マグレガーが唱えた「X理論 vs Y理論」とは?経営に携わる方々にとって最も基本的で素朴な問いである、「働く意欲をどうやって上げればよいか」について古典を紐解きます。
モチベーションのマネジメント(1) ―マグレガー理論の正しい理解のために―
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.古典と呼ばれる有名な理論の共通点は、人間行動を対照的な2つのパターンに分類し、それぞれに合ったモチベーションの上げ方を分析するというアプローチをとっていることである。
2.経営学の巨人であるマクレガーは、X理論とY理論のいずれの前提に立つかに応じてモチベーションを管理する手法のあり方が異なると主張している。
- ■経営の基本としてのモチベーション
- 働く意欲をどうやって上げればよいか(モチベーション)は経営に携わる方々にとって最も基本的で素朴な問いです。経営学においても、モチベーション理論には多くの展開があり、決定版といえるような理論は存在しませんが、古典と呼ばれる有名な理論には、そのアプローチ法や展開の仕方に1つの共通点が見られます。
- ■人間行動を分類
- それは、人間のもつ心的特性を見極め、そこから導かれる人間行動を対照的な2つのパターン(「人間モデル」)に分類し、それぞれに合ったモチベーションの上げ方を分析するというアプローチをとっていることです。マグレガー(D.McGregor)のいうX理論 vs Y理論は典型です。
- ■マグレガーの理論
- マグレガーは、1960年に発表した『企業の人間的側面』(The Human Side of Enterprise)という書物で一躍有名となり、その後の経営学やマネジメント 思想のトレンドを変えた、経営学の巨人です。ただ、有名な書物の割には、 「X理論・ Y理論」のとらえ方については誤読も多いので、マグレガー理論の 正確な理解のために、ここで簡単におさらいをしてみましょう。
- ■人間性悪説:X理論
-
マグレガーは、人がなぜ働くのかに関して、対照的なX理論、Y理論を発見し、X理論には次の3つの前提があるとしています。
1.普通の人は生来仕事が嫌いで,できることなら仕事はしたくない
2.たいていの人は、脅されない限り、目標達成のため働かない
3.普通の人は命令される方が好きで、責任回避し、安全を望む
この前提の背後には、人間を"怠け者"と捉える性悪説的な考え方があります。 - ■人間性善説:Y理論
-
X理論とは対照的に、"性善説"を前提とする考え方ををY理論と名付けています。
1.仕事で心身を使うのは当たり前のことである
2.人は,進んで身を委ねた目標のためには自らにムチ打って働くものである
3.目標達成は報酬次第、特に自我欲求と自己実現欲求が重要である
4.適切な条件さえあれば自ら進んで責任を引き受けようとするものである
5.企業内の諸問題解決に高度な想像力や創意工夫を発揮するものである
6.現代企業(1960年頃)では、従業員の知的能力は一部しか活かされていない - ■モチベーションを管理する手法に違いが
- マグレガーは、X理論とY理論のいずれの前提に立つかに応じてモチベーションを管理する手法のあり方が異なると主張しています。実は、この解釈に誤解が多いので、次回、この誤解について述べることにしましょう。