【管理のツボ公開(Ⅱ.人材育成編)】人材育成のツボを押さえて、効果的に自分を育て、部下を育てる
全4回シリーズで管理のツボについて綴ります。今回は「Ⅱ.人材育成編」です。
是非、前記事【管理のツボ公開(Ⅰ.自己採点編)】と併せてお読みください。
- 目次
人材育成のツボを押さえる
皆さん、「Ⅰ.自己採点編」の2つの問いに、それぞれスムーズに答えることができましたか。
「会社で出来る人とはどんな人ですか。出来る人の要件を3つ挙げて下さい」
「人材育成を効果的に行うための要件を3つ挙げて下さい」
「会社で出来る人とはどんな人ですか。出来る人の要件を3つ挙げて下さい」の答え
①達成すべき目標をしっかりと認識している
②目標達成のために必要となる知識に精通している
③逃げない、諦めないという決意と実行力がある
「人材育成を効果的に行うための要件を3つ挙げて下さい」の答え
④目指すべき姿、なりたい姿を具体的に定義できる
⑤上記の姿と育成対象者(含む、自身)との間に存在するギャップを測定できる
⑥当該ギャップの解消のために何を実施すべきかを決定し実行することができる
人材育成にあたって、特に重要なことは、④の「目指すべき姿、なりたい姿を具体的に定義できる」です。この定義がないと人材育成の目標が定まりません。この点、ほとんど全ての管理者が目指すべき姿、なりたい姿を部下に提示していないことには驚かされます。
この定義は上記①~③を踏まえて策定します。特に、上記②の業務に精通している姿を具体的に示すことが重要です。
目指すべき姿、なりたい姿が定義されると、育成対象者のどの点が定義を満たしていて、どの点が未達であるかが明らかになります。つまり、育成対象者の課題(ギャップ)が明らかになります。この点を踏まえて育成計画が立てられ、実行されます。育成対象者も、目指すべき姿、なりたい姿を思い浮かべながら育成計画に取組むことができ、成長スピードを一層高めることができます。
人材育成のツボの具体的活用については、以下の2例を参考にして下さい。
例①[営業人材の実践力育成]
法人向け営業を担当するチームのリーダーが、このチームで求められる人材像を以下のとおり定義しました。
〔当チームで求められる人材像〕
ⅰ) 販売する商品・サービスを熟知している、
ⅱ) 顧客のニーズを理解している。潜在的なニーズを顕在化するのも巧みである、
ⅲ) 上記に基づき、自ら提案書を策定できる、
ⅳ)本部の開発セクションと協同し、高度な提案を実施することもできる、
ⅴ)顧客の満足を引き出し、契約をクロージングすることができる。
以上の定義に基づき、リーダーは、部下一人ひとりと面談し、各人が抱える成長課題を共有したうえで、各人の指導方法を決定しました。
指導方法は、コーチング(上記に基づくアドバイス中心の指導)か、ティーチング(上記に基づく手取足取型の指導)のいずれかが採用されました。
中には、項目ⅰ)、ⅱ)、ⅲ)については、コーチングで対応するが、項目ⅳ)とⅴ)についてはティーチングで対応するという部下もいたそうです。
こうして人材育成をスタートしてみると、想定以上の効果が現われました。若い部下が進んで諸先輩に「ⅱ)のコツを教えて下さい」、「ⅴ)の勉強のために帯同訪問していただけませんか」とお願いします。チームの中に様々な相互作用が生まれ、各人の成長はもとより、チーム全員が目標の達成に向けて、お互い刺激し切磋琢磨する状況が自然と出来上がったそうです。
人材育成によって、チーム全員が成長感、達成感、充実感を味わい、チームが活性化する。これこそ管理者が求める最強チームの姿です。管理者は人材育成の波及効果が頗る大きいことを肝に銘じなければなりません。
例②[新入社員への上司アドバイス]
以下は、新入社員と上司の人事面談の模様です。
上司 「君が成長し活躍するためには、目指すべき姿、なりたい姿を先ず決めることが大切だ。君の指導担当者のA君は君の5年先輩にあたるが、同期の中でもトップクラスの活躍をしている。君は3年後にA君を追い越すと決め、A君の凄さを徹底的に取り込んではどうか。君ならできる」
社員 「Aさんの凄さにはいつも感嘆しています。Aさんを目指し頑張ります」
上司 「成長のための方法であるが、A君の凄いところは必ずメモに残すこと。そして、自分のものとして身につけ、大いに活用すること。失敗しても良い、失敗したら原因を究明し、改善すれば良い」
以上も、人材育成のツボである上記④~⑥を踏まえた指導・アドバイスです。
皆さんには、以上の事例から、「目指すべき姿、なりたい姿を具体的に定義すること」と「人材育成の先に最強チームが出現すること」の2つの重要性を是非再確認していただければと思います。