2024.02.09
サステナビリティ経営と人的資本
なぜサステナビリティ経営に取り組むのか
企業が社会環境問題を考慮したサステナビリティ経営に取り組む理由は何でしょうか?もちろん社会的責任であるという考えが基本ではあるものの、近年では少なくとも長期的には儲かる、または企業価値に繋がるからという考えが強くなってきています。それに伴い、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資への関心も高まっています。こうした経済を重視したサステナビリティ経営は、社会的責任の観点からは本末転倒です。しかし一方で、サステナビリティ(≒持続的な社会環境と経済の両立)の観点からは一概に間違っているとも言い切れません。これらを鑑みると、サステナビリティ経営の望ましい姿とは、企業が社会環境問題解決に取り組み、その結果として利益がもたらされる、企業価値が上がるということになるでしょう。
ステークホルダーとしての従業員
サステナビリティ経営はステークホルダーとの関係を構築する取り組みでもあります。そして、企業にとって従業員(人材)は特に重要なステークホルダーです。そのために、従業員が直面する課題(例えば、働きがい、ダイバーシティ、仕事と家庭の両立)に企業が積極的に取り組めば、彼らの満足度ややる気が高まります。その結果、彼らが持っている能力を最大限に引き出すことができるため、企業は社会的責任を果たしているという信頼の獲得に加え利益や企業価値の向上という形でも成果が期待できます。なお、企業価値とは経済価値にとどまらず、人材や働きやすい職場そのものも価値となります。このように、サステナビリティ経営の考え方は、人材の価値を引き出すことや企業価値を向上させるという観点から人的資本経営とも相性が良いことが窺えます。
サステナビリティ経営は新たな気付きをもたらす
2023年3月以降、上場企業に対して有価証券報告書での人的資本情報開示が義務づけられるようになりました。そして、その開示項目には女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差が含まれています。これらはまさに働きがい、ダイバーシティ、仕事と家庭の両立に関連するサステナビリティ情報です。こうした情報開示が特に有価証券報告書で義務づけられるようになったのは、これまでの男性を中心とした職場環境や家庭を顧みない長時間労働が社会的にだけでなくもはや経済的にも望ましくないとの認識が共有されてきていることを示唆しています。企業はあくまでも営利団体なので経済を無視した活動を行うことは現実的ではありません。そんな中、サステナビリティ経営は社会環境という視点からこれまで気付かなかった新たな企業価値創造の機会を提供します。こうしたことを踏まえると、従業員が直面する課題がまだ多く残っている中、人的資本経営にもサステナビリティ経営の視点を取り入れれば、その取り組みはより実質的なものになるのではないでしょうか。
ご興味をお持ちになられた方は、人的資本経営研究教育センター(hcmrec@b.kobe-u.ac.jp)までどうぞお気軽にご相談ください。
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