カリスマ型マネジメントが崩壊して出てくる2つのマネジメント類型は、伝統型マネジメントと官僚制マネジメント。今回は後者について考察します。
内部マネジメントの3パターン(3) ―官僚制マネジメントの正しい理解と活用法―
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.正確性、処理スピードの速さ、明確性、連続性など、官僚制マネジメントのさまざまな特徴の中でも最も重要なのは「誰がやっても同じ結果になる」という特性(没人格性)である。
2.官僚制マネジメントが持つ特性の一つ「没人格性」は「公平性」につながる。
3.仕事の局面ごとに、官僚制マネジメントと脱官僚的マネジメントの使い分けを判断できることが重要。
- ■カリスマ型マネジメントの崩壊
- 前々回、このコーナーで述べたカリスマ型マネジメントが崩壊して出てくる1つのマネジメント類型が、前回述べた伝統型マネジメントでした。そしてもう1つ、カリスマ型マネジメントの崩壊とともに現れるマネジメントが、かの有名な官僚制マネジメント(合法的マネジメント)です。
- ■精密機械に似た官僚制マネジメント
- 官僚制マネジメントは、よく精密機械にたとえられます。精密機械のそれぞれのパーツには、何らかの果たすべき機能が与えられており、それらの全てのパーツが各々の機能を最大限に発揮することにより、全体の目標が達成されるのです。官僚制マネジメントも同じです。
- ■伝統型マネジメントにもメリットがある
- 前例踏襲というネガティブな印象を抱きがちで、積極的な文脈で語られることの少ない伝統型マネジメントですが、実はメリットもあります。そして、このメリットを知っておくことが、皆さんが効率的に物事を進めていくうえでのヒントにつながります。
- ■誰がやっても同じ結果が得られる
- 官僚制マネジメントは、正確性、処理スピードの速さ、明確性、連続性など、さまざまな特徴を持っていますが、なかでも最も重要なのは「誰がやっても同じ結果になる」という特性(没人格性)です。官僚制マネジメントでは、影響力のある社長がたとえ亡くなったとしても、手続きに則って粛々と同じ対応がなされ、マネジメントが継続されていくわけです。
- ■行政系の仕事では
- 私は学外の仕事で、行政や地方自治体系の委員会で司会進行役を仰せつかる機 会が結構ありますが、どこの自治体でも、進行に当たっては、事務局が分単位 で設定された「会議シナリオ」を準備します。自治体で働いている方々は文字 通り「官僚」です。官僚制の没人格性がこういうところにも現れており、司会 者が私以外の人になったとしても、同じ意見なら必ず同じ結果が得られるよう になっているのです。
- ■没人格であることが公平性に繋がる
- 没人格性は、「公平性」というコンセプトとも関わっています。つまり、誰がサービスを受けても同じサービスが受けられるように工夫されているのです。例えば、役所の窓口サービスは,特に従来では「対応が悪い」という評価が一般的でしたが、この背後には「誰が窓口に行っても、同じ要請なら同じ結果が得られる」ということ(公平性)を最優先にするからこそ出てくる対応であることを忘れてはなりません。
- ■状況に応じた判断を
- 逆に、民間企業では、意思決定や対応にもっと個性がある方が一般には望まれることが多いです。以前、このコーナーでも触れた「人的資源管理」の発想法は、実は従業員各自の「個性」が競争優位の源泉となるべきであると考えられています。その意味では、官僚制マネジメントからの脱皮と人的資源管理の考え方には共通項があります。
- 要するに今日では、仕事のどういった局面で官僚制マネジメントを活かし効率を追求し、どういった局面では逆に脱官僚的に個性を追求すべきかを判断できる人材になることこそ、求められているといえるでしょう。