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インテグリティ
インテグリティ(integrity)とは、ラテン語のinteger(全体の・完全な・健全な)から転じた言葉で、「高潔」「誠実」「清廉」「真摯」と訳されます。企業の経営者に求められる資質として、欧米社会では以前から重視されてきましたが、近年では日本の企業運営にも不可欠な姿勢として注目されています。
マネジメント理論で有名なP.ドラッガーは、著書の『現代の経営』のなかで、インテグリティこそ経営トップに求められる最も重要な資質であると述べています。また、世界一の投資家として知られるW.バフェット氏も、高潔さ、すなわちインテグリティが欠如した人を雇用することの組織的なリスクについて語っています。
現代では、会計不正やデータ偽装、個人情報の漏えいといった不祥事が多発し、企業の社会的責任(CSR)を求める声が高まっています。法令遵守の徹底はもちろん、さらに人権の尊重や環境破壊といった社会的な問題に対しても、企業が「誠実な」姿勢で臨むことが評価されるようになっています。日本資本主義の父と呼ばれ、今なお注目されている渋沢栄一が説く"経済と道徳を一致させるべき"という考え方(道徳経済合一)も、このスタンスに基づいています。
そこで、法律や規範を守るだけでなく、企業倫理や行動規範まで含めた社会的責任を果たそうとする「インテグリティ・マネジメント」を経営指針として掲げる企業が増えています。「悪いことをしない」というコンプライアンスの概念から一歩踏み込み、公益性や社会貢献思想に基づき「良いことを積極的に行う」という姿勢を打ち出し、社会からの幅広い信頼獲得につなげることが、インテグリティ・マネジメントのねらいです。
インテグリティは、組織におけるすべての人材に求められる資質です。すべての人材に「良いことを積極的に行う」という姿勢が身につくことで、主体性やリーダーシップの発揮につながることも期待されます。
法律と違い、インテグリティとはどういうことかを伝えるのは難しいものです。しかし、インテグリティを重要視する企業理念や価値観を明文化し、全社に浸透させる取り組みは、経営トップの重要な仕事です。また、トップが自ら模範を示し、自社のビジネスや顧客、従業員と真摯に向き合う姿勢を見せることで、組織人としてあるいは社会人としてあるべき姿を伝えていきましょう。