前回ご紹介したマグレガーの「X理論 vs Y理論」に対するありがちな誤解と、使い分けの重要性について言及します。
モチベーションのマネジメント(2)―マグレガー理論の正しい理解のために―
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.マグレガーによると、マネジメントには、強制・賃金・罰則を与えながら外から統制しようとするX理論と、従業員の主体性に任せるY理論とがある。
2.業種や仕事によって、X理論/Y理論を使い分ける必要がある。W. オオウチ(William Ouchi)は、X理論・Y理論双方の優れたところを集めたZ理論という新しいマネジメント手法を提唱し、日本企業の経営がZ理論で行われていることを検証した。
- ■アメとムチのマネジメント
- 前回はマグレガーのX/Y理論の概要について述べましたが、今回はこのマグレガー理論に対する、ありがちな誤解について述べます。X理論に基づく、“人間性悪説”的なマネジメントでは、人間は仕事嫌いであると仮定しますので、従業員に対し強制、賃金、罰則などの「アメとムチ」を適宜与えながら外から統制しようとします。
- ■信頼して任せるマネジメント
- 逆に、大概の人間は仕事嫌いではなく、自主的に目標を設定し、創意工夫を主体的に編み出しながらその目標を達成しようとすると捉える“人間性善説”のY理論によれば、従業員各自が個々に成長し、自分を人間として伸ばしていきたいという自己実現欲求を充足させることを通して、組織目標の達成を志向していきます。
- ■X理論は古いか?
- マグレガーは、X理論は古い時代の管理論(「経済人モデル」)の人間仮説であり、今後の企業はX理論よりもY理論に立脚したマネジメントに変えていかなければいけないと述べています。本当にそうでしょうか。ここで重要なポイントは、人がなぜ働くのかに関して全く異なる2つの考え方が、たとえ現代企業であっても存在しうる、ということです。
- ■X理論の有効性
- さらに重要なのは、「X理論=悪い考え方」ではないということです。一見まじめに働きそうな従業員であっても、仕事をせずサボってしまうことがあります。こうした従業員に対してY理論的マネジメントだけでは済みません。X理論も真実の一面を捉えています。
- ■業種や仕事に応じてX理論/Y理論を使い分ける
- 現代企業の多くは、一見やさしく映るY理論の考え方をホームページや会社紹介、人事採用関連のサイトに書いています。しかし、原発を運営する電力会社、交通を担う電鉄や飛行機の会社など業種によっては、従業員の主体性を認め過ぎると人命を脅かすことになり、Y理論をそのまま許容するのも問題です。
- ■日本企業はX理論/Y理論の“いいところ”どり
- このマグレガーのX理論・Y理論を基本として、「Z理論」という新たなマネジメント手法を提唱したのが、日系3世でUCLA教授を務めたW. オオウチ(William Ouchi)です。日本企業の経営はX理論とY理論の両方の優れたところを集めたものであることを検証し、日本的経営についての研究系譜や1980年代以降にアメリカで展開された人的資源管理論の先駆けとなりました。