「次世代リーダー育成」の時流とメソッド
OJT教育に加え、動画教育など多様な教育ツールが普及した今、「オペレーション人材の輩出」はかつてより容易になりました。しかし、AIの台頭やIT技術革新という急速に移り変わる社会の流れの中、「組織の次世代を担うリーダー」の育成に頭を悩ませている企業が多いようです。
彼ら・彼女らは「経営人材」「コア人材」「変革人材」とも呼ばれ、社会課題や市場環境、専門技術を理解したうえで、統合的・戦略的に物事を考えられることが求められています。
人材の流動性が高まっている今、「高コストをかけ、SSランク人材を雇う」ことができれば話が早いです。しかし、現実には多くの企業において「経験の浅いA~Cランク人材をいかにSSランクもしくはSランクに引き上げるか」を考える必要があります。人材が資本として評価される現代は、「社内の人材育成ノウハウが会社のコア・コンピタンスになる時代」でもあるのです。
ではどうすれば、「次世代リーダー」を社内で育成することができるのでしょうか。
- 目次
次世代リーダーに求められるマインド・経験・スキルとは何か?
そもそも、次世代リーダーに必要な要素とは何でしょうか。
当社では、次の5つを次世代リーダーの条件として定義しています。
・先見性/中長期的視点がある
目の前の業務ばかり気にしているのではなく、5年後10年後にも視点を置いて、バックキャスティングで考えられる人材に人は寄ってきます。
・個人のビジョンがあり、それが組織のビジョンと高次元で統合されている
自身の「こうなりたい」というビジョンが他者の共感を呼びます。
さらに、組織への貢献が個人のビジョンと結びついていることで、組織とWin-Winの関係を築くことができます。これが組織にエンゲージしているという状態であり、エンゲージメントの本質とも言えます。
・社会変化へのレジリエンスがあり、最新動向をキャッチアップできている
VUCA時代においては、自組織の最適だけを考えているようでは生き抜けません。刻々と変わりゆく社会動向を受け入れ、迅速に行動に移せる人材であることが必要です。
・戦略的思考をもって語れる(ロジカル・クリティカル・ストーリーテリング)
多様化するステークホルダーの協力を得るためにも、戦略的な思考は必須となります。論理性と本質を見抜く力をベースとし、それを周囲にストーリーとして語れる力も重要です。
・多様性を認め、様々な価値観と共創できる
激しい変化に対応し、顧客の様々なニーズにも対応するためには、固定観念に囚われず様々な価値観とともに共創していく力が重要です。
また、「柔軟な働き方ができる」、「自身の強みを生かせる」組織環境は人を呼び込みます。
次世代リーダーが育っていないのはなぜか?
事業環境や社内風土、採用戦略も違うため、次世代リーダーが育っていない理由を一概に述べることは難しいですが、様々なお客さまとのお話のなかでは、次のような課題感が背景として存在することが多いです。
・次世代リーダーに求められる経験の不足(エンパワーメントが進んでいない)
日本の人口ピラミッドを見てみると、30~40代人口が少ない一方で、50代人口が多くなっています。そのため、 30~40代で事業を任される経験をしている方は少ない傾向にあります。
30~40代では現場のオペレーションマネージャーとして活躍する方が多く、ファイナンスや事業マネジメントの視点に欠けるという現実があります。リーダーには事業マネジメントの経験が必須です。強力にエンパワーメントを進めていかないと、オペレーション人材からの脱却も実現できません。
しかしながら、未熟な部分の残る30代~40代に事業マネジメントをいきなり任せることもできません。組織には、エンパワーメントとサポートの両軸を整備していくことが求められます。
・イノベーションへの感度が低く、視座も低い
「高度経済成長時代につくられたビジネスモデル・勝ちパターン」で成長してきていることもあり、技術主義・製品主義の価値観のまま、時が止まっている組織も多々見受けられます。
社員のマーケティング思考が足りておらず、マーケットや顧客のニーズをつかみきれないまま商品開発が進められていたり、営業活動がなされていたりします。経営層がサービスモデルへの転換を発信していても、風土や文化が変わらなければ、組織のイノベーションはもちろんのこと、個人のマインドチェンジもなかなか起きないものです。
状況を打破するためには、「個人の内発的な動機を引き出す」→「組織としてチャレンジの奨励・支援体制を作る」→「実行とフォローアップ」というステップを確実に踏ませる必要があります。チャレンジが成功体験となると、人はチャレンジすることに前向きになります。この経験を積ませることで、イノベーションマインドが醸成され、情報感度が高まります。
・組織へのエンゲージメントが低い
トップダウン型の組織風土では特に、経営層がどのような思考プロセスで意思決定をしたのかを社員が知るのは難しいのが現状です。また、役員会が儀式として形骸化しているようでは、社員の会社への信頼は醸成されません。
組織によっては、役員会議の様子を社員に開示しているところもあり、経営層がどのようなディスカッションをしているのか、どのような思いで会社を経営しているのかがわかるようになっています。このような透明性が、社員の会社への信頼感・エンゲージメントにも繋がります。
経営層がしっかりと現場や社員のところまでおりてくる、そして社員からは現場起点のイノベーションを提案していくという「創発型経営戦略の実現」が求められます。 会社の意味や意義を、ホールシステムアプローチを用いて、パーパスで示していくことも施策の一つとして挙げられます。その他、注意すべき点として「学習性無力感」も大きな問題です。チャレンジが成功体験に繋がらないことが続けば、「どうせ言っても変わらない」というバイアスに陥り、チャレンジすらしなくなります。
次世代リーダー育成のトレンドとは?
近年、経営人材の育成が新たな段階へと進んできています。従来は定期的にローテーションを行い、その中で実績を上げることのできた人材が、経営的な知識を付与されたうえで経営を担うというものでした。それが、それが中間管理職で選抜されたメンバーを育成するという形に変わり、さらに最近ではその対象となる年齢層が若年化しています。
それは、前述のようなマインド・スキルに適性のある社員を「早期」に選抜し、経験をデザインするというものです。オペレーションがしっかりと固まっている企業活動下においては、OJTに任せて放っておいては、経営人材への昇華はなかなか難しいです。そのため、組織側が働きかける以下のような施策をとることが求められます。
- ・若手中堅のうちから未来洞察を踏まえて「個人のキャリア開発」を行う
- ・内発的なモチベーションに基づいたチャレンジングな企画経験とタフアサインを行う
- ・タフアサインを成功体験にできる支援を行う