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女性管理職比率30%超を現実に!真の女性活躍推進とは(後編)

多くの組織で、女性活躍推進の状況を示す指標として用いているのが「女性管理職比率」です。全管理職のうち、女性が占める割合を3割まで引き上げるぞ!とトップから号令をかけられている人事の方も多いのではないでしょうか。

この3割という数字の根拠となっているのが政府の指針(※)です。具体的には「2020年代の可能な限り早期に、指導的地位に占める女性の割合が30%程度」とする目標を掲げています。しかし、この目標を現時点で達成できている組織は非常に少なく、目標の下方修正も頻発しています。

さらに、女性管理職がまだ一人もいない、そもそも女性社員の数自体が少ないなど、女性管理職比率の向上を目指す以前に解決すべき課題を抱える組織もあり、まず何から着手すればよいのか悩んでいる人事担当者も多いようです。

そこで今回は、女性管理職を実際に増やすにはどうすればよいのか、組織の状況に合わせた現実的な取り組みについてお伝えします。

目次

女性管理職比率が向上するまでの3ステップ

ここでは、「指導的地位に占める女性の割合が3割を超え、社内で活躍している」という状況を目指すべきゴールとしたうえで、その状況に至るまでのステップを3段階に分け、どのように取り組みを進めていけばよいかステップごとにご紹介します。

ステップ1:女性が長く働き続けられる環境が整っている

女性を管理職に登用したくても、そもそも社内に女性社員が少ない、女性が入社してもすぐ辞めてしまう、といった課題を抱える組織においては、まずは女性が長く働き続けられる環境を整えることが先決です。女性が離職してしまう原因を突き詰め、解決に向けた施策を早急に打つことが求められます。

・突発的な休みも「お互いさま」と言い合える風土をつくる
例えば、残業が多いため育児との両立が困難だと感じる女性が多い職場では、業務改善による生産性向上で負荷を減らす、ライフステージの変化に伴い柔軟な働き方を可能にする制度をつくる、といった対策が必要です。
また、子どもが小さいうちは、朝保育園に預けてきても、急に「熱があるので迎えに来てください」と連絡が入ることは一度や二度ではありません。そのたびに周りの人に「早退します」「明日も休みます」と言いづらい雰囲気があると、辞めてしまおうか......と考えてしまいがちです。誰かの育児休暇や時短勤務によって他のメンバーに負担が生じても「お互いさま」と言い合える心理的安全性の高い風土をつくることも、女性の就業継続の意欲を高めるきっかけとなります。

・上司世代や経営層の価値観をアップデートする
同時に、こうした取り組みを着実に進めるためには、「家事・育児は女性がやって当然」という価値観の中で育ってきた上司世代や経営層の意識をアップデートすることが欠かせません。女性の活躍が組織にもたらすメリットを理解し、早期離職する女性を一人でも減らす取り組みの旗振り役をトップが担うことで、全社の認識がひとつとなり大きな成果につながります。

ステップ2:管理職になることに前向きな女性が複数いる

全社における女性比率は少なくないものの、管理職の女性がまだいない、管理職になりたがる女性もいない......こうした組織でよく指摘されるのが「ロールモデルとなる女性管理職がいない」という点です。前例がないと周りの目が気になる、責任の重い仕事と家庭のバランスを取れるのか不安で前向きになれないなど、管理職になることへのネガティブな感情を抱く女性も多いと思います。

・「いきなり管理職」ではなく、順を追って意識を高める
こうした女性に対しては、順を追って管理職への意識を高めることが必要です。いきなり「管理職を目指せ!」ではなく、まずはフォロワーとして上司を補佐することや、リーダーとしてメンバーを鼓舞しながらチームの成果を生み出す中堅としての役割を担ってもらいましょう。その役割にやりがいや手ごたえを感じてもらえたら、次のステップとして管理職を意識できるようになります。

