、部下育成の担当者も自分自身を振り返り、自らの考え方の軸を再確認するべきです。 そのうえで目指すべき方向を明確に示し、自信を持ってOJTを進めることが重要なのです。
早期に仕事の成果を出すことを求められる中で、さらに部下・後輩を育成するのですから、当然ながらしっかりとした育成計画を立て、 仕事のやり繰りを計算しながら進めないと共倒れになってしまいます。教える側には、充分な準備が必要です。
準備を進めるには、指導対象者が配属されてから1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後に何ができるようになったらよいのかを考え、 そこから逆算して育成計画目標を立てます。部下に今後何ができてほしいかということは、「開発作業における課題の洗い出し」などのように具体的に挙げ、 そのために育成者自身がどう指導するかという点も先に考えておきます。このとき、目標は技術的なスキルだけでなく、 「部内会議の司会ができる」などのビジネスにおけるコミュニケーションスキルも織り交ぜてもよいでしょう。
教える側には継続力も重要です。指導を始めた当初は十分に時間を割いていたとしても、業務が多忙な中でだんだん時間が取れなくなり、
最後にはOJTが不十分なまま終わったという事例もよく見られます。
指導を継続させるためには、自分や部下・後輩の仕事のバランスを日々計算しながら実施しなければなりません。
毎日16時~17時は指導の時間と定めてスケジュール化することをおすすめします。
時間帯を決めることで育成モレや育成疲れを防止します。
業務を見せ、やらせてみて、理解度を確認するのがOJTの基本的な流れですが、 特に若手に向けた人材育成は、OFF-JT(Off the Job Training、 いわゆる座学の集合研修)と組み合わせて実施するのが効果的です。 近年の若年層は、机上で教えられた実感がないと、聞いていないと思うようです。 座学の形でマニュアルを説明するなどのOFF-JTで定期的に体系的な知識の整理を行う一方で、 OJTによって育成する各人に合わせた指導を徹底します。このように現代では計算された教育指導が求められています。
OJTは、単に職場で行う業務指導と思われがちですが、実は一人ひとりの個性や理解力に合わせたオーダーメイドの部下育成方法です。
したがってOJTを進める際には、まず相手の現状を把握する必要があります。
具体的に何ができ、何ができないかを明確にできれば、それぞれの部下・後輩に対して何を・どのくらいで・どのようにという目標を立てた最適な指導ができます。
部下・後輩の現状を把握するには、まずは相手から自己申告してもらいましょう。
とはいえこの自己申告のヒアリングには注意点があります。 「できないことをできると言う見栄っ張りタイプ」と「できることをできないと言う消極的タイプ」が存在するのです。 圧倒的に多いのは消極的タイプで、例えば、αの作業はできるがその応用編であるβ作業はよく知らないという場合、 「自分にβはできない!」と決めつけてしまいがちですから、スキルアップできるようフォローしていくべきです。 早め早めにスキルヒアリングを実施して、個人に合わせた育成目標を立てます。
技術的なスキルの習得はもちろんですが、それ以上に重要視しなければならないのがコミュニケーションスキルを身につけさせることです。
部下が社内で良好な人間関係を築けず問題を起こしたなど、苦い経験のある方も多いはずです。
このような不安を払拭するためには、やはり部下からコミュニケーションスキルについても自己申告させるのが有効です。
思わぬところに苦手意識を感じていること部下も多いので、上司・先輩と部下の双方がその課題について共有するところからスタートするとよいでしょう。
部下一人ひとりの自己申告により、具体的に何ができ、何ができないかという指導対象者の現状を把握できたら、あわせて育成計画を作成していきます。
開発業務などのいわゆる理系部署における育成計画だと、テクニカルスキルをつけるのが中心になってしまいます。
しかし当然ながら技術的なスキルだけでは仕事はできません。前述のコミュニケーションスキルなどビジネススキルといわれるものも同時にレベルアップさせることが望まれます。
