問題解決
知的生産の技術は、いつの世もビジネスパーソンの関心事。変化する時代に応じて、次々と新しい理論や書籍が登場しています。 ここ十数年ほどは「論理的思考力」が注目され、「ロジカルシンキング」「MECE」といったワードが業界・業種を問わず使われるようになりました。 通常のビジネスシーンでは、「課題の設定」→「論理的思考を用いて解決策を考える」→「実行する」→「検証する」という一連のフローが常道で、 論理的思考力の使いどころは「課題の解決策を考えるプロセス」であるケースが多いでしょう。 しかし、本書『イシューからはじめよ』では、「それが本当に解くべき課題(=イシュー)なのか」に着目し、解くべき問題を見極め、解の質を上げていくことが知的生産を圧倒的に効率化する「肝」だと述べています。
本書が出版されてからすでに10数年が経ちますが、脳科学にも造詣が深い著者が唱える生産性へのアプローチは未だ鮮度を失っていません。 全体を通して概念的な話が展開されていくので、最初はややとっつきにくい印象を受けますが、本質は至ってシンプル。読み進めていくうちに、「ああ、あれはこういうことだったのか」 「あの時の失敗は、ここを取り違えていたからなんだ」という経験値の「点」が、頭の中でいくつもつながる瞬間があるはずです。 巷にあふれる「知的生産本」を読んで、いつも何かが違う、と感じている方におすすめしたい一冊です。
書籍情報
安宅和人 著
『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』
(英治出版、2010年)
著者の安宅氏は、もともとは生物化学で修士号を取得したサイエンティストです。 その後マッキンゼーに4年半勤務し、それからなんとイェール大学の脳神経科学プログラムに入学の末、驚きの速さで博士号を取得します。 再びマッキンゼーへ復帰した氏は、マーケティング分野を中心として、自身が培ったニューロサイエンスの知見をフルに活用した実績を挙げています。
異色の経歴を持つ安宅氏が、異なる世界に見出した共通のセオリーが「問題を解く前に、イシューを見極めること」の重要性。 その理由、考え方の手順を読んでいけば、科学研究の分野では定石とされる思考のフレームを、うまくビジネスシーンに適応するように翻訳してくれていることがわかります。
仕事の生産性を高めるためには、「バリューのあるアウトプット」をいかに効率的に繰り出せるかがカギとなります。 バリューのあるアウトプットとは「イシュー度(どれだけ良い課題を設定するか)」×「解の質(どこまで明確な答えを出せているか)」の乗算値が高い仕事のことですが、多くの人は、「解の質」が仕事のバリューを決めると考えがちです。 しかし安宅氏は、本当に重要なのは「イシュー度」であり、「世の中で問題だと言われているものの大多数は、今、答えを出す必要がないもの=なんちゃってイシュー」だ、と現実をバッサリ斬っています。
私たちは常に問題の解決にこだわり、質の高い答えを出そうと悪戦苦闘しますが、世を欺く「なんちゃってイシュー」に対していくらそんな努力をしてもムダの極み。 まず最初に、物事の本質を見抜く力を身につけなさい、というのが氏の強いメッセージだと読み取れます。
本書では、「イシューからはじめよ」の意義を説いた後、「よいイシューとはどのようなものか」「イシューを特定するには」というイシュードリブン、「イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる」仮説ドリブン、「実際の分析を進める」アウトプットドリブン...というように、イシューオリエンテッドの問題解決法を順に説明しています。 その中で氏は、「情報の集めすぎ」「表層的な情報処理」「論理のみへの依存」などの全てにノーを突きつけています。 全編を通して氏が掲げるテーマは「本質を見極めるスキルを磨くこと」ですが、そのために役立つのが「脳科学的見地での情報処理や認知に関する知見を活用すること」や「見極めるべき事柄を自分の目と口と頭を頼りにして見つける経験を積んでいくこと」だと説いています。
これらは一見相反する2つの事柄にも思えますが、言い換えれば「エビデンスに立脚した深掘りを繰り返し、経験という道具を使って精緻化していきなさい」という示唆ではないでしょうか。 まさに、サイエンスとビジネスコンサルティングという、氏の複眼的思考がよく現れた表現だと思います。 自分自身の考え方の偏りにとらわれず解決すべき課題を見極め、多くの人に理解・共感してもらえる企画やプレゼンテーションを行うといった際にも、ハッとする気づきのピースを与えてくれる思考の指南書です。
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