新任役員研修の狙いを問う。管理職教育の延長ではない
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新任役員研修、定番は"会社法講義"
上場会社の大宗を占める3月末決算会社の定時株主総会が開催され、今年も、数多くの新任役員が誕生しています。良い船出が出来るようにと、会社は、彼らに新任役員研修の受講を推奨します。
この研修は "会社法講義" が定番です。新任役員は、この研修を通して役員としての法的責任の重さを噛みしめ、改めてしっかり頑張って行こうと決意します。
ところが、時が経つにつれて、会社法の知識も薄れていきます。多くの方は、研修後、会社法に照らして検討しなければならない出来事に遭遇することは先ずありません。良い意味で会社法を忘れて、社業の発展のために全力を尽くします。
"業績向上"についても再確認を
ここで、新任役員研修の狙いとは何でしょう。 "会社法講義" は、新任役員に「管理者意識を払拭させ、役員としての重責をしっかりと認識させ、役員としての自己変革を促進させること」を狙いとしています。
しかし、もったいないですね。折角の研修機会です。何故、役員本来の責務である "業績向上" を直接のテーマに掲げないのでしょうか。
"役員の業績向上への取組み" についての研修概要は、概ね次のとおりです。
「役員は、業績向上について管理者とは全く別の役割を担っている。役員は、戦略/ビジネスモデルを構築・改善することによって会社の利益を大枠に確保・拡大することに貢献する。
一方、管理者は、現下の戦略/ビジネスモデルのもとで配分された目標・経営資源を所与のものとして、 "PDCA" を回しながら、会社の足もとの利益を確保する。
会社は、役員と管理者がこのような分業体制を形成・維持することによって持続的な成長を確保している」
役員力チェック:Q1~3
ここで、新任役員の方々にいくつか質問します。ご自身の役員力を是非チェックしてみてください。
[Q1]会社が "持続的成長" を確保するために満たさなければならない条件とは何ですか。生存条件と成長条件に分けて述べてください。
(⇒会社が生存し成長するためには、共にプラスの利益の計上が不可欠です。利益は尊く、成長の源泉でもあります。)
[Q2]戦略/ビジネスモデルの構築・改善にあたって、重視しなければならない情報は何ですか。
(⇒利益は、「①経済状況」「②現戦略/ビジネスモデルのライフステージ」「③内部統制の状況」から多大な影響を受けます。戦略/ビジネスモデルの構築・改善にあたっては、これら3つの情報の取得と評価が不可欠です。)
[Q3]戦略/ビジネスモデルの構築・改善について、具体策を4点お尋ねします。
(ア)経済見通しが良好で、収益の大幅改善が期待されるとき、どう対応しますか。
(イ)既存の戦略/ビジネスモデルが停滞期に入り、収益の大幅減少が予想されるとき、どう対応しますか。
(ウ)"ROE経営" 、"選択と集中" とは、具体的にどのように思考し、行動することですか。
(エ)新たな戦略/ビジネスモデルを開発するために不可欠なこととは何ですか。
(⇒5年後の収益を定期的に予想し、会社の生存・成長条件が確保されているかをチェックすること。危機感なくして良い開発は進まない。)
さて、新任役員の方々は、上記[Q1]~[Q3]の質問に適切に答えることができたでしょうか。
「難しかった。役員として持つべき肝心なことが自分には全く整理されていないことが分った」と感想を述べる方も案外多いのではないでしょうか。言い換えれば、新任役員研修には、 "会社法講義" に加えて、 "役員の業績向上への取組み" をテーマに取り上げることが不可欠です。これが会社の持続的成長のための重要な一助になります。
もとより役員は、就任した時から、管理者の延長ではない新たな育成計画を必要としています。本記事での問いかけが、新任役員研修を含めて、役員研修の見直しの契機になれば幸いです。
ご参照:インソースの研修例
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