まずは自組織にとって必要なスキル・知識を洗い出します。部下・後輩に身につけさせたいスキル・知識、不足していると感じる意識などを調べてどんどん書き出します。 先に述べたように、テクニカルスキルに加えて、報告・連絡・相談ができるか、議事録を作れるか、電話応対に問題がないかなどのビジネススキルも洗い出しておきます。 そして、それぞれのスキル・知識はいつまでに身につけなければならないかという達成目標を明確に示し、育成計画が立てられるのです。
1ヵ月後、3ヵ月後、6ヶ月後と細かくステップに分け、そのスパンで小さな達成目標を立てます。 「部内会議の議事録を指導者と一緒に作成できる」「議事録を誰の助けがなくても一人で作成できる」のように望まれる成長過程が具体的であればあるほど、 部下にどのタイミングで何ができてほしいのが示され、効果的な育成につながるのです。
先述のとおり、何と言っても部下の育成は継続が重要です。 そのために、育成担当者には自らの仕事のバランスを計算し、意識的に育成を中心に再配分するぐらいの気持ちが求められます。
指導担当者の方から寄せられる悩みの中で最も多いのが、業務に必要なスキルが育っていない、反抗的な態度を取る、無気力であるなどの部下の扱い方です。 どんな場合にも、あきらめずに指導を継続し、 少しずつできる仕事を選んで教え、少し成果を出させて、気持ちを整理させながら育成を進めるのが基本です。過度の期待をせず、とはいえあきらめずに育成を継続します。
育成担当者には、指導する事柄をどのように教えるかを明らかにすることが欠かせません。必要な資料を用意し簡単なマニュアルを作成することで、業務内容を最小の時間で理解させられるからです。 理系業務は順番をひとつ間違えるだけで大きなトラブルになりかねない環境であるにも関わらず、その業務を体で覚えさせることも多く、現場で役立つ資料が意外と少ない気がします。 育成担当者が仕事の流れを整理して資料を作ることで、部下育成にも役立つと同時に、業務の効率化も図れます。
部下育成用のオペレーションマニュアルを作るというイメージで資料を作るとよいでしょう。何故かというと、 新人・若手は次から次へと入ってくるからです。マニュアルだと思えば分かりやすい良い資料が作成できますし、 育成の機会ごとに代々中堅の部下にメンテナンスを手伝ってもらえば、長く活用できる常に最新の情報にアップデートされた生きた資料になります。
指導担当者に求められるのは、教えることをプロデュースする力です。 時間や知識がないために自分では教えられない場合や、自分でも教えられるが他に適任者がいる場合には、適切な指導者を専任して依頼します。 部下育成という仕事を自分ひとりで抱え込まず、職場全体や仕事の状況も視野に入れ、周囲と協調しながら教育プランを立て、 プロデューサーとしてどんどん進めていくのがOJT指導者の真の姿です。
例えば、ある部下に業務A・B・Cを教えるとしましょう。一般業務Aについては育成担当者自身が担当し、 専門的業務Bと業務Cについては、その業務により精通した適任者を選び依頼します。必要であれば資料の用意や簡単なマニュアルの作成も分担して任せるとよいでしょう。 その過程でトラブルが生じたり業務の滞りがあったりした場合には、関係者全員で対処していくようにするとチームに連帯感が生まれます。
育成担当者がプロデューサーになることで、部下育成を組織全体で行うことができ、育成担当者の負担を軽減できるだけでなく、部下育成がチームの特別プロジェクトとして認知され、 組織内の育成力は飛躍的に向上します。「次世代を育てること」を部下に求める最も重要なことと考える企業経営者は極めて多いことから、会社のためにも自分の成長のためにも、 部下を育てるシステム構築をしたいものです。
一口に部下といっても、実直なタイプ、気持ちが散漫なタイプ、意欲的だがミスが多いタイプなど多様なタイプが存在します。
理解すべきは「全員が全員、優秀ではない」ということです。これくらいでわかってくれるだろうなどと楽観的な考えは捨て、 ここまでは説明しなくてもいいかと感じるくらいに丁寧に噛み砕いて仕事を理解させ、教えるのがトラブルを防ぐコツです。 まずは型どおりにやらせることを意識しながら進め、部下がある程度理解や経験を積んだ後、自分自身で考える応用力をつけさせるとよいでしょう。
ただし、教え方はどのタイプでも共通です。育成担当者はできる仕事から少しずつ選んで教え、成果を出させて、決してあせらずあきらめず、 気持ちを整理しながら進めます。忍耐が必要なのです。また、業務そのものの意味や理由を教えることも重要です。何のためにこの仕事を行うのか、 なぜそうすべきなのかを説明し、理解させて、取り組ませることが原則です。この点をあいまいにしていわゆる作業だけをやらせ続けると、 考えない人材になってしまいます。
