新人がぶつかりやすい「4つの壁」~新入社員の6か月間の成長ストーリー

新人がぶつかりやすい「4つの壁」
~新入社員の6か月間の成長ストーリー

新入社員の受け入れにあたっては「新人の気持ちに寄り添いながら指導したい」と思う一方、自身が社会人としての仕事の進め方に慣れていると、「新人たちがなぜ悩んでいるのか、理解できない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

新人たちが学生時代の意識から脱却し、一人前の仕事ができるようになるまでには、様々な「壁」が待ち受けています。見守る立場の上司や先輩方にとって、新人が何に悩んでいるのかを知っておくことは、適切な助言を与えて成長を促すうえで大変重要です。

そこで今回は、「いんそうす商事」(仮)に今年入社した新人、太郎さんと花子さん(どちらも仮名)がぶつかってきた「4つの壁」を、入社から6ヶ月のストーリー形式でお伝えします。

2人がぶつかった4つの壁

●ビジネスマナーの壁

●コミュニケーションの壁

●業務知識・社会常識の壁

●業務管理の壁

二人がぶつかってきた悩みと、その都度、先輩が具体的にどんな言葉をかけたら克服につながったのかを「先輩の言葉」としてご紹介いたします。実際に指導する際の声掛けやアドバイスの参考にしていただければ幸いです。

1. ビジネスマナーの壁~新人研修中

太郎

「社会は多様性を重視しているはずなのに、なぜ画一的なマナーを学ばなきゃいけないんですか?」

花子

「電話応対や名刺交換は何度練習してもあたふたしちゃう。敬語の使い方も難しいし、職場で実践できるか不安......」

◆先輩の言葉◆

ビジネス上の立ち居振る舞いにおける「一般的な型」を身につけた方が、仕事がしやすくなりますよ。なぜマナーがあるのか考え、何度も練習と実践を重ねることが大事です。

学生時代は「個性」や「自分らしさ」を大切に過ごしてきた皆さんにとって、マナーに則った服装などは窮屈に感じるかもしれません。しかし、改めて考えてみるとなぜ多くの社会人がビジネスマナーを身につけ、実践しているのでしょうか。

当たり前のことですが、仕事は一人でするものではありません。組織に属していればなおさらです。一緒に仕事をする相手がどんな人か、気になりますよね?あなたが気になることは、当然相手も気になります。

あいさつ、名刺交換、電話応対などのビジネスの基本ができているかどうかでその人の印象は大きく変わります。初めて会った相手でも、共通の「型」に則った振る舞いができていれば、悪い印象を与えることなく、サッと仕事の話を進められます。

一度「マナーができてないな」と思われれば信頼を取り戻すのは至難の業です。相手を不快にさせず、「一緒に仕事がやりやすい」と信頼を感じてもらえるようになることが、ビジネスパーソンとしての第一歩です。

また、ビジネスマナーは「型」を覚えただけでは、実際にできるかどうか、花子さんのように不安になるのは分かります。マナーがただの形式ではなく、そうすることにより好印象を持たれる、効率的である、全体最適であるといった意義を知り、納得感を持って実践しましょう。

大事なのは、相手のことを考える気持ちと、失敗しても落ち込まず次にどうすればいいかを考え、何度も練習と実践を重ねることです!

もし「これでいいのかな?」と迷ったときは、上司や先輩のビジネスマナーを参考にしましょう。普段近くにいる先輩の振る舞いを真似したり、自分の知らなかった敬語表現をメモして覚えたりすることで、自分のマナーに自信が持てるようになりますよ。

2. コミュニケーションの壁~配属直後

花子

「分からないことがあるので教えてほしいけど、先輩も忙しそうだから、仕事中に声をかけるのは申し訳なくて......」

太郎

「上司に質問したら、"それで君はどうしたいの?"と言われてしまった。気軽に聞いちゃダメですか?」

◆先輩の言葉◆

分からないことは積極的に質問するべきです!大事なのは『タイミング』と『聞き方』です。

仕事を始めたばかりで、分からないことがあるのは仕方がありません。

積極的にホウ・レン・ソウ(報連相)しましょう!「相談したいけど、相手(上司・先輩)は忙しそうだ」「今話しかけるのは申し訳ない」と遠慮して、業務上の不安をそのままにしておいては、いつまでも正解が分からないばかりか、成長にもつながりません。そこで、質問するときには、話しかけるタイミングや聞く内容をよく吟味しましょう。

その際のポイントが3つあります。

[1]何について聞きたいのかを明確にする

上司や先輩に、相談する前にまずは自分なりに考えてみたうえで、何が聞きたいのか端的に伝わるような聞き方を工夫しましょう。「教えてもらうのが当たり前」といった姿勢では、上司や先輩も教える意欲を失ってしまいます。

忙しい上司や先輩が、「それでいいよ」と一言で返せるような相談ができるといいですね!

