続・「悪質なクレーム」に対処するポイント:「法律」を味方につける!
前回はこちら:不当で過剰な主張をする「悪質なクレーム」対処のために知っておきたいこと
悪質なクレームは、法的手段で対処できる場合があります。
そのときに関わることが多い代表的な罪名を、ぜひ覚えておきましょう。
これがわかっていると、有事の際でも混乱せずに対応できる「後ろ盾」になるはずです。
- 目次
(1)脅迫罪
▼罪の内容
相手を脅して、恐怖を与える。2年以下の懲役、または30万円以下の罰金。
▼「脅迫罪」に相当しうる、悪質なクレーム例
謝罪の姿勢を示し、常識の範囲内での賠償内容を提示しているにもかかわらず、
大声を出す・モノを壊すなどの威嚇行為を通じて、「それでは納得できない」と執拗に迫る。
▼具体的な発言例
●「てめー、ぶっ殺すぞ!」
●「担当者の名前は把握したから、住所もわかってる。組の者には、もう話をつけておいたから。」
●「あんたの会社のこと、ネットで晒し者にしてやる」
▼有効な対処法
「お客さまのご意見をしっかり理解するため」など、相手方にも合理的な理由をもって、
録音などの記録を取らせてもらう許可をもらいましょう。
(2)強要罪
▼罪の内容
脅迫や暴力を用いて、相手に義務のないことをさせる。3年以下の懲役。
▼「強要罪」に相当しうる、悪質なクレーム例
謝罪の意を示すだけで満足せず、「土下座」や「謝罪文の提出」、「関係者の辞職」など、
義務を越えた行為を強いたり、実現できないほどの償いを求めたりする。
▼具体的な発言例
●「ほら、今すぐここで土下座しろよ!」
●「謝罪なんかいらないから! とにかくこいつを辞めさせろって言ってんだよ!」
●「今すぐ、ここで謝罪文を書けよ。できあがったら、他の客にも聞こえるように読め。」
▼有効な対処法
「そういった行為は、強要罪にあたると理解しています。私どもとしては、断じて応じることはいたしません。」
「これ以上のご無理をおっしゃるようなら、弁護士を通じて相談させていただきます。」など、
毅然とした態度を貫くよう心がけます。
(3)恐喝罪
▼罪の内容
脅迫などで相手を怖がらせ、金品を脅し取る。10年以下の懲役。
※「脅迫罪」との違いは、「金品の要求があるかないか」。
▼「恐喝罪」に相当しうる、悪質なクレーム例
「ネット等に悪評を流す」「お前の上司に言う」などの揺さぶりをかけたうえで、過剰な見返りや金品の要求をする。
▼具体的な発言例
●「まさか謝罪だけで済むと思ってないよね? 慰謝料、〇百万は払ってもらうよ。」
●「今回のことを黙っていてほしいなら、『それなりの誠意』を見せるのが普通ですよね?」
●「あんたらのせいで怪我して、まともに生活できないわ! 治療費、〇〇万円くらい払うのが当然でしょ。」
▼有効な対処法
「『誠意』というのは、具体的に、何を指しているのでしょうか?」などと質問を返すことで、
相手に金品の要求を具体的に発言させると、法的手段での対処がしやすくなります。
(4)威力業務妨害罪
▼罪の内容
威力を用いて業務を妨害する。3年以下の懲役、または50万円以下の罰金。
▼「威力業務妨害罪」に相当しうる、悪質なクレーム例
大声を上げる・机を叩く・蹴るなどの行為で、その場にいる人たちを怖がらせたり、迷惑をかけたりして、要求を無理にでも通そうとする。
▼具体的な発言例
●「(机を暴力的に叩きながら)オイ、話聞いてんのか? どうするのかって言ってんだよ!」
●「(その場にいる人たちに大声で)みなさ~ん、こいつはね~、お客さまに向かってこんなことを言うんですよ~!」
▼有効な対処法
こちらの注意喚起に耳を傾けず、迷惑行為を続けるようなら、
毅然とした態度で「これ以上そのようなことをされるなら、警察を呼びます。」と主張しましょう。
(5)不退去罪
▼罪の内容
正当な理由なく、他人の敷地内に居座る。3年以下の懲役、又は10万円以下の罰金。
▼「不退去罪」に相当しうる、悪質なクレーム例
嫌がらせやプレッシャーをかけることを目的として「要求を受け入れるまで帰らない」と言い張り、
オフィスや店舗に居座る。
▼よくあるクレーム発言の例
●「俺は客だぞ? 客に向かって『帰れ』とは何事だよ!」
●「本部の責任者が来て誠意を見せるまで、ここで待ってるから。閉店時間? そんなの知るかよ!」
▼有効な対処法
こちらも同様に、毅然とした態度で「これ以上そのようなことをされるなら警察を呼びます。」と主張しましょう。