ビジネス格言「会社経営に最適解なし」
会社では、「これで最適解が得られた」「これで効果は最大だ」「これでリスクは最小だ」という言葉がよく交わされます。
しかし実際には、会社経営において "最適化" "最大化" "最小化" を実現することはできません。誰もがベストだと信じて選択した案であっても、実施してみると途中で数々の修正を迫られるものです。これが論より証拠です。
人は、全知全能の存在とは違い、情報収集力や情報処理力に限界があります。計算外の事象や計算不可能な事象も日常的に起きます。会社経営には人知が及ばない "不確実性" が存在していて、これが "最適化" "最大化" "最小化" の実現を阻んでいるのです。
ですから、いくら "最適化" "最大化" "最小化" と唱えてみても、コストと時間を無駄に掛けることにもなりかねません。そのため実際の会社では、 "最適化" "最大化" "最小化" を念頭に置きつつも、これに代わる合理的(=「最適」に対して用いられる言葉)な手法が活用されているわけです。
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合理的な手法 5つの例
この手法をいくつか見てみましょう。
代表格は「PDCA」です。選択した施策の展開状況を時折チェックして、必要な場合には軌道修正する。この「C(チェック)」「A(アクション)」部分で、不確実性に対処しています。
IT業界などでは「アジャイル(素早い)組織」が採用されています。現場に開発権限を付与し、お客さまと一体となって商品を開発していく。これによって、お客さまのニーズの見える化を図り、商品開発のスピードと成功率を高めています。
また、戦略案件を進めるうえでは「リスク・アピタイト・フレームワーク」という手法があります。リスクに対する食欲(アピタイト)を経営トップが具体的に示す(例:欧米地域での買収予算は500億円を上限とする)ことによって、買収案件の選択肢を絞り込み、身の丈に合った意思決定を促進するのです。
会社経営においては「両利きの経営」が提唱されています。会社は、1つのビジネスモデルに専念して、これを深化させるだけではなく、シナジーのある新分野を同時に開発することが不可欠である。この深化と開発の「両利き経営」によって、不確実性の影響を排除し、持続的成長を確保するというものです。
リスク管理の分野では「リスクベースアプローチ」という手法が採用されています。会社経営を取り巻くリスクを特定・評価し、影響度の高いリスクから順に低減策を講じる。このように優先順位をつけることによって、リスクがもたらす悪影響を効率的に小さくするというものです。
会社経営では "不確実性" を前提にしながら、いかに合理性を確保するかが問われています。今回挙げた手法について、上記のような視点で再確認することをお薦めします。
合理的な意思決定のために覚えておきたい、2つの基準
さて、この記事を読んでくださった皆さんに、"不確実性" に対処するためのとっておきの思考法をプレゼントいたします。
「最適解」に対する言葉として「満足解」という言葉があります。人は最適解を追求できない以上、一定の基準を満たす解を選択せざるを得ません。つまり、満足解の選択です。問題は、どのような基準を満たす満足解を選択すれば合理的な意思決定と言えるかです。
その答えは、「必ずお客さまのためになる」と同時に「必ず会社のためになる(必ず会社の利益に貢献する)」という2つの基準を満たすことです。この基準を満たすことが、会社の最終目的に合致するからです。
多くの経営者の皆さんが、この基準に助けられてきました。悩んだ時、先人の経営者達はこの基準で相談し、意思決定をしてきました。この基準が経営者を支えてきたのです。
本日を機に、皆さんも思考軸の中心に「必ずお客さまのためになる」「必ず会社のためになる(必ず会社の利益に貢献する)」という2つの基準を据えてみてはどうでしょう。
きっと皆さんに、意思決定への自信と楽しさを与えてくれるはずです。