銀子のひとりごと ~敏腕営業パーソンのインタビュー後記
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ちゃんとした営業はたいへんそうだ
私は銀子(仮名)。幼い頃、「押し売り」という商売がありました。ゴム紐などの小間物を持って戸別訪問し、何かしら売れるまで玄関先に居座ります。恐ろしいうえ、単価が安く邪魔にならない品物なので、居座られた家では少しだけ購入して帰ってもらうことが多かったのです。
あまりに極端な例で、あり得ないことですが、失礼ながらほんの僅か、ほんのちょっとだけ「営業」にその名残をイメージしていました。
インソースに入社して少しずつ勉強し、また黒田氏のような「営業のプロ」のお話を聞いて、次第に「営業」に対するイメージが変わってきました。売る場面だけをイメージしていましたが、周到な準備、臨機応変な対応、満足を得られるケアなど多くの時間と労力をかけている仕事であることがわかりました。しかし、少しわかったからこその疑問もあるのです。
自分を壊さず他人を傷つけない最善策
赤の他人に一方的に何かを売るなんて、私には想像がつかない世界です。でも買う側に立てば、なるべく質の良い・メリットが多い・リーズナブルなものを望みます。後悔しない買い物をするためには、やはり営業担当者の話を聞かなくてはなりません。
話を聞くうちに「そうかも知れない」と納得することもあるでしょうが、「こいつからは何も買わない!」と反感をもつこともあるでしょう。
赤の他人に好悪を決められ、それによって仕事が左右されるなんて、営業職とは苛酷な仕事ですね。
商店でも大企業でも人間対人間になれば、価値観や感覚、相性の違いから行き違いが生じるのは当たり前のことです。顧客の限度を超えた要望にどう対応するのか、期待に沿えない営業担当者はどうするのか。顧客との人間関係の悪化は、転職・転向どころか生涯消えない嫌な記憶になるかも知れません。
多分、永遠の課題なのでしょうが、ごくシンプルな問題でもあるような気がします。
YESはYES、NOはNO、来る者は拒まず去る者は追わないことでしょうか。
様々な営業スキルがあり、営業職としては身につければより効果的に成果に結び付く武器になります。
しかしそれより有効なのは「良いときも悪いときも、笑顔を絶やさず道理に従って穏やかに話すこと」かも知れません。
インソースに入って、そうした人に何人も会いました。複雑化する人間社会では営業職に関わらずどんな世界でも、自分を壊さず他人を傷つけない最善の策なのかも知れません。身につけるのは、難しいことですが。
悪い時だってチャンスかも知れない
営業職は企業に利益を運ぶのが役割で、営業能力の高低は直接企業の経営に影響します。好況時であれば営業活動も活性化して、日本経済の一翼を担っている実感が湧くでしょう。一方、社会全体が不況にある時、閉塞感と危機感の中で営業はどうあるべきなのでしょう。
どんな小さな仕事でもいいからと、焦って売り込みに走る営業担当者も多いようです。しかしこれを一つのチャンスと捕えて、組織づくりの見直し、自分の力の再点検、傾聴力の強化、後進の人材育成など内部強化のための機会にすることも不況の乗り切り方の1つなのだと今回のインタビューで学びました。
また、この機会に顧客を選別して残った顧客に誠意を尽くすことも、営業活動の効率化を図ることになります。利益を落とさずに時間を得れば、企業として人間としての充電期間になり、次に来る好況のための体力温存になります。
来るべきオリンピック大不況には、焦って動き回るより「無理はしないが、手は抜かない」腹を据えたしたたかな戦略を有効と考える企業があるかも知れません。
好不況に関わらず、物に動じず感情に流されない黒田氏のやり方です。
今まで、営業の才能をもつ人が営業職に就くのだろうと思っていましたが、努力によって才能を開花させ営業パーソンに成るのだと分かりました。
後進にはもちろん、顧客にとっても刺激や影響を受け得る営業担当者との取り引きは、実際の商額よりも価値のある経験になるのかも知れません。