梅雨ではあるが、通勤の道に日差しが届く晴れ間もある。再び雨が戻る前に、物を干したり溜まっていた用事に出かけたり忙しい。雨が続くのも困るが光熱費高騰の折、来るべき猛暑の予兆も切ない。せめて日々の暮らしに涼しげな工夫をして、心穏やかに過ごしたい。
節約を目指して(?)、白玉・蜜豆など昔ながらの冷菓を作る。簡単でおいしく、最近の私のブームになった。ちょっと趣向を変えようとアイスクリームや果物などを添えると、本当に節約になっているか疑問だが。すべての商業活動は、売り手と買い手のコミュニケーションだと考えている。日頃から情報に耳を傾けながらも安易にナッジに乘らないよう、スラッジに惑わされないよう留意しているつもりだが、こう蒸し暑い日が続くと自信がなくなる。
■ねえ、聴いてる?
社会生活の永遠の課題の一つはコミュニケーションだろうか。先日、コミュニケーションは社会経験の浅い若者だけでなく、ある程度の経験を積んだリーダー層にとっても悩みの種だという話を聞いた。彼らはプロジェクトや業務のチーム・部署など、上長はじめ部下や後輩との対話による相互理解が必要な場面でのまとめ役だ。
メンバーに温度差があって充分に伝わっているのか分かりにくい・同じ情報の内容でも相手の立場によって受け取り方が異なり真意が伝わらない・オンラインでしか連絡が取れないメンバーの困りごとが分からない、などだった。役割とはいえ、難しく気の重い仕事だ。
長い付き合いの友人も同じ家に住む家族も、基本に信頼があると分かっていても、どうかすると互いの気持ちや言葉が行違って諍いに発展することがある。
まして人数分だけ異なるバックボーンや価値観を持つ集団を、成すべき目標に集約するのは容易ではない。不特定多数の人との意思疎通には、やはりコミュニケーションのセオリーに沿った訓練とスキルが必要になるのかも知れない。
■ちゃんと届いてる?
昔、母がよく言っていた。「調子にのったり卑屈にならないように、普通に話しなさい。自分が正しいと思い込んで頭ごなしだったり喧嘩腰だったり、軽々しく見下して話すと、そういう空気が必ず相手に伝わって、もう聞いてもらえない。言いにくいことも怒っている時にも、穏やかに普通に話しなさい」
その通りだと思う。なるべく、そう心掛けているが、気持ちが先走ってなかなか上手くいかない。個人的には、相手の立場になってみる想像力と、どんな意見も尊重する礼節が大事だと思ってはいるのだが。
やはり顔の見える関係では、改まってコミュニケーションの必要が生じた時だけのスキルや姿勢ではだめなのだと思う。日頃からオープンでフラットな会話を心掛けて、現場で穏やかな会話が成り立つ関係を築いておくことが必要なのかも知れない。
■分かってる?
通常、私たちは対面で接するときには言語コミュニケーションと同時に、非言語コミュニケーションを行っている。言葉の意味とともに、言い方やニュアンス・声量や抑揚・表情や動作などから、言語化されない感情を読み取っている。対面中にうなずく・微笑むなどの非言語コミュニケーションを伴うと、脳の前頭前野の血流が増え、互いに理解が深まり相乗効果を呼び信頼関係につながる「同期」が生まれる。しかし、テレワークや、本社と支社など物理的に離れていてオンラインでの対話になると、交換されるのは必要情報のみになりやすく「同期」が活性化せず距離感が解消できなくなるらしい。やはり人間は(時に煩わしい問題があっても)同じ空間を共有する経験を一度はしておくことで、安心感や信頼感が醸成されていくのかも知れない。無駄話や振舞いから、傾向や状況などが分かることも多い。
かと言って、コミュニケーションのセオリー厳守が過ぎて押し付けや思い込みに陥り、かえって不信感や離反を招く場合もあるから注意しなければ。人間は意外に他人の思惑に敏感だ。結局は飾らぬ平常心で、作意なく誠実に対処する以外に最善策はないのかも知れない。
2023年6月21日 (水) 銀子