ウェーバーによると、カリスマ型マネジメントが崩壊すると、組織は残りの2つの類型のいずれかの内部マネジメントの在り方に移行することになります。今回はその1つである「伝統型マネジメント」について見ていきます。
内部マネジメントの3パターン(2) ―伝統型マネジメントとその活用法―
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.伝統型マネジメントというと、前例踏襲というネガティブな印象を抱きがちだが、どうでもいいような事柄(しかし、やらないといけない事柄)については、エネルギーを使わず物事を前進させることができるというメリットもある。
2.伝統型マネジメントを活用するには、自分に降りかかってくる仕事のうち、どれはきっちりエネルギーを最大限投入してコミットするか、そしてどれは適当に済ませばよいかを、識別できる能力を身につけることがポイントとなる。
- ■伝統型マネジメントとは
- 「伝統型マネジメント」とは、これまでの組織で慣行的に行われてきた通例のやり方に基づいて組織のマネジメントを行うことです。伝統型マネジメントは、カリスマ型マネジメントに比べると属人性は低く、その意味では近代的な内部マネジメントの在り方といっていいでしょう。
- ■伝統型マネジメントの特徴
- ただし問題は、「これまでずっとそのように行われてきたから」というただそれだけの理由に基づいて、考えたり分析したりすることないままに、物事の進め方が正当化されることです。例えば、組織でプロジェクトを進める際に、とりあえず前例踏襲をして対応しておこうと考え、安易に前回と同じやり方で対応しようとする場合がよくあります。こうした対応の仕方が伝統型マネジメントの典型例です。
- ■伝統型マネジメントにもメリットがある
- 前例踏襲というネガティブな印象を抱きがちで、積極的な文脈で語られることの少ない伝統型マネジメントですが、実はメリットもあります。そして、このメリットを知っておくことが、皆さんが効率的に物事を進めていくうえでのヒントにつながります。
- ■「どうでもいいこと」への対応
- 皆さんの組織でもそうでしょうが、どうでもいいような事柄(しかし、やらないといけない事柄)については、わたし自身は、できるだけ素早く効率的に、最小限のエネルギーで済ませられるように、この伝統型マネジメントを活用するように心がけています。つまり、「こういうケースでは、以前はどのように対応していたか」を探し、殆ど考えることなくそのやり方に従って、物事を前へ進めていくようにしています。この場合、エネルギーは殆ど使いませんから疲れることもありません。そして、とりあえずは物事を前へ進めていくことができます。いわば省エネ運行ができるのです。
- ■識別できる能力
- ここで重要なポイントは、自分に降りかかってくる仕事や作業のうち、どれはきっちりエネルギーを最大限投入してコミットするか、そしてどれは適当に済ませばよいかを、きっちり識別できる能力を身につけることかも知れません。後者の「適当に済ませばよい」(適当でも許容される)事項に対しては、思い切って伝統型マネジメントを適用してやればいいのです。
- 以前、当コーナーで「戦略的発想」の基礎は事項を列挙してその優先順位を付けることにあると説明しましたが、自分の為すべきことを列挙し、優先度の低い事項には伝統型マネジメントで対応するようにしてみると、仕事が一気に効率的にはかどるよう革新できるかも知れません。
- 次回は、伝統型マネジメントよりもさらに効率的なマネジメント手法について説明します。