ビジネス格言「"健全な危機感"が優れた創意を生む」
健全な危機感が優れた創意を生む――
ビジネスの現場では良く耳にする言葉です。実際のやり取りでは、
「今回の異動辞令にあたって、君から『不安があります』と聞いて実は安心したよ。覚えた不安は必ずや職務を全うさせてくれるからね」
「危機感を抱けない人には組織の改善は任せられない。危機感こそ改善に向けたエネルギーであり、アイデアの源泉なんだ」
などと表現されることもあります。状況を正しく把握したうえで覚える健全な不安感・危機感は、確かに変革・改善のための重要な第一歩となります。
いくつかの書物では不安感と危機感をさらに区別して、
「不安感を抱くだけではダメだ。漠然と心配しているだけでは前に進めない」「危機 "感" や "勘" ではダメで、危機 "観" が必要だ。危機を認識するにあたっては、物事をしっかりと観察し、道理を悟ることが重要だからだ」
とも言っています。
書物の指摘にも頷けますが、より重要なことは、「如何にして健全な不安感や危機感を覚えるか」。そして「これを出発点にして如何にして優れた創意を生み出し、真の改善に結びつけるか」です。
ここから先は、用語を "危機" と "危機感" に統一して説明していきます。
- 目次
健全な不安感・危機感を抱く2つのポイント
辞書を引くと、"危機" とは「悪い結果が予測される危険な時・状況、あやうい状態」と説明されています。つまり、危機感を抱くためには、「悪い結果が起きる」と合理的に予測できることが重要です。
この点を可能とする "危機予測システム" とはどのようなものでしょうか。ポイントは2つあります。
第1に、達成すべき目標を具体的かつ明確に認識すること。第2に、施策展開の進捗状況をしっかりと管理掌握し、期末実績を正確に予測できるようにすることです。
上記2つが揃えば、「ギャップ分析」、つまり悪い結果(危機)をその大きさ(ギャップ)とともに予測することができます。
例えば、売上高目標30億円に対して、現状を踏まえた期末実績の予測が25億円であれば、期末時に5億円の未達成が発生します。つまり、現時点で期末に対して認識すべき危機の大きさは「5億円」です。
実はこのギャップ分析ができず、危機感を抱けない人が大勢います。原因はまず、目標認識が曖昧だからです。「あ~......本社からまた凄い目標が降りてきた。この高い目標を達成できる人なんていないよ......」このような認識では端から目標達成プロセスが挫折していますね。
次に、実績や成約見込みについての案件管理が疎かだからです。管理すべき情報が整理・掌握されていない以上、精度ある期末実績予測を実施することはできません。
危機感を抱けない人は、要は上記に掲げた2つのポイントを満たしていないのです。
危機を予測後、真の改善行動に結びつけるポイント
"危機" の大きさを合理的に予測できたら、危機解消策の検討と選択に移ります。 "危機解消検討・選択システム" の活用です。このシステムのポイントは「改善すべき課題は現状の中にあること」です。つまり、現状分析が決め手となります。
そして、現状分析のキーワードは "要素分解" 。例えばある会社の売上高が次のように要素分解できるとします。この要素分解によって、課題が具体的に見えてきて、併せて改善策も見えてくるのです。
「 売上高 = 訪問(アクセス)件数×成約率×単価 」
売上高が不足するのは「訪問(アクセス)件数が足りないからだ」、更に言えば、「成約に結びつく有効訪問(アクセス)件数が足りないからだ」と確認できたとしましょう。
これを受けて、「お客さまを地域エリア別に再編し、営業担当者がもっと効率的にお客さまを訪問できるようにしよう」「電話アポを入れる際、更新ニーズを伺い、何を提案するかを事前に決めてから訪問しよう」「一度の訪問で必ずクロスセルをしよう」「アフターフォローを徹底し、お客さまの信頼を高め、当社商品の更新(リピート)率を50%から80%に引き上げよう」などと危機解消策につながっていきます。
危機解消策を検討し、絞り込んだ後は、実行あるのみです。
実行においても重要なことがあります。それは「目標を必ずやり切る。諦めない、逃げない」という意志と執念です。この意志と執念が目標達成の最後の決め手になることは言うまでもありません。
ビジネスパーソンの皆さん! ご健闘・ご発展をお祈りいたします。