今年度は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、 新入社員を集めて研修を行うことがままならず、現場配属を早めるケースが多数見受けられました。 従来通りの研修ができないと、ビジネスマナーや社会人としての常識を十分に学べないまま 現場に入らざるを得ない新人も多くいたようです。
例年以上に不安な気持ちをかかえたままの新人と、例年とは異なる形式で指導しなければならない上司・先輩との間で、 なかなかうまくいかない場面もあったことかと存じます。
そこで本日は、新人の不安解消・業務の円滑化のための「現場の指導力向上」を特集いたします。 こんな時だからこそ、若手社員によるOJTや管理職による部下指導を丁寧に行い、 新人を早期活躍させるべく育てていきましょう。
1.例年にはない新人育成の課題
今までは、当たりまえのように集合研修で習えた電話応対やビジネス文書を 習得しないまま業務がスタートし、「電話を取るのがこわい」 「ビジネスEメールが書けない」「ホウ・レン・ソウがよくわからず注意された」 など、次々と課題が出てきて立ち往生している新人がいるかもしれません。
今年は特に、同期のつながりを構築することがままならないこともあり、 「自分だけがついていけてないのでは」と感じ、 いつのまにか孤立してしまうことも考えられます。 上司・先輩にとっても、「こんなことから教えなきゃいけないの?」 「社会人の常識だろ」などと考えてしまったり、 当然理解しているだろうと育成項目を見落とすことがありえます。
お互いが不満をつのらせ、職場全体の雰囲気が悪くなると、 コミュニケーションの機会も減り、風通しが悪くなります。 職場全体のパフォーマンス向上のため、「動きやすい指示の出し方」や 「ホウ・レン・ソウをしやすくする」「適切な文書添削」など 指導スキルを習得し、新人が理解し実践できるような指導を心がけましょう。
2.向上させたい指導スキル(1)~新人が動きやすい指示の出し方
現場で新人に指示をする際には、仕事の流れや全体像を踏まえた 「もれなく情報を伝える」スキルが必要になります。
「もれなく情報を伝える」スキルがあれば、ティーチングを行う際にも役立ちます。 経験者にとっては「言わなくてもわかるだろう」とつい考えてしまいがちですが、 自分で流れを考えさせるためにも、仕事の意味を伝え、具体例をあげながら 丁寧に指示することが必要です。
■会議資料の準備を指示する場合
<悪い例>
「この資料をとりあえず多めに印刷しておいてください」
<良い例>
「この資料を印刷してください。本日16時から実施の月次報告会議で使用します。出席者は45名の予定ですが、予備で+5部、計50部の用意が必要です。配布する時間の確保も考えて、15時までに印刷をお願いします」
業務の指示を出す際は、<なぜ・いつまでに・何をするか>を具体的に説明し、 「結局どうすればいいの?」を防ぎます。 「その仕事をなぜやるのか」の意味を理解させることで、 イレギュラーな状況でも「応用して」対処できるようになります。
★ポイント
指示を出す際は、下記を意識して伝えることで相手が動きやすくなります。
・6W3Hを意識し、何をすればよいか、すぐ判断できるように伝える
・QCDRS(品質・コスト・納期・リスク・サービス)でゴールを明確にする
3.向上させたい指導スキル(2)~ホウ・レン・ソウがしやすい環境づくり
ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)は社会人の基本であり、 「必ず行うように」と指導することは多いかと思います。 しかし、タイミングや内容など新人にとっては意外と難しいものです。
最初からホウ・レン・ソウがうまい新人はなかなかいません。 「ホウ・レン・ソウくらい、うまくやってくれ!」という気持ちは脇に置き、 まずはホウ・レン・ソウがしやすい上司・先輩を目指しましょう。
■悪い報告を受けた場合
<悪い例>
「なんでもっと早く言わないの? 困るんだよなあ」
<良い例>
「○○さん。報告してくれて助かったよ。この作業が遅れると、
この後のスケジュールに間に合わないかもしれないんだ。
