管理職の"自信喪失"を克服する方法
これまでプレーヤーとして活躍されていた方が管理職になると、プレーヤーとしての力に加え「リーダーとしての力」を発揮することが求められます。つまり、個人としてだけではなく、チームとしての成果が問われるようになります。180度違う力が求められる中で、管理職としての職務に馴染めず、戸惑い、自信喪失に陥ってしまう人が、どの組織にも一定数存在します。
「リーダーとして部下に何を伝え、どう振る舞えばよいのかわからない」
「自分は部下から本当に信頼されているのか」
「このままではリーダー失格の烙印を近々押されるのではないか」......
このような不安に駆られ、自信喪失してしまった管理職の方のために、本コラムではメガバンクの人事部長や経営企画部長を歴任、現在は管理職や経営幹部養成のための講座を担当している弊社のエグゼクティブ・アドバイザーによる「管理職の"自信喪失"を克服する方法」をご紹介します。メンタルヘルス不調をきたす前に、自らを立て直すための処方箋として、ぜひ参考になさってください。
- 目次
自信喪失を克服し、"輝く"ための3つのステップ
巷の新任管理職向け研修には、「管理職の心得(精神論が多い)」「労基法のポイント」「部下評価のポイント」などを学ぶものが多いです。こうした各論を学んでも、残念ながら自信喪失の克服にはつながりません。管理職としての自信喪失を克服し、適切にリーダーシップを発揮できるようになるには、管理職としての"真の力"を身につけるしかないのです。 以下の3ステップにのっとり、真摯に自分磨きに励んでいただきたいと思います。
- ①"管理職に求められる姿"をしっかりと定義・確認する
- ②この姿を身につけるための自己育成計画を策定する
- ③この計画に基づいて自らを磨く
上記のステップは"自信喪失を克服する方法"であると同時に、"管理職として活躍するための方法"でもあります。つまり、管理職として活躍するための方法を身につければ、"自信喪失"に陥ることなく、さらに"輝く"ことができます。
"管理職に求められる姿"をしっかりと定義・確認する
上記の3ステップのうち、肝となるのは①の実践です。定義した"管理職に求められる姿"に具体性や妥当性がなければ、適切に成長することはできません。まずは組織における管理職への"期待役割"を確認し、それを"要素分解"することによって、"管理職に求められる姿"を定義します。
例えば、管理職の期待役割が「PDCAをしっかり回して、毎期必ず目標達成する常勝軍団を構築・維持すること」であるとします。この期待役割を"要素分解"すると、以下の"管理職に求められる姿"が得られます。
- ア)達成すべき目標をしっかり認識できている
- イ)この目標を達成するための実効性の高い計画を策定できる
- ウ)上記の計画を、メンバー全員が活躍する最強チームを構築して展開できる
- エ)毎期必ず目標を達成する
この後、上記の姿を満たすために何が重要課題になるのかを特定します。それが②の自己育成計画の柱になります。"管理職に求められる姿"に近づくための重要課題と自らの現状対応力の間にあるギャップを測り、このギャップを埋めるための取組みを自己育成計画に具体化します。
なお、内容的に高度な自己育成計画を立てる必要はありません。活躍している先輩方のノウハウを教えていただく、重要課題に関するビジネス書や雑誌にあたる、外部研修や勉強会に参加する、などで結構です。これらを参考にして自らを磨いていけばよいのです。
ビジネスの基本手法"要素分解"を身につけて"輝く"
先に示した"管理職に求められる姿"に近づくための課題として、多くの方が直面するのが、イ)を満たすための「実効性の高い計画づくり」ではないでしょうか。何から手を付けたらいいか迷いますが、そんな時こそ、ビジネスの基本手法でもある"要素分解"が役立ちます。何かを決める際に混乱して分らなくなったらまず全体を分解し、得られた各要素を分析すると、物事がはっきりと見えてきて、正しい判断ができるようになります。
例えば法人営業の場合、毎月の売上高という数値目標があります。この目標を達成するために、まずは売上高を構成する要素を『チームの顧客訪問件数の合計×成約率×単価』の3つに分解してみましょう。こうして要素分解すると、売上高を伸ばすための施策を簡単にあぶり出すことができます。
まず、第1要素の"チームの顧客訪問件数の合計"に着目します。訪問件数を上げるためには、
- ・個々の担当先を見直し、顧客の地理的分布を踏まえた効率的な訪問体制を確保する
- ・訪問管理システムを導入し、日々の効率的な訪問を提案面、動線面から支援する
- ・訪問営業に加え、Web営業を展開し、訪問営業を補完する
第2要素である"成約率"を上げるためには、
- ・重点セグメントに優秀な人材を重点配置する
- ・顧客ニーズの内容と発生時期を管理するソフトを導入し、タイムリーな提案を確保する
- ・プレゼンテーション研修を実施し、各人の営業力を抜本的に強化する
最後に
今、自信喪失の自覚症状がある方、これでもう心配はありません。今回お伝えした「"自信喪失"を克服し"輝く"ための3つのステップ」にのっとり、"管理職に求められる姿"を目指して真摯に自分を磨いていけば大丈夫です。抱える課題が一個人のものからチーム単位になると、より複合的になり難しく感じるかもしれません。しかし、要素分解してみると、チーム運営や部下育成などの課題において、これまでプレーヤーとして様々なプロジェクトに携わってきた経験が活かせることもたくさんあるはずです。ぜひ自信を持ってください!
心配なのはむしろ自覚症状の無い方です。"管理職に求められる姿"を確認しないまま、自己流で成長を目指してしまっていると、どこかで深みに嵌って、脱出できなくなります。"自信喪失"に不安のない方も、"管理職に求められる姿"をぜひ一度確認されることをおすすめします。
管理職としての自信は、管理職としての真の力を磨くことで自ら作り込むことができます。リーダーシップを適切に発揮し、輝くリーダーとして活躍されることを心よりお祈り申し上げます!