暗記中心の勉強を面白くできる「理論アプローチ」についてお話します。
役に立つ逆転の発想法 ―理論アプローチと歴史アプローチ(2)―
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.ひとまず「AならばB」の因果を考え、まとめることにより、理解を深めることができる。
2.理論アプローチを用いることで、社史から将来展望が分かる。
- ■理論と歴史:対照的な説明法
- 前回は、理論アプローチと歴史アプローチの2つは対極にある方法であると一般に理解されていると述べました。理論アプローチは、細部を捨象し、できる限りそのエッセンスを大まかにまとめ、「AならばB」の因果連鎖の形で表すことが基本です。逆に歴史アプローチでは、できる限り細部にこだわり、安直に因果関係として定式化しないことこそ肝要です。
- ■歴史の授業はつまらない?
- 学校で学習する歴史の授業は、暗記しないといけない事項が多く試験前が大変で、面白くないと感じた方は居ないでしょうか。実はわたし自身がそうでした。わたしの場合、歴史のストーリーとして聞けばそれはそれで楽しいのだけれど、試験や単位のことを考えると、どうしても年号や固有名詞を暗記しないといけないことが多すぎ、勉強のモチベーションが上がりませんでした。
- ■歴史を理論的に捉える
- わたし自身の勉強の仕方がまずかったのかも知れませんが、歴史科目の指導の仕方や歴史教育のあり方にも問題があるのではないかと感じるようになりました。歴史=暗記科目という広く流布した印象、理論と歴史を対置させるとらえ方ではなく、理論アプローチの発想法を、歴史教育にも少し取り込むことによって、格段に歴史の勉強が楽しくなるのでは、と考えたのです。
- ■テーマを決めて歴史を学ぶ
- 現代の歴史の教え方は、当たり前ですが、時代を順に追っかけ、日本史であれば縄文時代、弥生時代と順にそれぞれの人々の生活や政治経済の動きにフォーカスを当てて、その方式で現代まで下っていきます。でも時には、例えば「戦争が起きるときは、どういった時なのか?」とか「人々の生活水準が低く、貧しくなるのは、どういった時なのか」といったテーマを掲げ、そのテーマ毎に要約・通時代的に理解させるやり方も取り入れてはどうでしょうか。
- ■歴史を“規則”的に理解する
- 実は、この方法は、理論的アプローチと同じで、「AならばB」の規則性を追求する教え方です。もちろん、社会現象なので自然科学と同じようには定式化できません。外交上の揉め事が契機となって戦争が起こることもあるでしょうし、国内的な事情が他国との戦争に発展してしまうケースもあり得ます。しかし、ひとまず、曖昧だけれども、こうした「AならばB」の因果を考え、まとめることにより、随分とすっきりと理解できるのではと思うのです。
- ■歴史は1ケースの理論
- 歴史は、多くのサンプル数を集める統計学とは違って、たったの1ケースに過ぎません。統計学のような「こうなれば、こうなりやすい」という確からしさは言えませんが、「こうなることもあり得る」ということを示すだけでも意味はあるのです。歴史はいわば1ケースの理論なのです。
- ■社史からの将来展望
- こうして、サンプル数が1しかない歴史学ですが、強引であっても多少の規則性、因果関係の形で学習する勉強法を取り入れることによって、無味乾燥で暗記中心の勉強方法を面白くできると思うのですが、いかがでしょうか。
- 皆さんの働く現場でも、こうした自社の歴史や発展プロセスを、規則や法則の観点から眺め直し、まとめてみて下さい。法則性がわかれば、御社の将来も自分なりに予測できるようになるはずです。