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先行オーガナイザー
「先行オーガナイザー」とは、これから学ぶ内容についての理解を促すために、あらかじめ概略的な情報として与える「枠組み」のことを言います。例えば、本の目次に目を通してから本文を読むと、難しい内容でも頭に入りやすくなります。この「目次」の役割を果たすのが先行オーガナイザーです。
先行オーガナイザーは、アメリカの心理学者D・オーズベルが提唱した考え方です。オーズベルは、新しい学習内容の概略を先に与えると、学習者は既に知っている情報と結び付けながら学ぶことができ、学習内容を"意味のあるもの"として記憶しやすくなる、という「有意味受容学習」という学習方法を提唱しています。
この有意味受容学習を実践するためのツールとなるのが、先行オーガナイザーです。新しい学習をする前に、概略的な全体像(枠組み)を先に提示しておくと、学習内容が理解しやすくなるという先行オーガナイザーの概念は、学校教育ではもちろん、社会人教育の現場においても広く活用されています。
学習機会だけでなく、ビジネスにおいても先行オーガナイザーの考え方が役に立つ場面が多くあります。例えば、社内外の相手にプレゼンテーションを行う場合、話す内容の章立てを記したレジュメをあらかじめ配布しておくと、聞き手は章立ての構造に沿って話を理解しようとするので、より話し手の意図が伝わりやすくなります。
また、顧客との交渉を始める前に、まずは話し合いの目的を一言で端的に伝えておくと、双方の気持ちを一つの方向にまとめやすくなります。顧客相手との話に限らず、忙しい上司に対しての日常的な報連相を行う際も同様です。
相手に分かりやすく説明できるよう、伝えたい内容の「枠組み」をつくるには、話を構造化してまとめるスキルや、ロジックツリーやMECE(モレなくダブリなく)といったロジカルシンキングのフレームワークを身につけておくとよいでしょう。
先行オーガナイザーの考え方や実践に必要なスキルを日頃のコミュニケーションにも活用し、多様な考え方を持つ相手とのスムーズな信頼関係構築に役立ててみてはいかがでしょうか。