「イマドキ世代」の育成にあたる管理職が注意すべきこと
「最近の若者の傾向を教えてください」という人事担当者の方の声をよく聞きます。はたして、イマドキの若い世代の傾向をどうつかんだらいいのか、彼らの特徴の分析と対処法を考え、管理職が注意すべきことをあえて浮き彫りにします。
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現代の管理職と「シックスポケット世代」
80年代は若者のことを「新人類」と呼び、この少々皮肉交じりの表現が流行語になって一世を風靡しました。
当時の管理職は昭和ひとけた中心の「焼け跡世代」にあたりますが、この一風変わった若者にてこずる様子が話題になりました。
有名な女性アイドルグループを立ち上げた某氏は、この新人類世代なのですが、現在では業界のリーディングパーソンになっています。
そして、不思議なことに、「焼け跡世代」と「新人類」の上下関係の構図が、今日の係長や課長にとっても心情的にほとんど大差ない形で、コピーされ繰り返されているようです。
最近の新人・若手は、少子化の影響が色濃くあらわれ始めた「シックス・ポケット」(両親・両祖父母の合計6人の経済的なポケットからどんどん欲しがるものを買い与えられる)という世代のようです。現在の管理職とはまったく違う環境で育ち、価値観も異なっている人々なのです。
【合わせて読みたい】管理職が新人・若手を指導する際、どう伝えれば良いのか
最近の新人・若手の傾向とその背景
「近ごろの若手は行儀がよく真面目だ」
「自分たちの若い頃と比べて素直なタイプが多い」
という肯定的な評価が聞かれることも増えてきたように思います。
ただ、それに続けて聞かれる声は、
「でも、指示されないと動けないタイプも多いよね」
「自己主張することが悪いことのように思っているのかも」
といった、ある種の物足りなさです。
管理職が認識すべき最近の新人・若手の傾向として、以下の3点があげられます。
(1) 学生気分が抜けず、幼い
~ 一見大人に見えるが、慣れてくると急に子供っぽさが顔を出す
(2) 自分の頭で考えず、すぐに「正解」を求める
~ 失敗を恐れるあまり、以前に教わったことをもとに考えようとせず、すぐに対応方法を聞いてくる
(3) 人から注意されたことに敏感に反応する
~ 「上司から注意されないためにはどうしたらいいですか」と真顔で尋ねてくる
「シックスポケット」世代は手を掛けられて育ったため、基本姿勢が受け身の人が多く見受けられます。
「組織で働くこと」に対するスタンスは、
「この組織は自分をどう成長させてくれるのか?」
という考えの人が大半です。
このスタンスが、
「自分に合わない」
と思ったらすぐに離職に走るという結果につながってしまいます。
この世代のことは、管理職世代からすると理解の範囲を超えています。
けれども、新人や若手に非があるわけではありません。
「シックスポケット」世代は、競争にも慣れることなく育ったがゆえに、上記のような傾向にあるのです。
自分たちの世代とはまったく違う環境で育ち、価値観も異なることを、管理職の方にはまず認識していただきたいと思います。
前述の回答によると、最近の新人・若手には、
「言われたことはやる、けれど、それ以上のことはやらない」
というタイプの人が多いようです。
「指示されたことの先をやらなければならない」
という、管理職世代なら当然持っているはずの共通認識を、彼・彼女らはそもそも持っていないからでしょうか。
管理職世代の判断から
「経験則として、これくらいは分かるだろう」
と、ざっくりとした指示を出しても、なかなか通用しにくいです。
したがって、「作業が終わったら報告して」ではなく、
「その作業にかかる標準時間の1割が経過したら報告して」
というように、数字を織り交ぜるなどして具体的に細かく指示してあげなくてはいけません。
加えて、報告を受ける際は、いくら忙しくても嫌がらずにきちんと聞いてあげる体制作りが、今までより一層、欠かせなくなっています。
新人・若手一人ひとりをちゃんと見て、それぞれに合った指導方法を考える
管理職は日々、新人・若手を見ていられません。
そこで、管理職はOJT担当者から新人や若手について報告を受けるようにすると良いのです。
もちろん、OJT担当者に育成を任せきりにしては、担当者が疲弊してしまいます。
「職場全体で新人・若手を育てる」
という意識を持って頂き、管理職は組織ぐるみでOJT担当者のバックアップを心掛け、みんなで新人・若手の面倒を見ることが大切なのです。
新人・若手には、こまめに声を掛けることが有効
新人・若手は、「承認欲求」が非常に強いようです。
彼・彼女らは言われればできるので、
「あなたたちは組織から、こういう役割を求められている」
と説明すれば、理解もでき、納得もしてくれます。
だからこそ、
「今、役割を果たそうとしている自分を認めて」
という彼・彼女らの「承認欲求」に対して、
「こまめに声を掛けること」
が重要になってくるわけです。
新人・若手一人ひとりに、みんなが細かく声掛けをしてあげると、それを励みとして、それぞれが懸命に頑張る効果にもつながります。
新人・若手への指導は「最初が肝心」
新人、若手への指導方法として有効なのは、小さな成功体験を積ませていくことです。
成功体験を積むことで、彼・彼女らが
「自分はこの組織の役に立っている」
「自分は成長できている」
と実感できれば、それが突破口になり、徐々に主体性を持って動けるようになっていくでしょう。
ただ、この成功体験にはお膳立てが重要であり、「3回に1回ぐらい、成功できれば良い」というOJTではなくて、
「1つ1つちゃんと成功できる」
というOJTを丁寧に仕向けなくてはいけません。
管理職がこれら様々な背景や育成方法など全体像を把握することで、新人・若手への指導について自ずと理解が深まってくるはずです。
時間がかかりますし、大変な作業ですが、これらのことを新人・若手のための教育として最初に行っておくことで、後々、育成が楽になります。
まさに「最初が肝心」です。
どうしたら主体性を持たせ、行動に移させることができるのか?
まとめてみますと、「シックスポケット」世代という少子化時代に育ってきた彼・彼女らは、両親に加えて双方の祖父母からもお金が注がれる、恵まれた環境で育ってきました。
「欲しい」という欲求が表に現れる前にモノが与えられるため、「待ち」の姿勢が常態となるのです。
そして、いわゆる「ゆとり教育」を受けてきた彼・彼女らは、個性を尊重する教育のもと、
「それもありだね」
「個性的でいいよ」
と、常に肯定されながら生きてきました。
社会人になってからは、さすがに全てが肯定されるとは思っていませんが、否定されることに慣れていないため、自分の意見を言うことを極端に恐れ、常に「様子うかがい」の姿勢で臨むことになってしまうのです。
こうした彼・彼女らの歩んできた道のりを見てみますと、「主体性の発揮」とは対極の環境の下で生きてきたように思えます。
「真面目で素直なウチの若手社員に、あとは主体性が加わると申し分ないのだが・・・」
と言うつぶやきが聞かれます。
「シックスポケット」世代、はたまた「ゆとり世代」、「さとり世代」と呼ばれる新人・若手に、
「主体性を身に着けさせる」
「主体性を行動に移すことができる」
主体性発揮のための研修をまず受けてもらうことが、管理職の悩み解決の一助となるかもしれません。