経営

経営サイクルとは~企業経営の基本ステップ

マネージャ―の仕事(後編)
目次

企業経営や営業に特別な才能は必要ない~20年の経験から

大学卒業後、バブル絶頂の1988年に都市銀行に入りました。都市銀行を舞台にしたドラマの主人公半沢直樹とほぼ同世代です。入行一年目の秋から6年ほどシステムエンジニアをやりました。当時、はっきり覚えているのは、君は営業に向いてないからSEになれと言われたことです。その後7年間金融商品の開発をやりました。その後、ジャスダック上場の流通業に転職し、新規事業を担当し、2002年に社会人教育企業としてインソースを創業しました。その後16年マザーズ、17年東証一部、22年プライム上場、23年には売上が100億を越え、現在に至っています。

企業経営や営業に特別な才能が必要であるとは思いません。努力や熱意次第でだれでも一定レベルに到達可能だと考えます。銀行員時代、「君に営業はできない、それからマネージメントもたぶん君には無理だ」と言われた私でも20年以上経営者をなんとかやれているのですから。

今後、経営者を目指すみなさんへ知っておいた方が良いことをお伝えしていきたいと思います。

経営サイクルを知る~企業経営には重視する順番がある

まず知って欲しいのは、企業経営の基本原則というものがあるということです。私は「経営サイクル」と呼んでいます。企業経営において、業務には重視すべき順番があるということです。
企業経営の原理原則で一番大事なのは売り上げを上げること、二番目は利益を確保することです。利益が確保できれば、三番目は投資です。社員の増加や設備投資、本業における新商品開発や研究開発などを優先すべきです。最後は人事、経営管理や新分野進出など様々な活動が四番目です。

経営者や役員ではなく一般社員として働いていると、儲かった分をすぐ賃上げして欲しいなと思うものですが、過度にバラマキを行うより、継続的に売上や利益成長をするサイクルを確立し、継続的な処遇改善のしくみを構築した方が長期的な所得向上が可能です。

経営サイクル

図:経営サイクル~企業経営の基本ステップ

売上確保~営業は経営者の本業(経営サイクル1)

まず売り上げ確保ですが、営業というのは経営者の本業だと考えていただきたい。売上確保において、今ある商品やサービスを徹底的に売るのが先決です。

最近、中古品の売買が盛んですが、50年前の壊れたステレオでもちょっと驚く価格で販売されていたりします。他の人には粗大ごみにしか見えないものでも、買ってくださる方はいる、買ってくださる価格はあるんです。営業活動は、今ある商品を買ってくださる方をなんとか見つけるのが大事なのです。

また、営業活動を通じて、新しい顧客ニーズを発見し、将来の売上確保も経営者の仕事です。そういった意味では、依頼された仕事はできるだけ断らない方がいいと考えます。当然ながら今も将来も利益がまず出ない様な仕事は断ってもいいのですが、将来、利益が出そうであれば難しくてもできるだけやる。とにかく継続的に売上があれば、会社は持つのです。

よく『わが社の商品やサービスが充分でないから売れない』という方がいますが、売上、利益が確実でない段階で投資を先行すれば、早晩、資金不足に陥ってしまい、最悪倒産する事になります。少額の投資で現在の商品やサービスを磨きあげる様な先行投資ならむしろやるべきですが、今ここにあるものを徹底的に売る方法を考え、行動するのが最優先です。ベンチャー企業の中には、往々にして広告宣伝費をかけすぎたり、社員数を先に増やしたり、次々と新分野に進出したりして、売上を得る前に資金を使い果たしてしまう会社が多いのが現実です。

次に利益確保(経営サイクル2)

次に利益確保ですが、経営者は、売上が同じでも昨年より利益を出せるように常に努力することです。経営を安定させるためには、売れても、売れなくてもコストダウンを常に考えることです。
以前、ある講演会でアイリスオーヤマの大山会長が当社ではネジ一本でも内製化しているとおっしゃっていました。昔は外注先の下請け企業の方が従業員の給料が安かったから外注はコストダウンになったが今は下請け先も給料が変わらない。だから、外注を2回入れると利益は半分になってしまう。だから内製化しているとおっしゃっていました。継続的に利益改善を考えるのがポイントです。

10%のコスト減を10年やれば9割のコスト減になります。これはまさにイノベーションです。原価低減、販管費削減を日常業務にする、上手くいっていても変えることが経営者には求められます。これほどではないですが、インソースも継続的な業務のDX化、日常的な販管費削減活動により上場から7年間で21%営業利益利率を上げることができ、現在の営業利益率は36%(23年9月期)となっています。すごくシンプルですが、常にコストを下げる努力を継続することは経営の基本です。この順番はぜひ知ってください。

次に投資をする(経営サイクル3)

投資については、積極的にアクセルを踏むことを考えるべきです。慎重になりすぎて、何もしなければ、リスクはありませんが、結果としては成果を産む事はありません。自社のお財布と相談しながら、販売予測を踏まえて投資額を決めて実施していく必要があります。

次にさまざまな活動~人事、経営管理、新分野進出(経営サイクル4)

人事部門や経営管理部門はこのサイクルの4番目と言われるとちょっと釈然としないと思いますが、労働意欲が高くなる人事施策を実現し、成長を加速させたり、サイクルをストップさせる様な不祥事やコンプライアンス違反など阻害要因を除いたりするためには極めて重要です。現実問題として、業績が悪化しても経営者はすぐクビにはなりませんが、不祥事があればすぐクビになります。経営者にとって経営管理、人事管理を学び実践する事が求められます。

また、企業の寿命は30年と言われています。内外の環境変化の中で企業が同じことを同じようにやっていても継続できない可能性があります。新分野に進出する事も重要です。無理ない範囲で新しい事をスタートすることが求められます。

経営者の仕事は、株主の期待に応えサイクルを早く回しどんどん大きくしていくこと

振り返って考えてみると、企業経営はこの日々サイクルを回し続ける事です。経営者の仕事はこのサイクルをどんどん早く、大きく回し、大きく成長することです。どのステップに課題があるかを発見し、その程度資源や資金を投入し、強化するかを判断し、着実に実行することが株主から求められています。

株主の要求は終わりがありません。どんどん売上と利益成長を実現し、どんどん配当せよというのが基本スタンスです。それに応え続けることが現代の経営者の仕事です。

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