07
そもそもタレントマネジメントとはなんでしょうか。ひと昔前では、採用した新人にいわゆる十把一からげの研修を行い、全員を一定レベルに引き上げるのが人事の行う育成でした。タレントマネジメントとはその対極にあり、
① あらかじめ各人材の伸ばすべき分野や貢献してほしい領域を明確に定め、
それに基づいて採用・育成を行う
② 人材育成費を全員に同じように使うのでなく、伸ばしたい人材・分野を
見極めて投資する
という考え方が原点になります。
実は、タレントマネジメントという名称はなくとも、以前からそれに近いことを実施している企業はありました。ただ今後は主流になっていく可能性が高く、多くの人事部は変化が求められています。例えば、これまでのようにルーチンワーク(時期が来たら新卒採用、補充の依頼が来たら中途採用、○○年後に○○研修など)のみに携わっていては十分とは言えません。
人事部は経営側の意向や戦略をくみ取り、今すぐでなく数年先に
① 会社がどういった組織になっているのか
② どんな人材が、どこに、何人必要なのか
を把握し、人事戦略のポートフォリオを描く必要があります。もし今、人事部が経営側と距離を感じているとすれば、タレントマネジメントとは対極にいることになります。今後の人事部は、経営側と積極的に意志疎通を図り、協業していく業務を進めていく必要があるのです。
また、これまでの平等で画一的な育成を止め、特定の人材や分野に投資を集中するなどの工夫も必要になってきます。5~10年後を考えるのであれば、賃金体系さえ変わってくるかもしれません。
同時に、必要な人材を
・内部で育てるのか
・中途採用してくるのか
・業務自体を外注してしまうのか
ということも考える必要が出てきます。
現在、インソースの「上級管理職研修」ではマトリックスを使った人材戦略も学びますが、今後は経営者や上級管理職だけでなく、人事も同様のことを学んでいく必要があると考えられます。
タレントマネジメントを導入しやすい職種はエンジニアや研究開発職です。この職種では、コミュニケーションやマネジメントスキルよりは、専門分野を伸ばすことが重視されます。
ただ、業界によってはあまりピンと来ない場合があるかと思います。その場合、少し違ってきますが、「職種転換」が取り入れやすいかもしれません。例えば、海外に工場をどんどん出していくのに、工場労働者ばかりいても仕方ありません。その場合、工場労働者の方には、研究職やオフィスワークに移っていただき、労働者は現地で採用するなど人材の構成比を変えていくこともタレントマネジメントに通じます。
また、
・採用時から幹部候補者を決めて、別枠で育成していく
・集合研修・階層型研修を減らし、e-ラーニング、異業種交流型、公開講座など
を利用してカスタマイズした研修を行う
ことも今後必要になっていくと考えられます。