研修を語る
2024/04/24更新
課題設定力研修を語る ~主体的な問題解決のための手法とマインド
社会構造や働き方、人々の価値観の変化などを背景に、従来の手法では解決できないような問題が増えています。複雑化する社会で問題を解決に導くため、管理職やリーダー層に求められるのは「課題設定力」です。
「課題設定力研修」は、問題解決系の研修の中でも、より実践的な内容になっています。研修の狙いやポイントについて、講師に伺いました。
「テクニック」だけでなく「マインド」を養う研修
―「課題設定力研修」を一言でいえばどのような研修なのでしょうか。
主体的な問題解決のための手法とマインドについてお伝えする研修となります。問題解決系の研修では、どちらかというとテクニックを学ぶものが多いのですが、この研修は、「マインド」の面にも力を入れているのが特徴です。「当事者意識をもって、主体的に問題解決について考える」実践力を身につけるための研修となっています。
―なぜこの研修が必要なのでしょうか。
たとえば、近年は「働き方改革」の推進により、労働時間の管理などが厳しくなりました。無駄を排して業務を効率化し、生産性を向上させることが以前にも増して求められるようになっています。
多忙な職場で、周囲にあるすべての問題を解決することは現実的にはできません。生産性向上の観点から、「問題の本質は何か」を突き止め、解決すべき問題を選び取ることが重要となります。その「問題の本質は何か」を捉える力が、課題設定力なのです。
問題解決に「手本」のない時代。必要とされる課題設定力
―課題設定力研修がスタートしたのはいつですか。
2019年度にスタートしました。公開講座のほか、講師派遣などの形でも実施していますが、実施回数、受講者数ともにかなりの数に上っています。
―この研修を企画したきっかけや背景について教えてください。
この研修を作成した当時も今も、変化のスピードが早い時代の中で、従来の解決手法だけではなかなか問題に対処できない状況に、みなさんは置かれています。これまでのように「お手本」を基に、問題解決に当たるということができなくなっています。
明確に問題が目の前にあって、解決する手法がわかっている状況にない中、現在のビジネスパーソンは、さまざまな問題を解決していかなければなりません。そんなビジネスパーソンに向けた研修がほしいと、お客さまから要望が寄せられていました。
「管理職になる一歩手前」で身につけておきたい課題設定力
―研修のターゲットとなる業種などはありますか。
ターゲットとなる業種などは、とくに限定はしていません。主体的に問題解決に当たることを必要とされている方、主体的に問題解決に当たりたいとご自身で考えられている方が、受講者層のイメージです。
はじめて「まとめる立場」や「リーダーの立場」になるころが、「自分自身で問題を解決して部署を動かしていかなければいけない」ということに、直面しはじめるタイミングでしょう。そんな「管理職の一歩手前ぐらい」の役割を担い始めたような方に、ぜひ受けていただくといいのかなと思っています。
―管理職になる前、早めに課題設定力を身につけるべきだということですね。
どんな業種の方でも、「指示を受けて仕事をする」という立ち位置から、いずれは自分で問題を解決しなければいけない立場になります。そのときに、主体的に考え、行動することができるかできないかで、その先のさらなる伸びが変わってくるだろうと思います。
はじめて「自分で考えなければならない」という立場になったとき、課題設定の手法を早めに定着化させれば、管理職になっても、さらにはその上にいってからも、前のめりの仕事をしていけるのではないかと考えます。
キャリアを前に進めていきたいと考えている方たちにぜひ、受講いただきたいと思います。
―実際の受講者の年齢層はどのくらいですか。
30代から40代の方で、中堅層から管理職の方が多い印象です。公開講座のプログラムとしては、かなりハードルの高いワークも設定しているのですが、受講者のみなさまが、その部分をとても楽しそうに進めていたのが印象的でした。
受講者のみなさまそれぞれが、職場内で課題感をもっていらっしゃいます。それを適切な観点や手法にのっとって整理し、本当に問題解決すべき課題がどこにあるかを見い出していくというプロセスを一緒に行います。それによって、「なんとなく捉えていた問題」を「解決すべき課題」として取り出し、アクションにつなげていくことができると、実感していただけているようです。
「問題発見」と「問題解決」の間のプロセス。それが「課題設定」
―具体的な研修内容についてお伺いします。研修内容でもっとも大切なのはどんな点でしょうか。
「問題発見」と「問題解決」の間には、「課題設定」というプロセスがあるという点です。
問題発見、問題解決という組み合わせはよく聞くもので、みなさまもすぐ理解できると思います。しかし、その間には「課題設定」というプロセスを入れなければならないというお話です。課題設定というこの研修の重要性をお伝えする中で、カギとなる部分になります。