STEP① 仕事の意味を教える
仕事の意味を理解することにより、不安なく、前向きに行動できます。また、意味を理解すれば、
大きく間違った行動を取ったり、周囲に迷惑をかけたりすることは少なくなります。
STEP② 仕事全体の流れを大まかに教える
細部から教えるのではなく、最初に高い視点から全体を教えます。その際、全体像の分かる資料や
マニュアルなど、部下・後輩が視覚的に理解できるものを使って教えると効果的です。また、指導
内容のメモを取らせる癖づけも重要です。
STEP③ 具体的な行動を指示する
実際の仕事のやり方を具体的に、詳しく教えます。なぜ、誰が、いつまでに、どのような行動を、
どのような点に注意しながらということを明確に指示します。
STEP④ 期待水準を伝える~作業時間、達成度、品質など
想定作業時間、達成度、品質の期待水準を伝えます。近年の若年層には、恥をかきたくないとか、
言われた最低限のことしかやらないという傾向が見られます。ほかにも期待水準を伝えておかない
と、やたら時間をかけて凝ったものを作ったり、すぐできるが完成度が低すぎて結果的に使いもの
にならない成果物を作ったりなどの問題を生みかねません。「30分で、7割くらいまでやってほ
しい」「お客さまに渡すので、小さな間違いもないことを確認して欲しい」などのように伝えると
よいでしょう。
仕事の依頼をしたら、その指示内容についてどう理解したか、どう感じたかを具体的に答えさせて理解度を確認します。 指示した直後に「分かった?」と総体的に尋ねても、部下は反射的に「はい」と答えてしまい、 分からないことを分からないとしっかり言えないことが少なくありません。自分の言葉にして答えさせると相手の理解度を的確に把握できます。
また、業務知識不足から指示を勘違い・誤解しているケースもあるため、少しでも疑問を感じたら質問させることが大切です。 さらにお互いの価値観、考え方や常識のすりあわせを随時行うことをお勧めします。つまり指示は相手に理解されて、はじめて指示となり得るのです。
精密さが求められる理系業務においては小さなミスが命取りとなるために、部下指導も慎重かつ丁寧に行われる必要があります。 ですから、育成担当者は対象者ができる仕事から少しずつ選び、仕事を理解させながら丁寧に噛み砕いて教え、少しずつ成果を出させます。 前章でもお伝えしたとおり、仕事を依頼したら、その指示を理解できたか、内容を把握できたか、質問はないかを確認します。
指示を理解させた後は、部下にマニュアル・資料などを調べさせ、自分でよく考えさせます。本人が作業を進めるうちに初めて疑問が浮かぶことも大いにありますから、 それぞれの段階で理解できているかどうかを確認します。部下のスキルに応じてヒントを与え、再考させ、「君はどうすべきだと思うか」など質問してみることも有効です。
自分で理解して考えるというステップを繰り返し、本人に考える習慣を定着させます。難しい問題や迅速に対応する必要がある場合は、育成担当者が解決策を指示するか、 その問題を引き取り解決することで見本を示します。このようにしてできる仕事から少しずつ進めさせることが大切なのです。
報告させる・相談を受けるということは、部下がどういう仕事の運び方をしているのか、問題はなく進められているか、どんな気持ちで取り組んでいるかを把握する重要なタスクです。
部下は、上手くできている・良いことについては報告や相談をすぐに、たくさんしたがります。逆に、よく分からない・うまく進められていない・悪い成果などの良くないことについては、 後でさらりと報告したい、あるいは報告したくないと思っているものです。上司が把握すべきは後者の良くないことの方ですが、表面的な報告を受けただけでは正確な現状把握はできないので、 それらをいかに報告しやすくするかという配慮が求められます。
これには「中間報告」を活用するのがいいでしょう。指示を出すときに、「中間報告をしてほしい」と伝えることで、結果が出てからでないと報告しにくいと思っている部下の不安を緩和させます。 また、どのタイミングで中間報告してほしいかを伝えます。これにより、部下に中間報告も仕事あるいは任務のひとつとして意識され、作業途中での軌道修正を迅速に行うことができ、 結果的に部下の仕事の成果が上がっていきます。
