人的資本経営 研究教育センター

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柔軟性と人事管理

目次

組織の競争優位を実現するために

 人的資本経営研究教育センターのメンバーの庭本佳子と申します。何卒宜しくお願い申し上げます。今回のコラムでは、私の研究分野から柔軟性と人事管理についての基本的な考え方をご紹介し、最初のご挨拶に代えさせていただきたく存じます。
 現在は技術的にも市場的にも、さらに組織内環境においても不確実性が高い状況です。何が脅威なのかも曖昧な場合がある一方で、チャンスもたくさんあります。組織には、特定の目標を達成していくだけではなく、絶え間ない変化に素早く適応して競争優位を構築するためのマネジメントが求められています。人事管理も例外ではありません。

変化の時代が求める柔軟性

 これまで人事管理が接する環境は、労働市場などの外部環境のほかは、主に戦略や様々な組織制度、従業員などの比較的安定した組織内環境でした。しかし、外部環境が不確実ですぐに変化すれば、その度に戦略の転換と組織再編が行われますし、従業員に要求される行動も頻繁に変更されるでしょう。そのため、人事管理としてはある程度、人事施策や実際の管理に幅を持たせて、これらの組織内環境に柔軟に適応し続けることが求められるのです。

柔軟性を高める人事管理

組織の柔軟性は、曖昧で急速な外部からの課題に対して、適切かつタイムリーに反応していく組織的な能力のことです(Volberda, 1998)。人的な柔軟性からいうと、従業員が持っているスキルや知識が幅広ければ、それらを柔軟に組み合わせて多様な選択肢をそろえ、企業の戦略的行動を支えることができます。そのために、人事管理としては、人材育成や能力開発、ジョブローテーションに加えて、職務における裁量の付与や情報共有、チームワーキングなどを通じて従業員のスキルや知識の幅を広げることが必要になってきます。

人的資本化した従業員が組織を強くする

 学習能力の高い従業員は、身につけた多様なスキルや知識を組み合わせながら、職場でその時々に生じる課題や要求に対してその場で柔軟に対応し、問題解決行動をとることができるようになります。また、適応力の高い従業員は、異動などで全く経験したことのない状況に直面しても何とかして短期間で適応することができるでしょう。
 このように、人的資本化した従業員が組織を強くします。成果を出すのは、施策でもシステムでもなく人です。企業が外部環境に適応しつつ自社の活動を維持していくためには、従業員を人的資本化し、彼らを活かす人事管理を目指すことが大切です。この分野に関心をお持ちの読者各位におかれましては,どうぞお気軽にセンター(hcmrec@b.kobe-u.ac.jp)までご連絡ください。

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