若手からベテランまで、様々な世代がひとつのチームで働くダイバーシティ時代の現代。その真ん中世代にあたる管理職は、イマドキの若手だけでなく、「年上の部下」とも協働する難しさを日々感じていらっしゃいます。そこで、管理職が異なる世代の部下と上手く付き合っていくための方策を、お伝えいたします。
ベテラン世代の「複雑な感情」を理解したうえで、さらなる活躍を促す仕事の任せ方をお伝えします。参考にしていただければ幸いです。
「ベテラン世代」と一言で言っても、その捉え方は人によって様々です。今回は、以下の 3パターンを「組織の中で接し方が難しいベテラン世代」として取り上げます。
A.元管理職パターン
かつては管理職だったが、役職定年や雇用延長を経て、現在は一般職に。上席者としての意識が抜けきれず、求められる役割や、扱われ方の変化に戸惑いがち。そのため、時に波紋を起こすような発言や態度を取ってしまうことも。
B.この道一筋パターン
キャリアの大半を特定分野における専門職として過ごす。徒弟関係の中で上位に立つことはあるが、マネジメント経験はナシ。高い専門性こそが自身の存在価値であり、それを死守しようと、時に仕事が属人化してしまうことも。
C.割り切りキャリアパターン
特定分野の専門性が高いというわけではなく、マネジメント業務にも携わることのないまま、一般職(もしくは部下なしの管理職待遇)として今日に至る。年下の上司からの指示も割り切って従っているが、モチベーションは高くない。
(1)下の世代に対する焦りと負い目の感情
非管理職のベテランが行う業務内容は、基本的には下の世代と同じです。
業務によっては新しい知識や技術の習得が必要ですが、若い人と同じようにはキャッチアップできません。教えを請うことになったり、時には迷惑をかけたりしてしまうことで、彼らに対する負い目や焦りを感じてしまう人も多くなっています。
(2)同世代のキャリア組に対するアンビバレントな感情
30代くらいまではほぼ横並びだったのが、40代を過ぎると管理職になる人が現れ、仕事の内容にも違いが出てきます。
「コースを外れた」自分は、重い責任を背負わずに済んで気楽だと思う反面、キャリア組に対する"負の感情"も抱きがちです。これ以上のキャリアアップは望めず、何をモチベーションに仕事をすればよいのかと悩む人も少なくありません。
ベテラン世代と接するにおいては、こうした複雑な感情に対する洞察力をもち、一定の配慮を示すことが必要です。とはいえ、上司が遠慮して言うべきことを言えないでいると、ベテランはどんどん自分に甘くなり、楽をしようとする意識につながってしまいます。
監督者としてベテランに苦言を呈さなければならない場面は、年上に対する敬意を忘れず、それを言葉遣いや態度を通して示すことが大事です。ベテランの部下側も、そこが分かっている上司ならば、気持ちよく協力してくれるでしょう。
(1)技術・ノウハウの継承
経験を通じて身につけてきた高度な技術やノウハウは、単純な知識や手順と違って、機械やシステムによる代用が難しいものも少なくありません。
こうした技術やノウハウは、引き続き「人から人へ」と継承させたいものです。ただし、最近の若手社員に対して「背中を見て覚えろ」という教え方は、もはや通用しません。
彼らは、教える側がその内容をもっと明確に、わかりやすく短時間で理解できるよう工夫して教えてくれることを期待しています。ベテラン側に、マニュアルや業務フローなど、標準化した資料を準備するよう依頼しておきましょう。
■技術・ノウハウの継承プロジェクトの進め方
1.継承すべき技術・ノウハウの対象と範囲を明確にする
2.技術・ノウハウを構成する要素を洗い出す
3.効率よく技術・ノウハウを身につけるためのプログラムを編成する
4.技術・ノウハウの継承者を選定し、プログラムに従って教育する
5.一連のプロジェクトを通じた技術・ノウハウの継承の成果を検証する
できればベテラン主導で、上記5ステップに則った継承プロジェクトが推進されるのが理想的です。しかし、ベテランの方はそう簡単には動いてくれません。中には、技術を自分の手の内にしまっておきたいと考えるベテランもいます。
ベテラン世代には、これまでの功に対する感謝はもちろん、これからの期待を伝えることが非常に大切です。そのうえで、自分の持つノウハウを出し惜しみせず、仕事の勘所を若手に伝える、属人化している業務フローをなるべく文書化(見える化)するなど、ナレッジ継承への協力を依頼していきましょう。
(2)上司とは違う立ち位置での若手指導
部下は、人事評価権を持つ管理職のことを、どうしても「権力者」という目で見がちです。
一方、組織上では同じ階層のベテラン世代のことは、本音で付き合いやすい「人生の先輩」として見ています。こうした立ち位置をアドバンテージとして捉え、直属の上司とは異なる立場から若手の指導や支援を行うことが期待されます。
■ベテラン世代の若手指導における具体的な役割
1.上司の指示を分かりやすく解釈して伝える
2.メンターとして、仕事に関する悩みを聞く
3.人生の先輩として、キャリア面や生活面での相談にのる
(3)組織横断的なプロジェクトでのリーダー
ベテラン世代は、長いキャリアを通じて多方面に顔が知られており、社内外に幅広い人脈を形成している人も少なくありません。 こうした強みを活かし、組織横断的なプロジェクトのリーダー役を担ってもらうと、これまで進まなかった改革が一気に実現に向かうことも期待できます。
■ベテラン世代にリーダーを任せたい組織横断プロジェクトの例
1.全部署共通テーマでの効率化・業務改善プロジェクト
2.各部署の専門性を寄せ集めて進める新規プロジェクト
ベテラン世代は、厳しい競争に勝ち抜いてきた優秀な人材も多く、新たな役割に納得し、前向きに取り組ませることが出来れば、高いパフォーマンスが期待できます。 また、プライドは高いものの、そこに敬意が払われつつお願いされる無理難題については、心意気でもって引き受けようとしてくれます。そんな彼らの力を活かして、チームの活性化や生産性向上につなげることが、管理職に求められる役割です。
世代によって考え方が違うのは当然です。しかし、自分にとって当たり前のことができない相手を、「常識に欠ける」「理解できない」と批判するだけでは、前に進めません。理解を超えた部下に対しても、仕事に関することは、チームの目的を共有したうえで、上司として冷静かつ建設的に話しかける姿勢が必要です。同じ目的に向かって、価値観の違う相手を徐々に理解しながら、焦らず「仲間」になっていこう、というぐらいのスタンスで臨むと上手くいくのではないでしょうか。
また、ベテランとの関係性をさらに深めていくためには、下記のようなコミュニケーションも有効です。
▼ベテランに「仕事の深い部分を聞いてみる」
「〇〇さんは新規開拓の仕事をされていたんですよね、何が大変でしたか?」
「会社も苦しい時がありましたが、その時○○さんはどんな手を打ったんですか?」
管理職、ベテラン、若手がそれぞれお互いを尊重して、相手に少し歩み寄りながらコミュニケーションを取ることが、気軽に話せる心理的安全性の高い職場づくりへの第一歩です。 また、異なる世代の考え方に触れることで、多様な視点で物事を考えられるようになります。
ダイバーシティ時代の管理職として、あらゆる世代の力を取り込み、チームの活力に変えていくためのマネジメントが求められています。
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~若手世代の「常識」と、力を引き出す接し方 とは?
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