インソース・ビジネスレポート
グローバル・タレント育成のためのフィリピン活用について
もともとフィリピンは、海外への出稼ぎ労働が重要な就労形態となっている国のひとつである。たとえば、9割以上が外国人船員であるといわれる外航船乗組員のなかでは、以前から最もポピュラーな存在がフィリピン人であった。
筆者には90年代後半に香港駐在経験があるのだが、フィリピン人家政婦※1が出稼ぎ労働者として多数進出していたことを記憶している。このような現象は香港に限らず、他のアジア先進都市でも似たような状況にあった。これらの地域は夫婦共稼ぎが多い華僑経済圏であり、家政婦需要がもともと高いことも背景にあるが、フィリピーナ・パワーが各地の経済活動を下支えしてきたともいえる。
統計を調べると、母国人口94百万人余に対し海外在住者数は1千万人前後に上ると見られている。OFW※2と呼ばれるこれら海外在住者が稼いだ所得から母国へ送金される額は、年間200 億USドル(約2兆円)を超えており※3、同国GDPの1割近くに達している※4。
こうした事例と数字から分かるように、長きにわたり国内経済が低迷していたフィリピンでは、海外への出稼ぎが収入獲得の重要な手段として認識されている。つまるところ、フィリピン人にとってのボーダー・レスなバイタリティは、生きてゆくためには必要不可欠な能力として、背に腹は代えられない状況で身に付けてきたものともいえる。
前述した職業以外では、伝統的に看護師が代表的であり、国内には看護師養成学校も多数存在する。以前からサウジアラビアなどへ年間数千人ペースで出ていたようだが、2000年代に入り年間1万4千人と急増した時期もあるほど、この分野における出稼ぎ労働者数の変動は激しい 。その原因はおもに英米圏の需要増減に依存しているのだが、これにより比較的高度な医療英語習得者が国内で余剰となり、英語講師への転身を図ろうとする流れがあったとも現地ではいわれている。
一方、近年の海外出稼ぎ労働者の職種は多様化している。大学進学率が3割近くに上り、アジアの中でも比較的高い学歴社会となっている現代のフィリピンでは、人材の質が高度化している。今ではより幅広い分野で、より高度なスキルが要求される業務に就くフィリピン人が増加している。
たとえば、すでにグローバルに活動している日系企業ではフィリピン人技術者を最前線で活用することは日常的な光景となっている※6。日本では理工系の人材不足が叫ばれて久しいが、さらに近年は内向き思考の強さも指摘されている。そのような日本人を横目に、グローバル・タレントとしての資質とアドバンテージを備えたフィリピン人を、日系企業が積極的に活用するケースが増加傾向にあるのだ。
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