次からも想定外のことが起こったらすぐに教えてくれると助かるよ」
ホウ・レン・ソウを受けた際には、 「私は~してほしい」「~してくれるかな?」「私は~してもらえると助かる」など、 アイメッセージ(私は~で始める)やポジティブ表現を意識しましょう。 ホウ・レン・ソウがしにくく、つい敬遠してしまう上司・先輩の特徴として、 「~しないでくれ」「~してくれないと困る」といった否定的表現が多いことがあげられます。 受け入れ側の意識を変えることで「ホウ・レン・ソウがしやすい風通しのよい環境」 を作ることが大切です。
★ポイント
風通しのよい環境は、下記のような日常のちょっとした行動や発言から
構築していくことができます。
・相手を意識して名前で呼ぶ
・互いを理解し支え合えるよう自己開示をこころがける
・誰もが意見を発信できる場をつくる
4.向上させたい指導スキル(3)~ポイントを押さえ文書を添削する
上司・先輩が新人を指導する際に重要なのが「フィードバック」です。 テレワークや出社時間をずらすなど直接会う機会が少なくなる中、 メールなどの文書を通じてフィードバックすることが多くなっている方もいらっしゃることと思います。
メールや日報、報告書といった新人のアウトプットをチェックして戻す業務は時間がかかります。 新人の文書を手早く添削してフィードバックするスキルを身につけましょう。 文書を添削するにはポイントがあります。ひな形を使用したり、一行は何文字以内といった ルールに沿ってチェック項目を決め、効率的に添削するスキルを身につけることは、 指導を担当する上司・先輩自身のためにもなります。
■報告メールを添削する場合
<添削前の文書>
件名:ご報告
本文:
●●課長
お疲れ様です。○○です。
展示会は、先週フードエキスポ20××が開催されておりましたが、
視察に行ってまいりました。
A社の提案が印象的でした。様々なアイデアが溢れてきて良い刺激になりました。
何卒よろしくお願いします。
<添削後の文書>
件名:【ご報告】「フードエキスポ20××」視察の件
本文:
●●課長
お疲れ様です。○○です。
標題の件につき、下記のとおりご報告いたします。
日時:20XX年3月8日(水)14時~16時
場所:東京メガサイト東3ホール
主催者:インソースメディア新聞社
参加者:○○
目的:
外食産業向けに販路拡大を検討するにあたり、関連企業の情報収集をするため
詳細内容:
・A社 展示品の数が20点と最も多い。~提案が印象的
・B社 ~に焦点を当てて展開している
以上、何卒よろしくお願い申し上げます。
★ポイント
文書を添削する際は、下記のようなポイントを意識すると適切にかつスピーディーに
添削することができます。
・内容が件名を見ただけでわかる
・一文は40~50字程度の短文
・主語と述語が明確、かつ一貫している
・内容は具体的に数値や固有名詞を用い、正確である
・専門用語や外国語は最小限にとどめ、わかりやすい言葉を使う
・文書の内容は「誰が」「何のため」に書く文書かを意識して書く
5.まとめ
今年はテレワークや出社時間をずらすなどの勤務形態の変化もあり、 メールやオンライン環境下で指導することも増えているようです。 画面越しに注意やアドバイスをする時は、対面で注意する時よりも 厳しく聞こえることがあります。指導相手から受ける情報(表情・雰囲気)も 少ないことから、教えるほうはより細かい配慮が必要です。
・仕事を指示する際はもれなく丁寧に
・ホウ・レン・ソウはまず、しやすい環境を
・文書を添削する際はポイントをおさえて適切かつスピーディーに
これらを意識して指導することは、上司・先輩自身のスキルアップになったり、 風通しのよい職場づくりにもつながります。 地道に仕事の流れや基本を教え、新人を育成することを心がけましょう。 今こそ現場全体で新人を支え、育てる意識を持つことが大切です。
皆さまの職場におかれましてもご参考になりましたら幸いです。
研修担当者の虎の巻
「そもそも研修ってどういうもの」「担当になったら何からやるの」など、研修ご担当者になったらまずは読んでいただきたい内容をまとめてご紹介しています。
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