・"マネー"の観点から現実的に考える機会をつくる
さらに、人生100年時代に備えた将来設計に欠かせない"マネー"の観点から、今後のキャリア形成について考える機会を提供することも、管理職へのキャリアアップを現実的に考えるきっかけとなります。生成AIなどの技術革新により消滅する業務が増えることが予想される中、管理職になるという選択肢を持つことは、望む人生を叶えるうえで益々必要となるでしょう。

・女性にも仕事力獲得・キャリア形成を意識した業務配分を行う
管理職になりたい女性が増えない組織の構造的な問題として、「合理的な理由もなく女性に任せる業務を限定している上司が多い」ことがあります。こうした組織の男性社員は、メンバーの育成や他部署との調整などリーダーシップや判断力を磨く業務を多く与えられ、チームで成果を出す経験を積むチャンスや成長機会に恵まれているため、スムーズにマネジメント業務に移行できます。一方女性社員に対しては、仕事力獲得・キャリア形成を意識した業務配分が行われていないという現状があります。

<無意識のバイアスがもたらす悪循環>

偏った業務配分の背景にあるのが、「女性はサポートが得意」「女の子に〇〇させるのはかわいそう」「子供を持つと大変だろう」といった無意識のバイアスです。一見、相手を思いやっているように見えますが、成長の機会やチャンスを奪ってしまっている可能性は否定できません。

さらに、このようなバイアスは、男性のみならず女性も持っており、女性自身が自分にリミットをかけてしまうことがあります。


無意識のバイアスによって業務配分が偏り、獲得する仕事力が限定されると、スキルやキャリアの不安につながります。これが、昇進意欲の低下や早期離職を引き起こし、負のスパイラルの発生を招きます。

女性には経験を積んでスキルを獲得する必要性を、男性を中心とした管理職には、そのための機会提供と適切なサポートを行う重要性を根気よく訴え、従業員全体の意識を変えていくことが、負のスパイラルからの脱却には必要不可欠です。

ステップ3:女性管理職が複数いる

ステップ1~2を経て、いよいよ女性管理職の数を増やしたい、という段階になると、すでに意欲のある女性は登用しきってしまい、次の候補者が見つからないという課題に直面します。しかしこの段階では、社内にロールモデルがいることが大きな強みとなります。

例えば、女性管理職と若手社員との座談会や、ワーキングマザー同士の横のつながりを深める場を設け、どうやって壁を乗り越えてきたのかという事例の共有ができる機会をつくると、女性管理職候補者の裾野をさらに広げることができます。

そして、候補者を定期的に管理職に登用できるよう、すでに係長の女性は課長職、課長の女性は部長職に昇格させ、初級管理職のポストを空けていく取組みも進める必要があります。しかし、現場リーダーやプレイングマネージャー的な役回りはこなしてきても、重要な経営判断が求められる上級管理職になるのは不安、経験もスキルも足りず自信が持てない、という女性も多いでしょう。

そうした女性に対して男性役員がメンターとなって導いていくという施策を打つ組織もあります。また、これまでの業務で身につけてこなかった判断力や問題解決力、交渉力といったマネジメントスキルを、研修受講などを通じて獲得してもらうことも効果的です。

最後に

2023年に決定された「女性版骨太の方針」では、2030年までに女性役員の比率を30%以上とする目標が盛り込まれました。今の段階では途方もなく難しいと感じる目標も、段階的にステップを踏み、現状を少しでも前に進めていくことが大切です。

まだ道半ばという組織の皆さまにおいても、女性がさらに活躍できる組織づくりに向け、本コラムでご紹介したステップと必要な取り組みを参考にしていただけますと幸いです。

前編はこちらから
女性管理職比率30%超を現実に!真の女性活躍推進とは(前編)

参考
※内閣府男女共同参画局「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~(令和2年12月25日閣議決定)」
https://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/5th/index.html(最終アクセス日:2024/7/11)

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