―具体的にはどんなイメージですか。
問題が見つかった。では、その問題を片っ端から解決していきましょう。そんな風に作業をしていたこともあるかもしれませんが、より問題の中身、レベルが上がっていくと、全部が全部、解決できるわけではなくなります。「とりあえず端から順番にやっていきましょう」というやり方では成果があげられなくなるのです。
では「何からすればいいのだろう」と、悩むことになりますね。そのとき、問題発見と問題解決の間のプロセスとして、「課題設定」を意識することによって、より生産性に寄与できるような問題解決ができるようになります。
「あ、ここにもう一つプロセスがあるんだ」ということをしっかり認識したうえで、次の研修内容に進んでいくという流れです。
―ほかにはどんな内容がありますか。
問題を発見する手法についてです。問題発見には、「センス」のような要素が大きいとはいえ、「いつもどんなことを意識してものを見ているか」が大事になります。「こういうものの見方をしていれば問題を発見しやすい」といった手法をお伝えしていきます。
―発見した問題の分析についても学べるのでしょうか。
問題の分析方法についてもお話しします。これは通常の問題解決、ロジカルシンキングの研修などでもお伝えするような内容です。受講生のみなさまには既視感があるかもしれませんね。
課題の見極めに役立つ「イシュー」を理解する
―実際に課題設定を行う際、重要となる点について教えてください。
これまで説明してきた通り、さまざまな問題がある中で、片っ端からそのすべてに取り組もうとしても、できるものではありません。生産性の向上という観点からも、そうした問題解決の仕方は避けるべきです。
問題がいろいろ見つかった。それがどんな構造になっているのか分析できた。その中で、どこを解決すれば効果的なのか、「本質的な問題はどこにあるのか」というのを見極めるのが、課題設定力の一番重要なところ、最終局面になります。
そのときに有効なものの見方、考え方として「イシュー(issue)」という概念をお伝えしています。これが課題解決の山場、一番おさえておきたいポイントです。
―どのようにすれば、「イシュー」を見極められるようになりますか。
「イシュー」というのは、少し説明の仕方が難しい考え方ですね。直観とか、センスなどに左右されるところではありますが、手法、観点みたいなものを身につけていれば、見つけ出しやすくなります。研修では、具体的な視点や観点についてお伝えしています。
―イシューを見極め、課題を設定できた後に、するべきことはありますか。
当事者意識をもって、問題を課題として捉えて解決していこうとしても、自分一人でできるわけではありません。周囲の人を巻き込みながら進めていく必要があり、そのときのポイントを最後にお伝えします。
どういう考え方、どういう関わり方をしていけばうまく進められるのか、聞いてもらえるのか、反対する人たちを懐柔することができるのかなど、具体的なノウハウを含めた内容になっています。
「問題」と「課題」の違いを意識する
―演習やワークの内容についてもお伺いしたいと思います。特徴的な演習やワークがあれば、教えてください。
研修の前半で、「問題と課題の違い」についてのワークがあります。テキストで職場の事例について読み、どこが「問題」で、どこが「課題」なのか、自分なりの意見を記入し、グループメンバーの意見と比較するといった内容です。
そのうえで、後半のワークでは最初のワークで問題として挙げたのが本当に問題だったのか、課題として挙げたのが本当に課題だったのかを振り返ります。
問題と課題の違い。課題として位置づけるためには何が必要なのか。自分が主体的に「これは自分が解決しなければならない問題だ」と選び取って、はじめて「課題」になるというところを、この一連のワークを通じて、追体験していただくのが狙いです。
―研修を受けた方の感想などについて教えてください。
「今まで『課題』と『問題』の違いを明確に認識していなかったけれど、今後は『課題』というところを意識して、『どの問題を解決するのか』と取捨選択することも考えていきたい」といった感想をいただいています。
―最後になりますが、研修について、とくに強調したい点をお話ください。
問題解決系、ロジカルシンキング系、思考系の研修は、自己研鑽のテーマとして人気のある分野です。学びたい意欲のある人は必ず選ぶテーマにはなってきますが、手法、テクニックを学ぶ研修の色合いがどうしても強くなっています。
この課題設定力研修は、具体的に実践を想定した内容で、ロジカルシンキングだけの話でなければ、意識づけだけの話でもありません。「ロジカルシンキング」と「意識づけ」を総合しながら問題をとらえ、考えていくという実践力を身につけてもらうための研修となっています。
ロジカルシンキング、問題解決の研修を受けた方に、ぜひ受講していただきたいですね。さらなる効果が期待できると思います。
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