2024.04.02
金融研究者と人的資本経営とのかかわり
「カネ」と「ヒト」
人的資本経営研究教育センターメンバーとして末席に名を連ねております、内田浩史と申します。私の専門は金融、特に銀行、金融システムで、経済学のアプローチを用いたデータ分析が中心です。金融という分野は「カネ」中心で、「ヒト」はほぼ登場しません。人的資本経営からはほど遠く、その意味でセンターでは本当に末席です。とはいえ私も多少は人的資本経営とつながりがありますので、自己紹介がてらご披露させていただきます。
ソーシャル・ファイナンス
まず研究に近いところでは、このところ「ソーシャル・ファイナンス」という新しい分野に専門を広げています。ソーシャル・ファイナンスとは、社会的・環境的課題の解決のための資金の提供・調達(古くは寄付、最近ではESG投資やインパクト投資など)を意味します。このうちたとえばESG投資は、金銭的リターンだけでなく環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)について企業を評価して行う投資であり、人的資本経営はSやGの評価(働く人たちの利益を考えているか(S)、そうした企業統治を行っているか(G))に含まれます。「ヒト」から遠かった金融分野でも、「人的資本の重視は円滑な資金調達につながるか」といったテーマが注目されるようになってきています。
デザイン思考とキャリア形成
教育面では、学部生向けにデザイン思考を使った起業教育の授業を担当しており、学生のキャリア形成を促す、という意味で人的資本に多少関係しています。課題を抱えた人に共感し、社会課題の解決方法を考えるためのアプローチがデザイン思考ですが、私はアメリカでの在外研究中に、デザイン思考教育のメッカの1つであるスタンフォード大学d.schoolの授業を受講し、一方通行の大人数講義とは違った授業に感心して、帰国後に少人数のプロジェクト授業で用いるようになりました。㈱インソースの皆様含め、様々なゲストにもご支援いただいています。学生からも好評で、大学生活の中で一番面白かった授業だ、と言ってくれる者もいます。
データ分析とキャリア形成
以上が私と人的資本経営との弱いつながりですが、本センターに関わっている直接の理由は、別のキャリア教育、具体的には現在神戸大学経営学部・大学院経営学研究科で設計中の「神戸経営データ科学特別学修プログラム」にあります。文系人材でも理系的スキルが求められる中、経営学をベースとしながらも、自らもデータ分析を行うとともに、どのような分析が必要か判断できるような人材を養成するのがこのプログラムで、早期卒業・修了により5年で修士号を修得できること、企業データを学生・教員が企業の方々と共に分析する企業連携型データ分析演習を取り入れることが本プログラムの特徴です。センターの活動ともリンクさせ、これまでにないような新しい授業を考えています。ご協力いただけるようでしたらぜひお声がけください。
関連リンク
・神戸大学MBA教授陣に学ぶ「経営学の実践知」
ビジネス課題の解決にあたる人財の育成を目的に、現代経営学研究所(RIAM)と共催で企画した、厳選した8科目を学ぶプレMBAプログラム。