部下に仕事を任せっきりにしておくと、初歩的な段階でミスをしてやる気をなくすことがあります。そのまま仕事を続けさせても手戻りや修正が発生するなど、 労力をかけたわりに結果が伴わず生産性も低くなります。そういったリスクを回避するためにも、中間報告は非常に有効なのです。
また、日頃から部下に話しかけたり、1対1の対話の機会を設けたりすることも大切です。「上司が気に掛けてくれている」と感じることで部下は安心して仕事ができ、 報告や相談のきっかけも与えられ、仕事に対する意欲向上や退職防止の効果が期待できます。
メールでのやり取りが多く、部下との対話が疎かになりがちな職場であれば、なおさら部下と直接対話をしましょう。部下にはメールでの報告に加え、 必ず直接または電話を使って口頭でも報告させます。メールを送ったからといって相手がそのメールをすぐに読んでいるとは限らないことを理解させます。 特に緊急の場合はなおさらで、順番は逆でも構いません。第一報は電話または直接報告し、その後詳細についてはメールで送るという方法です。
社内におけるコミュニケーションが不足しやすい職場では、たとえ仕事に直結しないことでも意識して対話するよう心がけます。 対話時間の目安は1週間に15分~30分、新人に対しては1日最低10分程度の対話を実施することをお勧めします。 さらに言えば、対話の簡単な記録を残すことで相手の気持ちや傾向をつかめるようになります。 このように日頃の小さなコミュニケーションで、気軽に報告や相談ができる良い関係を築くことができるのです。
部下の出来が悪くて褒めるところがない、あまり褒めたことがないというのでは、
上司として力不足です。褒めることはその人を認めるということ。
褒めることで部下の仕事に対する意欲は驚くほど向上します。
【褒める際のポイント】
・部下の褒めるべき点を、行動から見つける
・部下に対し、言葉や態度でタイムリーに褒める
あらかじめ何を褒めるか、その根拠となる事実をつかみ、整理しておきましょう。 部下の褒めるべき点を結果だけでなく行動から捉え、伝える際には様々な言葉を使うと効果的です。 また、褒めるときは他のメンバーの前で大々的に褒めます。 例えばメールを使って関係者全員に知らせると、部下本人は周囲からも評価をもらえ、 さらに意欲が増します。本人以外の部下にとっても、自分達もがんばろうという気持ちになれるものです。
叱る・指導することは育成担当者の責任です。叱ることと怒ることを混同している人が多いので、
注意が必要です。ポイントは「相手のため」という姿勢を明確にすることが重要です。
【叱る際のポイント】
〇叱る(指導する)とは、相手の成長を願ってのこと、つまり相手の人間性を守ること
✕怒るとは、自分自身の感情をぶちまけること
指導した点を改善しないと同じ失敗をしてしまうこと、自分やお客さまに危険が及ぶことなど、 改善を求める理由をできる限り明確にします。そうすれば相手も行動変容を受け入れやすく、 「上司は自分のためを思って言ってくれている」と感じてくれます。
STEP① 指導する内容について調査・確認をする
指導する内容はできるだけ一つに絞り、あらかじめメモを作成するか、頭の中で内容を整理しま
す。本当に部下に原因があるのかを含め、部下の言動や行動の影響を確認し、その原因も考えま
す。
STEP② 指導する時はタイミングを慎重に決める
緊急トラブルや重大な規則違反をした場合は直ちに指導し、それ以外は部下に指導の時間を決めさ
せます。
STEP③ 考え・気持ちを伝え、フォローする
どのような言動や行動について、なぜ指導するのかを簡潔に話して反応を見ます。「あなたともあ
ろう人が、そんな言動や行動をとるのは残念だ」という気持ちを伝え、その後自分の経験談や失敗
談、本人への期待感を伝えフォローします。
部下の仕事には偶然が重なって良い結果または悪い結果が出ていることがあります。 そのため結果とは別に、まずはそれまでのプロセスをしっかりと確認し、 適切な評価をするべきです。悪いことや部下にとって報告したくないことでもしっかり報告してくれるような部下には、 報告したという行動を評価しましょう。
大々的に褒めるのは非常に効果がありますが、叱る時は決して公然と行ってはいけません。 できるだけ当事者同士で話し合い、個別に指導を行うことが望まれます。 また、褒める時にはメールの活用も有効ですが、叱ったり指導したりする場面でメールを使うのは絶対にNGです。 必ず、直接対話をするように心掛けましょう。
