インソース・ビジネスレポート
グローバル・タレント育成のためのフィリピン活用について
フィリピン観光省の英語版ホームページを見ると、フィリピンは現在、世界で3番目に英語を話す人口が多い国であると説明されている※11。さらに日本語版ホームページにはアメリカ・イギリスに次いで世界で3番目に英語を話す人口が多い国とより詳しく記されている※12。この順位がどのような統計に基づいているのか、これらのホームページには引用がない。
ウィキペディア英語版を見ると、(表1)のような複数の出典からまとめた国別の英語スピーカーに関する一覧表が存在する※13。データの比較時点が2000年と古いこともあり判断が難しいが、英語話者人口の絶対数では、パキスタン、ナイジェリアとともにフィリピンは第3位グループに属してはいる。この第3位グループ内の順位はこの十数年で変化している可能性もあるが、米英に次ぐのではなく、米印に次ぐ第3位であり、こちらは容易に順位が変更しないと思われる。いずれにしてもフィリピン観光省見解の根拠は不明である。
実際のところ、ネイティブ・スピーカー(英語母国語話者)は別としても、ESL※14として認められる英語力の閾値について世界的に統一基準があるとも思えず、正確な統計を求めること自体がナンセンスかも知れない。
英語話者人口 (人) |
全人口 (人) |
英語話者比率 (%) |
英語母国語話者 (人) |
|
---|---|---|---|---|
米国 | 267,444,149 | 280,950,438 | 95.19 (13位) | 225,505,953 (1位) |
インド | 125,226,449 | 1,030,000,000 | 12.16(120位) | 229,449(24位) |
パキスタン | 88,690,000 | 181,000,000 | 49.00 (71位) | - |
ナイジェリア | 79,000,000 | 148,093,000 | 53.34 (55位) | 4,000,000 (7位) |
フィリピン | 76,177,000 | 97,000,000 | 78.53 (42位) | 3,427,000 (9位) |
英国 | 59,600,000 | 60,975,000 | 97.74 (7位) | 58,100,000 (2位) |
ドイツ | 46,272,504 | 82,191,000 | 56.00 (53位) | 272,504(18位) |
バングラディシュ | 29,289,500 | 163,323,100 | 18.00(112位) | - |
エジプト | 28,101,325 | 80,289,500 | 35.00 (89位) | - |
フランス | 25,500,000 | 65,350,000 | 39.00 (85位) | - |
(出所)List in order of total speakers を基に筆者修正
一方、米国カリフォルニア州ブリスベンにあるGlobal English社は、同社のクライアント企業がグローバルに展開している拠点156ヵ国における108,000人の従業員を対象に、ビジネス英語スキルに関するサーベイを実施している。これを基にBusiness English Index(ビジネス英語指数)」として10 段階で評価したものをBEI Scaleと呼び、国別に能力比較を行っている。ここではその詳細な説明は省略するが、目安としては1~3 が初心者、9~10がネイティブ・レベルとなっている。
英語話者人口を比較するよりも、この報告書の2012 年度版※15を見たほうがフィリピン人のビジネス英語における実力を垣間見ることができる。すなわち、国別ではフィリピンのスコアは7.11と世界第1位にランキングされており、2011年から2年連続で独走状態にあるのだ。
フィリピンの後にはノルウェー、エストニア、セルビアなど、北欧や東欧の国々が6点台半ばで続くことから、フィリピンは突出しているといっても良い。オーストラリア、カナダなど英連邦諸国やシンガポールでさえ、その順位はこれら北欧や東欧の国々のさらに後塵を拝している。そして、米国に至っては2011年の6.90から2012年は5.09へと暴落しているのだ。これは、グローバル人材が世界規模で流動化しているなか、かならずしもビジネス英語能力の高い人材が米国に流入しているわけではない現実を浮き彫りにしているのではないかと考えられる。
この評価尺度には英語そのものだけではなく、ビジネススキルの要素が加わっているため、単純に言語能力を比較するには問題があるかもしれない。しかし、ビジネスの世界で通用する英語を体得していることが、英語を意味のあるコミュニケーション・ツールとして使いこなしていると考えるビジネス・パーソンの場合、このビジネス英語における能力比較は大きな意味を持つ。
ちなみに、日本のスコアは3.40と初級レベルに属し、韓国の5.24に大きく差をつけられ、アジア圏では最低水準にある。
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