英国ウォーリック大学経営大学院ドクタープログラム修了後、2005年神戸大学大学院経営学研究科教授、経営学博士。専攻は人的資源管理、経営組織。
実務家の方々にとってビジネス上の交渉において最も肝要となるのが、いかに自分の考えたユニークな発想やアイデアをうまく相手に伝えるかという、プレゼンテーションの場です。
しかし、どんなに優れた着想やアイデアを思いついたとしても、その伝え方がまずいと台無しです。 内容が大してないのにプレゼンテーションだけがうまいのも考え物ですが、いかに内容が素晴らしくてもプレゼンテーションが良くないと心証が悪くなってしまいます。 伝えようとする相手に情報を伝えられる場面は限られているわけですから、スキルを磨くことはビジネスパーソンとして必須となるはずです。
ただし私は、こうしたテクニカルな点よりも、以下にあげるようなプレゼンテーションの組み立て方のほうが大切であると考えます。
優れたプレゼンテーションをするためのファーストステップは、「伝えたいメッセージ」を明確にすることです。
そしてその前提は、まず何よりも「伝えたいメッセージがきちんと存在する」ことが重要なポイントです。
何を今さら当たり前のことを・・・と思われる方も多いかもしれませんが、意外や意外、ビジネスプレゼンテーションにおいても、この伝えたいメッセージがそもそも存在しないプレゼンに与えられた時間を単に何となくやり過ごしただけのものが多いことに驚かされます。
では、その「明確化するべき伝えたいメッセージ」はそもそもどうやって探せばいいのでしょうか。
自分がプレゼンテーションの場において他者に伝えたいメッセージを考える際にまずすべきことは、与えられたテーマを通常であればどのように考えるのが妥当か、つまり普通の常識人であればどのようにこのテーマを捉えるか、あるいはいま社内や社会ではどういう空気なのかを知っておくことです。 そのテーマの「常識」をまず知っておくことがポイントなのです。
そこで、その常識をよく知らない際には、当然に自分自身でそのことをリサーチすることから始めなければなりません。
リサーチの結果、常識がひととおりわかったとすると、次のステップは「本当にその常識通りでよいかどうか」を自分なりにいろいろと考えてみることです。
そして、できる限りその常識とは違った角度からの意見を述べる道筋がないかを探ります。
当たり前の常識だけを長々と述べられても、聞く側としては全く面白くありません。プレゼンテーションで伝えたいメッセージは、一般には考えられていないユニークなものであることが期待されるので、できるだけ常識とは違った視点で物事を捉えるよう努力しなければなりません。
このときに、こちらで述べた『荘子』のような逆転のものの見方が有用となるわけです。
常識を知り、そこから外れたことをプレゼンで主張しようとしてもいきなり常識の真逆を言おうとするのは困難です。
常識は世間の人々がそれは当たり前だと認めている空気のような存在であるからこそ「常識」なのであり、何の工夫もなく常識の正反対を言おうとするのは無謀です。では常識から外れたことを主張するには、どうすればよいのでしょうか。
常識から外れたことを言うためのファーストステップは、その常識が成り立っている暗黙の、広くみんなに気づかれていない前提や条件をあぶり出すことです。言い換えると常識がなぜ常識として世間一般に認知されているのか、「相対化」して考えることが近道です。
するといずれの常識も、その常識が成り立っている、ないし暗黙のうちに前提されている条件が明らかになってきます。そしてその前提条件が崩れると必ずしも今いわれている常識は成立しえないことを明らかにしていくのです。
このような手順を踏むことで、もはや「常識」は「常識」ではなく、ある特定の状況下や前提があった場合のみに成立する一現象であると位置づけられるようになります。
常識を常識として受け取らずにその前提条件を考えるのは、簡単なようにみえますが実はかなり難しい作業です。 常に世の中の現象や世間一般の考えに対して疑問を投げかけ、自分なりのユニークな視点でもって議論を展開しようとする「ひねくれもの」でなければなりません。
あまり知られていないことですが、実はユニークな発想を出来る人間はほぼ100%、こうした「ひねくれもの」の視点をどこかに備えています。
ひねくれものというと社交性がなく殻に閉じこもった人間を想定しがちですが、他者とのコミュニケーションは円滑にできたうえで常識に流されない「ひねくれもの」精神を持っていることこそが不可欠なのです。
プレゼンテーションの準備をしていくうえで、こうして常識とは違った角度からひとまず結論がひらめいたと仮定しましょう。次に重要となるのが、そのひらめいたユニークな結論をどうやって聴衆に納得させるかです。
その結論をいうためには、どういうことを予め述べておくかを考えることが肝要です。 つまり結論から逆方向にさかのぼっていき、この結論にたどり着くには、どういう論点が事前に述べられていれば聞き手は「確かにその通りだ」「異論がない」と感じるかを考えます。 AnswerからQuestionを考え、結論から徐々にひとつずつさかのぼっていく、このいわば「手繰り寄せ」作業を行うのがセカンドステップとなります。
常識とは異なった結論は、それだけ主張しても聴衆は聞く耳を持ちません。常識を崩すには「結論へと至る途中の議論の組み立て」が極めて重要です。
こうして結論から逆に論点を手繰り寄せていき、出発点となる問いをたてることができればあとはしめたものです。今度は最初から順に、このロジックの流れで聴衆を説得できるかどうかを再び入念に確認し、プレゼンテーション資料を作成していけばいいのです。
資料作成の際に常に念頭に置くべきは、聞き手は自分が論じようとすることについては全く情報を持っておらず、白紙状態であるということです。
白紙状態の人に「なるほど、それはあなたの言うとおりだ」と思わせるには、極力単純明快なロジックで議論を組み立てるべきでしょう。
時折、パワーポイント資料のスライド枚数が何十枚にも及ぶようなプレゼンテーションに出くわしますが、資料数の多いプレゼンは聞くに堪えない内容である場合が大半です。
例えば20分間のプレゼン時間なら、スライド枚数で10枚を超えると聞く方はロジックの流れについていけないものです。
「プレゼン資料は多い方がよく準備している証拠といえるので良い」というのは、プレゼン初心者が陥りがちな誤りです。資料の多さはむしろ情報整理がうまくなされていないことの現れであると心得ておきましょう。
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