最近の若年層には、失敗や挫折経験が少ない人がいます。 そんな人にはフォローが適切でないと、「人生で初めて叱られた」というショックから、 安易に転職を選ぶ可能性もあります。叱られたのが改善のキッカケにつながるように、 部下にとって前向きに考えられるフォローをしてください。
自社内での作業だけでなく、顧客先で作業をする、場合によっては客先に常駐して業務を進める業種の部下には、 仕事や業務内容に関する不平・不満に加えて、作業環境についての悩みがつきものです。 相談する相手が近くにいないことで不安な気持ちに陥りやすくなります。
こんな時は、まずは部下が言いたいことをきちんと聞くことが大切です。話を聞いてもらっただけで部下の気が済むこともあります。 しかしこの時こちらの先入観や評価で話の腰を折れば、部下は口をつぐみ、言っても無駄だとあきらめてしまうかもしれません。 また、不平・不満を受け止める際に注意すべきは、部下の意見に安易に迎合し、一緒になって不平・不満を言わないことです。 もしもそうしてしまえば、部下にとってのあなたの存在が尊敬すべき上司から無為無策のダメ上司へと変化してしまう可能性があります。
部下の話を聞いたら、何が問題なのか、何を疑問に感じているのかを確認したうえで対応方法を考えます。 事実に基づいて、この話が解決すべきことなのか説得すべきことなのかを見極めます。 「そういうルールだから」「○○さん個人の問題だから」などの反応を示し、問題に対して建設的な改善案を提示できなければ、 部下は絶望してしまいます。そんな回答は部下にとっては「仕方ないよ、諦めてよ」と言われているのと同じだからです。
「こうしたら良くなるかも!」「私が○○さんに相談してみるね!」など可能な限り、前向きな対応策を考えて答えます。 もちろん言うだけでなくしっかり実践しましょう。
上司に言われたことを素直に進められる部下は優秀であり、成長が期待できます。しかし、普段は優秀であっても、 手間のかかる業務や苦手な業務をお願いすると表情をくもらせて反抗的な態度になるなど、 仕事をえり好みする部下が皆さんの周りにいませんか。
不平や不満という感情は、人それぞれの価値観によるところが大きいものです。 部下のタイプを理解して、不平・不満の深刻度を判断します。 そのうえで相手が不満に感じたポイントに耳を傾け、 原因を正確に捉えてから部下に対し軌道修正を促すようにしましょう。 このとき、部下が「私の話を上司はしっかりきいてくれている」と感じられているかが鍵です。
新しい業務を任せるときは、なぜその仕事が必要なのか、 それを任せたい部下自身にどんなメリットがあるかを説明して、 納得してもらいます。加えて、普段から頼まれた業務を笑顔で引き受けることが評価につながることも伝えます。
決してしてはいけないのが、まだ納得ができていない部下に「言いたいことは、はっきり言いなさい!」 「なんだ? その態度は!」など、理由を聞かずに頭ごなしに怒ってしまうことです。 まずは相手の不平・不満を受け止め、それが解消すべき問題か主観による問題かを、 客観的に判断ができるように指導していくことが大切です。
理系業務には技術的な不安もつきまといます。部下に任せた仕事について、 上司自身も技術的に分からないこともあるかもしれません。そのような場合でも、 決して部下に仕事を丸投げせずに相談先を用意したり時間的な余裕を与えたりなど、 常に部下の精神的な不安を取り除くように努めます。
失敗が続いたり、やりたくない業務が続いたりすると、 すぐに働く意欲が下がってしまう傾向にあるのが最近の若年層です。 不平・不満が重なり、辞めたいという気持ちが生じると大きな仕事や先の長い仕事は引き受けたがらない、 勤怠状況が悪くなってくる、コミュニケーションが少なくなるなどの行動が見られるようになります。
では、実際に部下が辞めたいと言ってきたらどうしたらよいのでしょうか? その対応をステップごとに示します。
STEP①本音を把握する ~詰問しない、驚きと落胆を伝える
誰でも上司に辞意を申し入れるときには緊張するものです。理由を知ることが重要とはいえ、いき
なり詰問してしまっては、ますます部下が緊張してしまい本音の把握は困難になります。まずは驚
きや心配、思いやりを素直に部下に伝え、聴く姿勢を示します。
例1:○○さんがまさかそんなことを言うなんて・・・
(期待と落胆を伝え、聴く姿勢を示す)
例2:辞めたいだなんて、どうした? 大丈夫か?