【例】

×「先日送ったメールに表記の誤りを見つけたのですが、どうすればよいでしょうか」

○「先日送ったメールに表記の誤りがあったので、すぐに訂正して再送したいと思いますが、よろしいでしょうか」

[2]普段から「話しかけてもいいサイン」を見極めておく

まず初めに、重要なトラブルが発生した時は何をおいてもまず相談しましょう。

それ以外の場合は、上司・先輩の日頃の仕草や行動をよく観察して、そこから「話しかけてもいいサイン/話しかけてはいけないサイン」を見つけておくといいですよ。

【例】

上司の習慣は午前9時までにその日のToDoリストを整理することなので、緊急でなければそれ以降に話しかけるのがよい

[3]クッション言葉を使う

クッション言葉はあとに続く言葉や主張の「聞こえ方」がマイルドになったり、いきなり話しかける衝撃を和らげたりする効果があるフレーズです。

相手に迷惑をかける場合、あるいは何かを依頼する場合には、配慮ある伝え方が必要です。

「申し訳ございません」や「恐れ入ります」など、クッション言葉によって相手への配慮を表し、柔らかい印象を与えることで、良好な関係を構築できます。

【例】

「申し訳ございません。以前、教えていただいた件ですが、やり方が分からなくなってしまいました。恐れ入りますが、もう一度教えていただけますでしょうか」

上司に求められなくても自発的にホウ・レン・ソウをするなど、日頃から質問しやすい関係性を築いておくと、なおよいですね。相手の時間をいただいていることを忘れず、ホウ・レン・ソウの後には必ず感謝の意を伝えましょう!

3. 業務知識・社会常識の壁~入社3カ月後

花子

「少しずつ仕事には慣れてきたけど、まだまだ業務知識では先輩達にかなわない。とりあえず言われたことだけやっていればいいのかな?」

◆先輩の言葉◆

今の自分にできることがないか考えてみましょう!指示業務以外にも気づいたことがあったら積極的に動くようにしてみてください。

業務知識がないなりにも「今の自分にできることはないか」を振り返り、実践することが大切です。また、いつもと違うことや改善すべきことに気づいたときは、「もしそのままにしておいたらどんなトラブルが生じるのか」を考え、行動しましょう。

言われたことをやるだけの新人より、「あいつもチームのために頑張ってくれているな」と、先輩たちからも一目置かれる立場となれるはずです。

例えば、電話の取次ぎをする、別の部署に書類を持っていく、などちょっとしたことで、組織の構成や決まりごとが覚えられます。社内に関する知識を増やしておくと、「この件で困った時は○○部の△△さんに相談すればいいんだな」という判断ができるようになります。

また、社内の人に名前や顔を覚えてもらえて、人脈も広がりますよ。

太郎

「上司や先輩と話しているとよく話題に上るのが"景気"の話や"会社の業績"の話。聞かれても曖昧なことしか言えないのがツラいです」

◆先輩の言葉◆

上司が景気や業績のことを気にするのは当然です。経営数字の見方を覚えることはもちろん、経済紙などを読んで社会全体の流れを押さえましょう。

企業活動は、経済情勢・社会情勢・政治情勢など外部環境に大きく左右されます。ビジネスパーソンは常に外部環境の動向を注視していないとなりません。特に景気の良し悪しは、企業業績に大きな影響を及ぼすので、そのような話題が上司たちから多く出るのは当然です。

上司の話が分かるようになるには、まず自分の会社の数字を知ることから始めましょう。業績の良し悪しを理解するためには、利益と費用(コスト)といった経営数字の見方を覚えるのは必須です。

また、外部環境の動向については、ネットニュースなどで一つ一つの話題を追うより、新聞を読んで社会全体の流れを押さえながら理解するとよいでしょう。特に経済新聞は、景気動向・経済情勢・企業動向のことが詳しく掲載されているので、ビジネスパーソンにおすすめです。

