マネージャーの仕事(後編)
株式会社インソースの代表を現在まで21年間務める舟橋孝之が考えるマネジメントについてのコラムです。
前編ではマネージャーの役割について説明しています。後半では具体的なマネージャーの行動についてお話します。
≫前編はこちらから
- 目次
組織が儲かる様、損しない様に考え、行動する
マネージャーは仕事のあらゆる瞬間で、自分のマネジメントで生まれる利益の期待値を計算し、最大化する様に行動することが大事です。
- (1)業務改善を常に考える
- マネージャーが自らの経験・学習した知識・データに基づき、伝票処理業務を合理的に分析し、業務改善を実施した結果、事務員1名を減らす事が実現できたとします。その場合、ざっくり人件費として年間500万円程度のコスト減となります。また、これが永続するものであれば、10年間で5千万円のコスト減となります(そのため業務改善の価値は高いのです)。
- (2)部下指導を懸命にやると儲かるし、損をしない
- マネージャーが自らの経験とスキルを活用し、部下を一人前にすることができれば、ざっくり年間1千万円程度の利益アップとなります。親切な指導に部下が感激し部下の退職がなかった場合、最低でも人材採用コストと初期教育費として約500万円の損失を防ぐことができます。
- (3)不正な経費支出が出ないようにする
- マネージャーがチーム全体を鼓舞して、経費などの不正が起きない様に1枚1枚の伝票に目を光らせる事で、経費の削減とコンプライアンス違反の阻止を同時に実現できたとします。そうすると、不正解明のための第三者委員会の経費分として5千万円のコスト発生を防ぐことが可能です。
- (4)新しいサービスができないか考える
- マネージャーが漫然と仕事をこなすだけでなく、伝票処理業務の煩雑さ、特に制度変更時の処理はあらゆる企業の困り事であるということを発見し、シンプルなシステム化アイデアを発想できた場合を考えます。自社のコスト減だけでなく、株式会社ラクスの「楽々精算」のように、年商100億円規模の事業を創業できるかもしれません。ただ、新サービス開発の企画はマネージャーの日常業務を越えているので、常に考える必要はありません(とは言え漫然と仕事をしないことは肝要です)。
※「楽々精算」は株式会社ラクスの登録商標です
小さな事をバカにしない~細部の積み重ねが大きな利益を産む
重要なのは、マネージャーが業務のプロセスとして、利益やコストをいちいち計算しながら仕事をすることです。その際、減らせるコスト・得られる利益がどんな確率で実現するか計算し、実現する期待値が最大になるように行動するのが基本です。特に100%に近い確率で実現できる事、だいたいは小さな事をマネージャーは徹底してチェックし、管理する事が重要です。ホワイトカラーが資料を探す時間は労働時間の2割、年間300時間にもなると言われています。社内LANの共有フォルダーの整理整頓を徹底し、差引一人あたり年間60時間削減できれば、1000名規模の会社で年間6万時間、平均時給3千円として、人件費が180百万円削減できることになります。10年間では18億円にもなります。
何か世知辛い感じがしますが、小さな事でも貨幣価値に換算しながら行動できれば優秀なマネージャーと言えます。
プライスレスな一発アウトは避ける~リスク管理はマネージャーの重大な仕事
ただし、社会を揺るがすような事故・トラブルや、人命にかかわるような人権侵害などは絶対に避けないといけません。これらの損失は想像を絶するほど巨額になります。巨大企業であっても存亡の危機、公的企業でも良くて改組、場合によっては解散といった事態になるかもしれません。リスク管理は損得の適応外です。
細部のチェックやリスク管理は部下に嫌われてもやる
だいたい、細かなチェックやリスク管理を部下は嫌います。自分にとっても面倒です。
ただ、マネジメントの基本は細部の積み重ねにあります。