【オススメ本の紹介】妄想が人を動かす～ビジョン思考

１．「なんかわくわくする」を探す～ビジョン思考のはじまり

例えば教育ＮＰＯカーンアカデミー。創業者サルマン・カーン氏の「誰もが無料で教育を受けることができる場をつくりたい」という想いから設立されました。世界中から寄付が集まり、教育業界に多大なインパクトを与えています。個人の想いや妄想に端を発する「これがやりたい！」が拠り所となっているのです。

しかしそんなことができるのは一部の天才だと思われがちです。他者を巻き込むようなビジョンなんて描けない、というのは誰もが感じることでしょう。

本書の冒頭ではひとりの女性の事例が紹介されています。彼女は「仕事はうまくいっているけど、なんかもやもやする。『本当にやりたいことがわからない』......」と言います。そこで佐宗氏が勧めたことが①ノートを１冊購入し、②毎日ノートを書く時間をスケジュールすること、の２点でした。

毎日決まった時間に出社し、スケジュールされた会議をこなす、合間で資料を作成し、休日には友人とお茶しながら近況報告をしあう。これらは「どうすれば他人が満足するか」の視点で行動する他人モードの思考で、「自分がどう感じるか、どう思うか」の自分モードの思考が欠けています。この自分モードの思考を取り戻すことが、妄想を膨らませていくスタート地点だと著者は説明しています。

ビジョンというとちょっと大きすぎる感じもしますが、上記の女性のように自身のキャリア形成・モチベーションという視点から考えれば、ビジョン思考は身近に感じられます。現実的に戦略的に考えるよりも、未来志向で自身のありたい姿や理想を描くほうが、期待が膨らんでくるものです。

２．シンプルで分かりやすい世界は問題だ～知覚力を磨く重要性

日々情報があふれている現代社会において、シンプルでわかりやすいは評価されます。ニュース・書籍の要約サイト、歴史や世界経済を短時間で解説する動画といったサービスのおかげで、私たちは複雑な世界を短時間で理解できるようになりました。しかし、こういった情報に触れるだけでは思考が無個性化・均一化してしまうと著者は警鐘を鳴らしています。物事の断片をみるだけで満足してしまい、その外側にある情報に触れることができないからです。妄想は膨らまず、他人をひきつけるユニークなビジョンとは逆方向に進んでしまうのです。

そこで改めて考えたいのが「知覚」の力です。知覚とはモノ・コトをどう感じるか、理解するかということです。赤ちゃんは訳もわからないまま大人たちが話す言葉を聞きながら、自分で解釈し言葉を覚えていきます。この「複雑なものをまずは複雑なまま捉えて自分の解釈で意味付けをしていく」作業は、新生児期には日常的に行っていた行動ですが、理解できる物事が増えるにつれて失われていきがちです。

特にＶＵＣＡの時代と言われるいま、「状況を捉え、それに意味づけをして、他人を納得させ動かしていく」ことが必要です。このときに知覚した情報の解釈が独創性やユニークさの根源となり、「この人についていきたいな」というマインドやイノベーションへとつながります。複雑怪奇な時代において「知覚力」はリーダーシップの大事な要素のひとつになりそうです。

３．インソースグループのビジョン思考関連サービス

インソースグループでは、ビジョン思考を用いて戦略の立て方を学び、経営者に必要なスキル・知識を習得する次期経営者育成プランをご用意しています。また本書で紹介しているレゴ®シリアスプレイ®のほかにも、ドミノなどのツールを使い手を動かして考えるビジョン思考の要素を取り入れたワークショップなどもご提供しています。

ビジョン思考は若手から経営層までのあらゆる立場、そしてキャリア形成や戦略立案などの様々な目的で活用できる思考法のひとつです。気になるサービスがございましたらお気軽にお問合せください。