自分の会社の数字や社会の動きを知ることで、上司から「今月は調子がいいな」と話を振られても、「そうですね!」と自信を持って答えられるようになりますよ。

4. 業務管理の壁 ~入社6カ月後

花子

「業務を依頼されることが増えてきたけど、何から手をつけたらいいか混乱します。パニックになっちゃうとミスも増えてしまい......」

太郎

「もっと仕事を覚えたいし、勉強もしたい!でも忙しくて時間が取れないのが悩みです」

◆先輩の言葉◆

仕事の全体像を把握し、優先順位づけをして時間をやりくりしましょう!効率よく、かつ質の高い仕事をするためには、自分の仕事の全体像を理解したうえで、何から取り組めばよいか優先順位をつけ、スケジュールを立てることが重要です。

<全体像を理解する4ステップ>

【STEP1】前後のつながりを意識したうえで、仕事の目的を明確にする

すべての仕事には、前工程と後工程があり、その先にはお客さまがいます。

自分の仕事が組織にとって「何のための仕事なのか」、「なぜこの仕事をやらないといけないのか」考えましょう。そこから求められる成果を逆算することで、「何をどれだけやればいいのか」という見通しが立ちます。

【STEP2】成果物・得るべき結果のイメージを具体的に持つ 

仕事を進める前に成果物をイメージしておきます。QCDRSを明確にすると効果的です。

Q(Quality:サービス品質)

C(Cost:コスト)

D(Delivery:納期)

R(Risk:リスク)

S(Service/Sales:サービス/セールス)

【STEP3】仕事を洗い出し、優先順位をつける

ひとつの仕事には、多くの「やるべきこと」があります。必要な「やるべきこと」を洗い出したうえで、どれから着手するか優先順位をつけましょう。

仕事の優先順位を決めるには、自分の仕事の重要度と緊急度を整理することが重要です。

●緊急かつ重要な仕事 (締め切り直前の仕事やクレーム対応 など)

●緊急ではないが重要な仕事(業務改善、人間関係づくり など)

●緊急ではあるが重要ではない仕事(突発的な社内提出資料、突然の来訪 など)

●緊急でも重要でもない仕事(長時間の電話、待ち時間 など)

仕事の優先順位の図

気をつけてほしいのが、「緊急ではないが重要な仕事」に充てるべき時間を「緊急ではあるが重要ではない仕事」に奪われ過ぎないようにすることです。イレギュラー業務に対応するためのバッファを作っておくと安心です。

自分で仕事の重要度と緊急度を意識する癖をつけることが大切ですが、判断できない場合には上司に相談しましょう。

【STEP4】スケジュールを立てる

やるべきことを洗い出したらそれぞれにかかる所要時間を見積もります。

トラブルが起きた際の予備時間も見込み、余裕のあるスケジュールを立てましょう。

スケジュールを立てたら周囲に報告しましょう。自ら退路を断つと同時に、「これ以上新たな業務をお願いしない方がいいかも」と周囲の配慮も得られます。

すでに手一杯であるにも関わらず、上司から別の業務を頼まれたら、依頼された段階で「その仕事は急ぎですか」「今抱えている〇〇があるので、明日でもよろしいでしょうか」などと確認するようにしましょう。

仕事を管理して限られた時間を効率的に使えるようになると、自己研鑽のための時間を捻出できるようにもなります。成長のための頑張りどころですね。

最後に

いかがでしたでしょうか。これで太郎さんと花子さんの6ヶ月の成長ストーリーは終わりです。

新人は、太郎さんと花子さんのように一つずつ悩みや課題を解決し成長していきます。

加えて、さらなる成長を促すためには、「振り返り」が何より重要です。

仕事にも、社会人生活にも慣れてくる6ヶ月後という時期は、改めて自分の仕事を振り返るのに適切です。もし、皆さまの職場の新人が振り返りの仕方に悩んでいたら、PDCAサイクルを一緒に回すなどのサポートが必要になります。

<PDCAの進め方>

1.まずは「目的・目標」を明確に設定する

2.計画(Plan)を立てて進むべき方向を決める

3.計画を実行(Do)しながら、よりよい方向に進んでいるか評価・検証(Check)する

4.問題があればその都度解決して改善行動(Action)に取りくむ

新人には少しハードルが高く感じるかもしれませんが、自分の仕事をしっかりと振り返って、課題を認識したうえで、目的や目標を明確にすることが重要です。PDCAのフレームワークで考え、振り返りや改善をし続けることができるかが、新人の成長の「肝」になります。

ぜひ「貴社の太郎さん花子さん」への指導の際に、今回の「先輩の言葉」をお役立ていただけますと幸いです。

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