(驚きと心配していることを伝え、聴く姿勢を示す)
STEP②相手の話を聴く ~辞めたい理由を正確に把握する
部下の言うことを最後までじっくり聴きましょう。一人きりで悩みを抱えていた場合、誰かに話す
だけで解決することもあります。話を聴いている最中も適度に相槌をうち、うなづくなどして、聴
いているという姿勢を示します。話を遮ったり、否定したりしないように心がけます。話が落ち着
いたところで適宜質問し、辞めたい理由つまり部下にとって不満に思っていることを正確につかみ
ましょう。
STEP③不満を解消する ~対策を講じる
ア.成長実感が得られない、自分がやりたい仕事ができないという不満の場合
仕事の失敗が続いた場合や同じ仕事を長く続けている場合に出がちな不満です。可能であれば
異動や担当業務を変えてみることで対応します。それが難しい場合は対話を増やします。
イ.上司の指示・指導方法に納得がいかないという不満の場合
上司がなぜそんな指示や指導をするのかを考えさせます。そして顧客や組織にとって不利益を与
えないために必要な指示・指導であることを部下に納得させます。
STEP④信頼関係向上を目指す ~感謝の意・変わらぬ期待を伝える
部下が会社に直接辞意を伝えてもよかったところをわざわざあなたに相談してくれたのですから、
そのことに対して感謝の気持ちと今後も変わらず期待していることを部下に伝えます。そして相談
後は、まめにフォローします。
部下が「辞めたい」と言いだすことのないように事前に対策を施すことも、 育成担当者にとって重要な仕事です。部下の態度に変化を感じたら、 対話の回数や時間を多く取る、小さな不平・不満を聞いて都度解消するなど、 日頃から積極的にコミュニケーションを取ります。業務を褒めたり、 将来こうなってほしいという明確なビジョンを伝えたりするなど、 常に部下がモチベーションを上げられる工夫をすることで、 辞めたいと思う部下を作らないようにしましょう。
部下指導を行うにあたり、全員が全員優秀ではないということを前提にするのは当然ですが、 多くの上司を悩ませるのは「自立できない部下」です。 ここでは自立できない部下をタイプ別にどのように指導していくか、その秘訣をご紹介します。
一般的に自立できない部下として代表されるのは、「どうしたらいいでしょうか?」と質問ばかりする部下です。 上司にとっては、そんな部下に振りまわされるのは、時間の無駄です。そのように自分で考えない部下には、 「どうしたらいいと思う?」と聞き返してみることからはじめましょう。
少しでも考えることができるようになったら、部下を褒めます。 たとえ正解でなくても自分で考えることができる部下なのか、まったく考えが浮かばないような部下なのか、 この二つの違いは大きいのです。当面は部下の足りない部分を補いつつ仕事を進めていく必要がありますが、 考える習慣づけをしていきましょう。
部下に仕事を依頼する際に「何のためにこの仕事を行うのか」の部分の説明に割く時間を増やし、 仕事をする理由を認識させます。自分で仕事の意味を理解し、考えるステップを繰り返すことで、 考える習慣が身につきます。徹底的に考えさせることで、自立心は生まれます。
このタイプの部下に仕事を依頼する際には、部下ひとりではなく、 上司も含めて一緒に取り組む雰囲気を作って安心させることが大切です。
失敗を恐れる部下が難しい問題に直面したら、その問題を引き取り、 解決することで上司が見本を示します。見本を示すだけでなく、 実際に同じことを部下にやらせてみます。ある程度理解が深まり経験を積めば、 自分自身で考えて応用力をつけられるものです。また、失敗も早期であればあるほど、 リカバリーも早くできることを理解させ、定期的に報告させる指導方法が効果的です。
