「クレームは宝」の意味を探るシリーズ③~サイレントクレーマーを考える
前回「クレームをおっしゃる方を理解する」では、クレームをわざわざ言って下さるお客さまの心情や、「クレームを言う負担」を理解しました。
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「もの言わぬお客さま」の存在について考える
クレームの発生について考えるとき、まず念頭に置くべきなのは、
そもそも「不満があっても何も言わずに離れていく」お客さまが大多数である、ということです。
あまりにもずさんな対応の飲食店に入って
「ここは二回目はないな」
と感じ、実際に訪れることはない、という経験をしたことのある人は多いのではないでしょうか。
サービスや商品の質が想像を超えて悪かったり、担当者の対応がひどかったりしたときに、「それをわざわざ言うのも面倒だ」「イヤな人だと思われたくない」などと感じ、何も言うことなく、二度と利用することはなかった......。あなたも、一度はそんな経験がありませんか?
クレームを寄せられる側の立場で、この問題を考えてみましょう。知らず知らずのうちにお客さまを失った組織は、指摘ひとつで改善できるミスを繰り返し、同じ不満を抱えたお客さまを、何人も失っている可能性があるのです。
1人クレームをおっしゃるお客さまがいたら、9人は同じことを考えて離れていったお客さまがいると考えても決して少なくはないでしょう。こちらとしては「言ってくれればいいのに!」と思っても後の祭り。改善すべき点に気づかないままの接客やサービスは一人よがりです。
「クレームを言わずに離れる人」の不満を集めるには多大な労力がかかる
クレームを言うことは何らかの心理的「負担」がかかります。
では、負担をかけずにサイレントクレーマーの言い分を聞けばよいではないかと思いがちです。それにはアンケートやインタビューで調査するという手段がありますが、回答には手間や時間がかかります。多くの場合、そういった調査は「報酬」がなければ、相手にしていただけません。
また、アンケートやインタビューにはコストがかかる割に本音が見えにくいというデメリットがあります。
何年か前に、「悪口を言ってくれたら100万円」とうたった企業がありました。その企業はコンテストを企画し、集まった意見をもとに大幅な顧客サービスの改善に着手することができました。「クレームを言う負担」を考えると、クーポンをつけてでも、割引をつけてでも、喉から手が出るほど欲しいものがクレーム、と考えるべきなのでしょう。
まさに企業にとっては「クレームは宝なり」なのです。
「クレーム対応」だけでは不十分
クレームにならないからといって胸をなでおろしていてはサービスの改善は見込めません。
1人のクレーマーの後ろに9人のクレーマーがいるとわかった上で対処しないのでは、9割の顧客の意見に耳を傾けないことを意味します。目に見えるクレームの内容や件数だけに気を取られることなく、サイレントクレーマーの要望に配慮しましょう。