今回は、経営学が発見した「社員のやる気を上げるには、仕事の内容を面白くしてやらないといけない」という命題について考察します。
社員のやる気を上げるには ―経営学説から学ぶモチベーション向上要因―
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.職務をこなす各位の能力より、少し難しいレベルの仕事を社員に与える時、やる気は上がる。
2.社員をやる気にさせるためのエッセンスは、本人とマネジャーの双方で「仕事の在り方」を考え直す機会を持ち、改善へ向けた努力を重ねることである。
- ■賃金よりも仕事の中身こそが鍵
- 「仕事内容のおもしろさ」でやる気を出させるということの裏に秘められた意味は、賃金を上げたり、職場の雰囲気を良くしたりするだけでは、働く人々のやる気は決して上がらないということです。これらの要因は通常レベルであっても問題はなく、個々人が日々こなしている仕事(職務)の設計、職務の中身の在り方こそが、人々のやる気の向上にとっては最重要な鍵となることを、示唆しています。
- ■少し難しい仕事がモチベーションを上げる
- では、職務はどのように設計すれば良いのでしょうか。経営学の解答は、「職務をこなす各位の能力より、少し難しいレベルの仕事を社員に与える時、やる気は上がる」ということになっています。各自の保有している能力を十全に発揮でき、できればその持てる能力を少し超え、更なる能力開発ができるような難度の職務に就かせる時、社員は「考えること」を通じて、やりがいや満足を感じ、自己実現が達成されて「やる気」が上がる、というメカニズムです。
- ■マネジャーの心の余裕
- こうした「少し難し目の職務」を社員に与えることのできる前提として、1つにはマネジャーに、働く社員への信頼があることが必要です。社員への信頼がないと、コスト増を恐れるあまり、誰がやってもできそうな簡単な仕事しか与えないことになりかねません。そしてもう1つの前提は、日々の短期的な仕事の出来映えではなく、長期視点に立って評価してやることです。人の育成は即席にできるものではなく、大いに時間がかかるものだからです。この2つの前提はいずれも、マネジャーの心の余裕が必要であるということを示しています。ただ、もう1つ重要なポイントがあります。
- ■社員も自ら努力が必要
- それは、職務に就く社員自身による創意工夫も必要ということです。マネジャーがいかに「少し難し目」の職務を設計し、社員に付与していても、それをどう受け取るかは、詰まるところ社員自身の心に帰着する問題なのです。裏返していうと、どのような職務を与えられていようと、それに社員オリジナルの創意工夫を加え、努力しようとする姿勢があれば、やりがい感や満足感は自ずと向上するということです。
- 社員をやる気にさせるためのエッセンスは、社員とマネジャーの双方で「仕事の在り方」を考え直す機会を持ち、改善へ向けた努力を重ねることであると言えるでしょう。