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女性管理職比率30%超を現実に!真の女性活躍推進とは(前編)

組織にとって女性活躍推進への取り組みは、優秀人材の獲得や離職防止につながったり、多様な人材の視点を内包することで組織の「変化への対応力」や「リスク判断力」が向上するなど、様々なメリットがあります。近年では、ライフイベントに左右されず就労継続する女性が増えていることもあり、女性活躍推進に取り組む組織はますます増加しています。

しかし、2023年3月に行われた企業の人事担当者へのアンケート(※1)によると、課長相当職以上における女性管理職の割合が「30%以上」の企業は9.9%だった一方、6割以上の企業が「10%未満」と回答しており、真の女性活躍はまだ道半ばという組織が多いのが現状です。さらに2023年3月期の決算から有価証券報告書に女性管理職比率の記載が義務付けられる(※2)など、人的資本開示の観点においても取り組みの成果を出すことが求められています。

そこで今回は、前編で人的資本開示の文脈から考える女性活躍推進のメリットについて、後編で実際に女性管理職比率を向上させるために組織としてどう取り組めばよいか、具体的にお伝えします。参考にしていただければ幸いです。

目次

改めて「人的資本」とは

従来、人材は消費すればなくなる「資源」と捉えられていましたが、近年は「投資をすることで価値を生み出せる『資本』」であると捉える考え方が浸透しつつあります。これが「人的資本」という新しい概念です。人的資本の価値を最大限に引き出し、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方を「人的資本経営」といいます。

人的資本開示の文脈から考える女性活躍推進の2つのメリット

近年、投資家の投資判断においても企業の人的資本が着目されるようになっており、企業側にも人的資本に関する情報開示が求められるようになってきました。数ある人的資本情報のなかでも、開示が進んできているのが「女性活躍の状況」です。

2023年3月期からは、女性活躍推進法に基づき「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「男女間賃金格差」を公表する企業に対して、これらの指標の有価証券報告書への記載が求められるなど、人的資本開示の観点からも関心が寄せられています。

1.国内外の投資家から、多くの投資マネーを呼び込める

内閣府の「ジェンダー投資に関する調査研究報告書」によると、アンケートに回答した機関投資家等のうち、投資判断に女性活躍情報を活用しているのは全体の3分の2にのぼります。


■図表1 投資判断における女性活躍推進情報の活用状況

出典:内閣府 男女共同参画局「令和5年4月 ジェンダー投資に関する調査研究報告書」図表3
https://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/pdf/r4gender_lens_investing_research_02.pdf(最終アクセス日:2024/7/10)

活用する理由として最も多いのが、「企業の業績に長期的には影響がある情報と考えるため」、次いで「企業の優秀な人材確保につながると考えるため」、「社会全体として女性活躍推進に取り組む必要があると考えるため」という理由が多く挙がりました。

■図表2 投資判断や業務において女性活躍情報を活用する理由(複数選択)

出典:内閣府 男女共同参画局「令和5年4月 ジェンダー投資に関する調査研究報告書」図表5
https://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/pdf/r4gender_lens_investing_research_02.pdf(最終アクセス日:2024/7/10)

ESG投資で先を行くヨーロッパをはじめ、世界の様々なESG評価機関が、日本の上場企業を格付しています。有価証券報告書への記載義務化によって、自社の女性活躍の状況が同業他社と比較されるとともに、取り組みの成果が数値で見えないと、投資判断にも大きな影響を与える可能性があります。

つまり、上場企業にとって女性活躍推進に関する情報をわかりやすく発信することは、国内外の投資家から選ばれ、多くの投資マネーを呼び込むための重要な戦略となります。

2.人的資本開示によって、非上場企業が上場企業と肩を並べられる

有価証券報告書提出の義務がない非上場企業もおいても、この流れを無視することはできません。なぜなら、企業活動のステークホルダーは投資家だけに限らないからです。
規模の大きい同業他社と同様、以下の図に示すあらゆるステークホルダーとの関わりにおいて人的資本に関する情報発信を積極的に行うことが、非常に大きな意味を持つようになっています。

例えば就職活動において、希望する企業は女性が働きやすさを感じ、自分の能力やスキルを発揮して活躍できる組織かどうか、多くの求職者や学生が重視しています。上場企業と同じ指標を用いて、同業他社よりも女性活躍が進んでいる企業であるとアピールできれば、知名度で不利なスタートアップ企業などでも大きなアドバンテージとなります。

このように、優秀な人材の獲得・定着を促し、強い組織にしていくためには、上場/非上場に関わらず、積極的な情報発信があらゆる企業にとって必要不可欠な時代となっています。

後編はこちらから
女性管理職比率30%超を現実に!真の女性活躍推進とは(後編)

参考
※1 人事のお役立ちニュース
女性管理職割合が「30%以上」の企業は約1割、「10%未満」の企業は6割以上

※2 金融庁「『企業内容等の開示に関する内閣府令』等の改正案の公表について」 https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20221107/20221107.html(最終アクセス日:2024/7/10)

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