効果的な「振り返り」とは? 6つのフレームワーク例
「トップレベルのビジネスパーソンであり続けるためには、定期的に自らを振り返り、次に向けた改善点を洗い出すこと」――P・F・ドラッガー の言葉を借りるまでもなく、振り返りの重要性は多くのビジネスパーソンが認識しています。
しかしなかなか身に付かず、多くの場合、報告と反省のみに終わることが多いようです。振り返りとは、その先、今後どのように成長に結びつけて行動するかまでを考え実行することです。しかもそれは繰り返しによってはじめて身に付くといわれます。
振り返りには目的によってさまざまな手法があります。ここでは代表的なフレームワークをご紹介します。
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目的に応じた振り返り手法を選ぶ
個人の整理・成長のための振り返りから、チーム活動の成果、組織の生産性から管理の向上など、目的と必要性に応じた多くの振り返り手法があります。企業の業種・規模、業務などによっても、それぞれに効率の良い進め方、わかりやすいまとめ方、また進行上の課題などがありますが、ここでは大まかな説明をしておきます。
1. KPT
振り返り手法の中でも特に有名。チームで動くプロジェクトなどに有効とされる。
「Keep 継続」「Problem 問題点」「Try 挑戦」3つの視点でメンバーの意見を整理し、改善・解決へ導く。個人の業務にも使える。
2. YWT
「Y やったこと」「W わかったこと」「T 次にやること」の段階的な整理をして改善。最後に「M メリット」を加えることもある。個人にも小規模のチーム活動にも活用される。
3. 4行日記
「事実」「気づき」「教訓」「宣言」の4点を4行に分けて書く。簡潔なので毎日の振り返りに役立ち、続けやすい。チーム活動というより、個人で動く業務のビジネスパーソン向け。日々の仕事記録として有効な記録になる。
4. 経験学習モデル
「学習における経験・実践」と「経験の内省」を重視、「経験→省察→概念化→実践」のサイクルによって問題解決につなげる。4行日記に似ている。個人の業務に役立つが、チームの経験記録としても有効な資料になる。
以上はよく活用されている振り返りのフレームワークですが、ほかに本来は生産管理、品質管理のマネジメントに使われるツールも、ビジネスシーンでの振り返りとして使われます。
5. PDCA
「計画」に重きを置いた理論で、管理業務の円滑化を進める手法の1つ。
「P 計画」「Do 実行」「Check 評価」「Act 改善」を繰り返すことで業務の継続的な改善を目指す。
6. LAMDA
PDCAの発展形で、「現地現物」「双方向コミュニケーション」「プロトタイプ化」「フィードバックの吸収」を行動原則としてPDCAに組合わせた形。PDCAよりさらに現実的な発想といわれる。
振り返りを効果的に行うための注意点
個人の成長のための振り返りは、対象が自分自身ですから矛盾がありません。4行日記やYWTなど、自分に向くと感じた負担にならない方法で始め、続けることが大事です。複数の振り返りを行っても良いでしょう。
チームの場合もまた、振り返りは、繰り返すことで効果が現れますから、手法が決まっていたら改善しつつも継続することが大事です。しかし業務、対象やスタッフの規模などによって選ばれる手法を変えることもあります。
どの場合でも守るべき振り返りの3つの鉄則を確認しましょう。
鉄則1 次にするべき実践をより良くし、活かすことが目的であることを忘れないこと
傷のなめ合い、つるし上げの場ではないこと。チームのことはチーム全体の責任。
個人非難はしない。
鉄則2 お互いに言葉に出して敬意を表し、意見に耳を傾ける
反対意見であっても全体の目的のためにベストだと思うことを穏やかに述べる。
鉄則3 原則、決めた振り返り手法のフレームに当てはめ、型通りにやってみる
どの振り返り手法が最適か、各企業やチームの仕事内容や構成メンバーの職務範囲などによって異なります。企業の業務変更などによって従来の振り返り手法が不適合になる場合もあるでしょう。
研修担当者は、こうした変化に対して現場に不都合がないか、生産性が頭打ちになっていないかなどを確認し、必要があれば現行の振り返り手法を見直し、より良い手法についての研修を行うという形で、現場をサポートしてはいかがでしょう。