自立できない部下の代表格は質問ばかりするタイプですが、 中には「失敗するまで一切報告しないタイプ」もいます。後者は一見、自立心が強そうに見えますが、 失敗してもなんとかなると根拠なく楽観的に考えているにすぎません。 早期発見できていたら大きな失敗に発展しなかったのに、 取り返しがつかなくなった段階で報告してくるという恐ろしいことにならないよう注意しなくてはなりません。
こういった部下の自立を促すには、定期的な報告が有効です。 毎日17時、○曜日の8時30分など報告を受ける時間を決めることで指導を徹底でき、 自然と報告習慣が定着します。単に「報告しなさい」と言うだけでは自分に対する攻撃であると感じ、 反発心をあおるため、注意が必要です。自分だけで仕事をしているのではないと本人の意識を変えさせます。
上記に挙げたように自立できない系部下にはいろいろなタイプがいますが、 考える習慣と報告の習慣をつけさせることは、どんなタイプにも共通する事項です。さらに、 期待されているという意識を持たせることも不可欠です。重要な仕事を任されていると思えたら、 仕事に対する意欲は自然に上がるものです。自分で考えながら仕事に真摯に取り組み、 その中で成功体験を積むことによって、自立心はぐんぐん育ちます。そうなれば本人だけでなく、 組織全体にとっても大きなメリットとなることは間違いありません。
システム開発などのチーム全体で行う仕事では、一人で完結する業務はほぼありません。 技術的な内容を引き継ぐことはもちろんですが、関係者とのコミュニケーションの取り方も確実に引き継ぎます。 関係者とのコミュニケーションが欠けてしまうと、その部分の進捗が滞ってそれ以上進まなくなることもあり、 結果的にはミスやトラブルを生んでしまいます。
引き継ぐ内容については口頭ではなく、必ず文書でも残すことで頭が整理され、モレも少なくなります。 ただし「文書は残したから、後は任せた」などと決して丸投げにしないように注意しましょう。
①手間を惜しまない
小さなミスが命取りとなる業務は、引き継ぎも慎重かつ丁寧に行われる必要があります。できる仕
事から少しずつ選び、仕事を理解させながら、丁寧に噛み砕いて教えましょう。ここでも通常の指
導と同様に、その仕事の意味、仕事の流れ、具体的な行動、品質水準を伝えるのが基本です。
このとき、手間を惜しまないのが引継ぎ成功のポイントです。手間を惜しんで失敗すれば、何倍も
の時間を無駄にすることになります。
②定期的なアフターフォロー
部下に引き継いだからといって、仕事が終わったわけではありません。不安はまだ残っているはず
です。解消のためには、1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後などスケジュールを定めて、定期的にチェ
ックします。このチェックがリスクの発生を未然に防ぎ、生じた新たな疑問を解消し、業務の安定
的な運用を可能にします。そうして、引き継ぎ後のフォローやチェック体制を整えながら、少しず
つ成果を出させるのです。
③部下自身によるチェック体制を整える 成果物の精度を高めるためには、作業者である部下自身が自分でチェックできるようにすることが ポイントです。部下に自己チェックした結果を定期的に報告させます。自己チェックこそが考え方 の軸を作る早道といえます。
上司が部下に仕事を引き継ぐ時点で、その部下と上司自身が小さなチームであるということを忘れないようにしましょう。 当然、引き継がせる上司のあなたがその小さなチームのリーダーです。トラブルなく引き継ぐことができたのなら、 それは上司自身のリーダーシップが良かったという証となります。
最終的に引継ぎが上手くいけば、あなたに新たな仕事への挑戦や身につけていないスキルを習得できる時間的余裕が生まれる、 既存のスキルや視野を広げられるといったメリットが生まれ、自己の成長と共に組織の成長も同時に実現できるのです。
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