管理職

女性管理職を増やすファーストステップは?

職場の直面する「女性管理職」の課題をみると、「日本的経営」の抱える意外な歴史的問題点が見えてきます。それはいわゆる男性優位のチーム形態が常態化しているという事実です。女性管理職を増やすファーストステップは、女性社員の数を増やしてチームを組織し、自然に「女性管理職」が待望されてくるような職場の土壌作りにあります。組織には、女性社員が目指すべきロールモデルやキャリアプランを示し、「働きやすい環境・制度の整備」と「人材の育成・教育」を進める努力が求められています。

目次

変化する「日本的経営」と従業員の多様化

かつての「人事労務管理中心の日本的経営」のもとでは、「長期間、同一企業で働き続け、組織忠誠心の高い男性正社員」というモデルが暗黙のうちに了解されていました。かつては「男性のブルーカラー社員」に焦点があたっていたのです。

今日では、一口に日本企業といっても、業種や組織規模、企業文化によってかなり違いが見られます。たとえば伝統的な製造業の場合とベンチャー企業や外資系企業の場合では、かなり様相が違います。「日本的経営」というひとくくりにできた時代とは違い、多種多様な日本型モデルが現れています。

技術革新やグローバリゼーション、金融化(financialization)が進展する中、従来の日本的経営のモデルにそぐわない従業員が多数出現しています。変化した職場形態に応じて、女性社員やホワイトカラーはもちろんのこと、パートタイマー、派遣・契約社員、短時間労働者、組織忠誠心が高くない若年勤労者など、多種多様な層に分かれてきています。

スポットライトが当たる「女性管理職」

経済社会の変動状況に適合させて、いかにうまく個別にマネジメントし、組織全体として整合性をとっていくかという点で、「日本版ダイバーシティ・マネジメント」が今後の「日本的経営」の喫緊の課題となっています。中でも特にスポットライトが当たってきた存在が、「女性管理職」です。これまで「日本的経営」の中心にはいなかった女性が、男性中心組織の一角を崩すように現れつつあります。しかし、女性管理職はそれほど増えていません。なぜ女性管理職は、男性管理職と組織を二分する割合にまで、社会の男女構成比に比例して伸びていないのでしょうか?

「女性がチーム作業に向かない」という、男性社員や男性管理職の間違った認識

日本では一般的に、現場で実務に携わっている男性社員や男性管理職の間に、「女性はチーム作業に向かない」という意見がかなりあるようです。
チーム作業は日本企業の最たる特徴の1つですが、もしこの認識が正しいとすれば、海外の先進国に比べて女性管理職がなかなか育たないのもうなずけます。
しかし、女性はチームワークが苦手であるというのは、あきらかな「誤解」です。なぜなら、女性が一緒に居る周りの人と社交的に会話をし、うまくなじんでいく能力に長けていることはよく知られています。女性管理職がなかなか育たない理由は、女性とチーム作業の関係ではなくて、何か別の理由が存在しているのではないでしょうか。

女性管理職が増えていない理由は、女性社員の数が少ないのが理由では!?

「女性はチーム作業に向かない」という「誤解」が流布しているのはなぜでしょうか。
それはずばり「一緒に仕事をする女性の数が、男性に比べて圧倒的に少ない」という職場環境に原因があるのです。働く現場で、女性が男性よりも極端に少ない場合には、女性は自分が(男性ではなく)女性である、ということを意識した行動をとらざるを得ないのです。それを簡単な例で説明しましょう。深く考えることなく、次の文字列を見てみて下さい。どういったことに気づかれるでしょうか。

X x X X O X x X X X

多くの人が、この図をぱっと見て、「Oが目立っている」とか「Xの方が多い」と感じるでしょう。その通りです。ただ、よくよく見れば、Xにも大きなXと小さなxが混ざっているということに気づくはずです。この文字列で「O」を女性、「X」を男性というように考えてみて下さい。女性は職場に1人しか居ないと、この例のように、とても目立ってしまっているのです。

実際には、男性にも大きい人や小さい人がいますし、声のよく通る人やそうでない人がいます。男性という違い以外にも「Xとx」のようないろいろ違いがあるはずです。にも関わらず、女性が少数だと、「性」の相違のみがやたらと強調されてしまい、女性が少数派で目立つ存在になっているのです。こんな状況下では、彼女たちは「女性という性」を意識した自然とは言えない行動をとってしまわざるを得なくなっています。職場では女性たちは「性の呪縛」の中に置かれているのです。

ファーストステップは、職場の中の女性に対する「性の呪縛」からの解放を

あるチーム内に女性が1人しか居ないとしましょう。するとその一人ぼっちの彼女は、チーム内では他のメンバーには相談しづらくなって、いきおいひとりで仕事をしてしまうような傾向が高くなってしまいます。それを見ている男のメンバーの中から、「女性はチーム作業が苦手」という認識が出てきてしまうのは当然です。
もし、逆に女性が多い職場で男性が少数派なら、「男性はチーム作業が苦手」という周囲の認識になっていたかもしれません。つまり、女性管理職を増やすファーストステップは、女性の数を増やしてチームを組織し、女性が特に性を意識しなくてすむような状態にすることです。「一緒に仕事をする女性の数が、男性に比べて圧倒的に少ない」という職場環境こそが、「女性はチーム作業に向かない」という「誤解」を生んでいる根本原因なのです。

女性社員が増えない職場の問題点とは何か

日本では、子どもが生まれたら「育児」を理由に約6割の女性が仕事を辞めてしまうといいます。(平成28年度版 男女共同参画白書より)しかし欧米ではその半分以下とされます。
一方、日本の女性で「仕事への不満」「キャリアの見通しが立たない」ことで辞める女性は、年々増えています。女性が「出世したくない」と答え、「いまの組織」で「いまの上司」のようになりたくないと言っていることのあらわれです。

女性社員には管理職志向がないというのではなく、彼女たちが目指すべきロールモデルやキャリアプランを、組織が用意していないことに原因があります。こういった現状を踏まえれば、女性社員という働き手の受け皿となる組織のマネジメント改革は組織の急務です。

女性社員の割合が多くなれば女性管理職も増加する!

女性社員が生産性を上げて、成果を出す働き方を学ぶ教育研修や、管理職になるためのマインドセットは当然必要です。女性自身がキャリアを主体的に考えることによって、今後のキャリアアップを具体的にイメージすることができるようになることが必須条件だと言えます。「自分のキャリアは自分でデザインする」という女性社員を増やし、女性社員の組織に対する定着率を上げ、女性社員の割合を増えることに繋がります。

女性社員の割合が多いチームが増えれば、そこから「女性管理職」を待望する声は必ず上がってくると期待されます。男性社員に対する女性社員の数の割合が増えれば、「女性管理職」の数も比例して増加するはずです。日本的経営の新しい形、「日本版ダイバーシティ・マネジメント」は、女性社員の割合が多い「チーム作り」にポイントがあります。従って、現代の組織には、女性社員が活躍できるように「働きやすい環境・制度の整備」と「人材の育成・教育」を進める努力が求められています。

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