2025年2月21日
日本生命保険が海外事業で巻き返しの姿勢を鮮明にしている。昨年12月、生損保を問わず日本の保険会社として最大規模となる買収を発表した。約1兆2000億円の巨費を投じる。一方で、人口減で生保市場が縮小に向かう国内にあっては介護などの非生保事業の拡大にアクセルを踏み込んでいるが、その手立てはやはりM&Aだ。
日本生命が買収するのは米国や豪州で生保事業を展開するレゾリューションライフ(本社・バミューダ諸島)。現在約23%の株式を保有するが、残る株式を約82億ドル(約1兆2000億円)で追加取得し、完全子会社化する。
買収完了は2025年下期(7~12月)を見込む。日本生命は2019年以降、レゾリューションライフに段階的に出資しており、累計投資額は1兆4200億円に上る。
レゾリューションライフは他社が契約した既保険(生命保険、年金保険)受託と再保険を経営の両輪とし、運用資産残高は約12兆円、保険契約数は約430万件。とくに既保険受託では世界のトップクラスという。
巨額買収の狙いは何か。第一は世界最大で今後も安定的な成長が見込まれる米国保険市場での事業拡大に向け、強固な足掛かりを築くことにある。実は、日本生命として米国での生保買収は今回が初めてとなる。
もう一つは豪州事業の一層の強化。2016年に買収した現地生保MLCについて、残る20%の株式を買い取り、完全子会社化したうえで、レゾリューションライフの豪州持ち株会社との経営統合を予定する。豪州生保市場でトップ3を維持し、隣国ニュージーランドでも攻勢を強める。
さらに、レゾリューションライフの買収を発表した昨年12月には、米国の別の大手生保であるコアブリッジに5800億円を出資した。これにより21%の株式を取得し、持ち分法適用関連会社とした。
日本生命の2024年3月期の基礎利益(本業のもうけを示す)は7640億円で、このうち海外事業のウエートは4%(約340億円)にとどまる。海外事業で先行する第一生命ホールディングス(HD)はおよそ30%に達しており、大きく見劣りするのが実情だ。
レゾリューションライフの買収が完了すれば、新たに加わるコアブリッジなどと合わせて、グループの基礎利益に占める海外事業の割合は20%(約1800億円)に上昇する見通しだ。
大手生保は国内市場の成熟化を見据え、2010年代半ばから海外での大型M&Aを活発化してきた。
なかでも主戦場の米国生保をめぐっては、第一生命HDが2015年に約5800億円でプロテクティブを、翌年16年には明治安田生命保険がスタンコープで約6200億円、住友生命保険がシメトラを約4600億円で矢継ぎ早に傘下に収めた。
損保でも同時期の2015年、東京海上ホールディングスが9400億円を投じ、米HCCインシュアランスを買収した。こうした中、米国事業で日本生命が水を開けられる格好になっていた。
もちろん、日本生命が手をこまねいていたわけでなない。2016年には豪州生保のMLCを約2000億円で買収した。タイやインドネシアなどでの出資はあったが、本格的な海外生保の買収はこれが初めてだった。
国内では2015年に三井生命(現・大樹生命)を、2017年に旧平和生命保険を前身として当時、外資傘下だったマスミューチュアル生命保険(現ニッセイ・ウェルネス生命保険)を子会社化。さらに2019年にはネット生命のはなさく生命保険を開業した。
ところが、豪州生保MLCで誤算が生じた。同社の資産査定が甘かったことや、現地の規制強化などで、買収後しばらく赤字が続き、3度にわたる合計850億円の追加支援を強いられるなど苦戦。買収5年後の2021年にようやく黒字回復を果たした。
こうしてMLCの経営が軌道に乗ったことで、停滞を余儀なくされていた本格的なM&Aも再出動のタイミングをうかがうだけとなっていた。
昨年春に策定した中期経営計画(2024年4月~27年3月)では3年間で海外を中心に2兆円超の成長投資を行う方針を打ち出した。
その初弾となったのが介護最大手のニチイ学館を傘下に持つニチイホールディングス(東京都千代田区)の買収。金額は約2100億円。日本生命の国内M&Aとして過去最大で、昨年6月に買収を完了した。狙いは非生保事業の拡大による収益源の多様化だ。
ニチイHDは2020年にMBO(経営陣による買収)で株式を非公開化し、米投資ファンドのベインキャピタルの傘下で経営改革を進めていた。
日本生命は2035年のグループ基礎利益について、現在の2倍(約1兆4000億円)に拡大することを目指している。この中で、海外保険をはじめ、アセットマネジメント(資産運用)、ヘルスケア、介護、保育関連などの国内保険事業以外の分野で約4000億円を賄う姿を想定している。
現中計で設定した2兆円規模の投資枠はニチイHD、レゾリューションライフの買収とコアブリッジへの出資で1年目にして早くも使い切ることになる。今後、投資枠の追加・拡充に動くのか、要ウオッチとなりそうだ。
◎日本生命保険:主な沿革
年 | 出来事 |
1989 | 創業100周年 |
1996 | ニッセイ損害保険(現あいおいニッセイ同和損害保険)を設立 |
2003 | 中国に合弁で広電日生人寿保険(現・長人寿保険)を設立 |
2004 | バンコク・ライフ(タイ)を関連会社化 |
2011 | リライアンス・ライフ (インド、現リライアンス・ニッポンライフ・インシュアランス)を関連会社化 |
2014 | セクイス・ライフ(インドネシア)を関連会社化 |
2015 | 三井生命保険(現・大樹生命)を子会社化 |
2016 | オーストラリアのMLCライフインシュアランスを子会社化 |
2017 | 米資産運用会社TCWを関連会社化 |
2018 | マスミューチュアル生命保険(現ニッセイ・ウェルネス生命保険)を子会社化 |
2019 | はなさく生命保険を開業 |
〃 | グランド・ガーディアン・ライフ・インシュアランス (ミャンマー、現グランド・ガーディアン・ニッポンライフ・インシュアランス) を関連会社化 |
2022 | ニッセイプラス少額短期保険を開業 |
2023 | 米生保のレゾリューションライフを関連会社化 |
2024 | 6月、介護大手のニチイホールディングスを子会社化 |
〃 | 12月、米生保のコアブリッジを関連会社化 |
〃 | 12月、米レゾリューションライフの買収を発表 |
配信元:M&A Online
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