今回の『銀子の一筆』は「銀子と新入社員が語り合う」というコンセプトのもと、対談形式でお届けいたします。こちらの記事をお読みになってからだと、さらにお楽しみいただけるかと思います。是非ご覧ください。
◆対談者
銀子(70代古稀ライター)以下:銀子
小林(WEB制作責任者)以下:小林
新人A:
新人G:
新人T:
◆自分に自分で縛りをかけるのはつまらない
小林:
『銀子の一筆』にて文章を書いている70代のライター銀子さんに、新入社員の三人が記事に関する疑問や感想を投げかけ、幅広い話題について議論を深めていただく対談企画です。進行役はわたくし小林が務めます。
タイトルは『限界は誰がきめるか』、これは私が銀子さんに頼んで、シニア・高齢者の方の活躍や、そのバイタリティの源について書いてほしいということでお願いした文章です。 銀子さんがこの記事を書いている中で一番伝えたいと思ったところはどこだったのでしょうか。
銀子:
今はビジネスパーソンが多い時代で、退職年齢や階層・立場などで行動を考えたりすると思うんですけど、本当は社会の標準はこれだというのではなくて、自分ができることを一生懸命やるという、そういう気持ちだけで挑戦するのがいいと思っています。
年齢や性別、社会的な階層や立場など、または優越感や劣等感など、自分で自分を縛らない方がいいと思っているんです。
記事の最後に「いくつになっても、自分の限界を決めつけないことこそが、大事なのだと思える」と書いた通り、それは何も高齢者だけに限らず、若い人、大学生でも誰でもそうだと思います。「自分はこう行くのが順当ではないか」とか、「こうあるべきではないか」というのではなくて、組織の中に入れば組織のルールは守らなくちゃいけませんけど、それでも「おかしい」とか「もっとこうしたら」ということがあったら率直に上司に相談するとか。「入りたての私がなんか余計な事言ったら怒られるんじゃないか」とか、そういう風に思わない方がいいかなと思います。
言ったら怒る上司もいるかもしれないけど、怒られたら怒られたでそこから学べばいいのだと思っています。怒られることや失敗を恐れ過ぎない方が、自分の成長になると思います。
小林:
新人の皆さんに記事にする質問を用意してきてもらっているので、順番にお願いしたいと思います。ではGさんからお願いします。
新人G:
この原稿を読んで感じたことは、やはり自分でも気づかない間に自分に対して制限をかけている時があるなということです。私自身は悩む時間が多いタイプなんですが、社会人になって、時間の使い方について改めて考えたときに、悩む時間が嫌な自分に気づきました。最近、悩むことにかける時間を決めてしまおうかとすら考えていたところだったので、銀子さんのようになりたいと思いました。
自分に制限をかけないということは私にはかなり難しいことなのですが、銀子さんにとって、挑戦することの原動力はどういったところにあるのでしょうか。
銀子:
私だって、限界は決めない方がいいといっても、何をやってもいいと思っているわけではないんですよ。(笑)ルールとか自分の良心だとか、バランスだとかいろんなこと考えますけど、自分が躊躇してしまいそうなときには人に相談するのも大事ですよね。上司だとか先輩だとかの意見を聞くのもいいし。私は誰にも相談しなかったんですが。
50年以上フリーランスだった私と、組織で成長していくビジネスパーソンとは違うかもしれませんが、それでも「これはやるべきだ」と思ったときには躊躇せずにやるべきだと思っています。
意識して「限界を乗り越えるぞ!」と思って生活しているわけではないですけど、Gさんの言うように、自分に自分で縛りをかけるっていうのはつまらないことだと思います。
失敗はこわいけれど、人は誰でも失敗する権利があるわけですから。だから、権利がある間は失敗して、怒られて、立ち直って成長すればいいんじゃないかなと思います。
小林:
失敗できるのは新人の特権ですからね。失敗できるうちにいろいろチャレンジしていただければと。
自分の能力って、自分が思っているのとちょっと違う時がある。できないと思っていてもやってみると意外とできたりします。自分はできないから、向いてないからという先入観でやらないのはもったいないと思います。
ただし、やってみて向いてないなと思うこともある。とにかく最初は試行錯誤してみてほしいと思います。
◆良いことも悪いことも自分の責任
小林:
それでは次はAさん。お願いします。
新人A:
記事の中の『もしかしたら「もう年だもの」と決めつけているのは、世の中よりも、高齢者自身なのかも知れない。』という文章にハッとさせられました。
私自身も、「もう遅いかな」と思って挑戦したかったことをあきらめてしまうことが多いのですが、銀子さんを見習って、めげずにチャレンジしていきたいと思いました。
日本にはまだまだ年齢で制限をかけてしまう文化があると思いますが、インソースの研修の中には高齢者の活躍を支援するものもありますので、そういったものを通して、高齢者が活躍しやすい社会づくりをお手伝いしたいとより強く感じました。
記事の中に「見る前に跳ぶ」という言葉が出てきます。私もどちらかといえば「見る前に跳ぶ」ことの方が多いように感じるのですが、一方で、大きな間違いをしてしまうのではないかと不安になることもあります。
銀子さんが「跳ぶ」前に「これだけは気をつけたい」と思っていることがあれば教えてください。
銀子:
銀子 良いことも悪いことも自分の責任だと覚悟することですね。何が起きても自分で片づけるよりしょうがないなということかな。「跳ぶ」時には、成功の希望も失敗のリスクも込みですから。自信とか成功とか失敗とか考えず、覚悟だけでした。
私は正直に言って、組織に入って暮らすのが初めてだったので、ほんのつまらないことが原因でも「これがもとでクビになってもしょうがないな」と思って働いていました。
最初入社したころ私、赤い洋服を着て行ったことがあったんですけど、いざ会社に着いてみたら赤い服を着ているのは私だけで「ああ、もうこれでクビになっても仕方ないな」と思いました(笑)
だから、ある意味開き直ることも大事だと思っています。そんなに四方八方の顔色を伺ってしまうなら、または失敗するのが絶対いやなら、見る前に跳ばない方がいいです。跳ぶことだけがいいわけじゃありません。
小林:
本当に跳びたいと決心したなら、そのあと失敗してしまっても納得できそうですね。逆に言えば、自分の行動に責任を取れないうちは跳んじゃいけない気がしますね。
銀子:
私はこんな風に野放図に自由に生きてきたんですけど、それでも心がけてきたことが一つあるんです。新入社員の皆さんもきっとそうだと思うんですけど、私は、自分が跳ぶ前に周りの人、つまり自分の上司とか先輩、お客様だとかに言われたことを、とにかく黙ってやってみようと思っていました。
社会人の順番として、まずするべきことをする。その次にはできることをして、三番目には好きなことをする、と思っています。よく転職サイトの広告などで「自分のしたい仕事じゃなかったのでやめます。」という言葉を見かけますけど、私は本当に「自分のしたい仕事じゃなかった」と分かったのかなと疑問に思ってしまいますね。
仕事していると良い時も悪い時もありますけど、「自分のしたい仕事」かどうかは、いろいろな局面を潜り抜けてきて初めてわかることなので。やるべきこと、できることに徹底的に取り組んだ後、好きなことができるようになった人だけがはじめて、見る前に跳ぶことができるんじゃないかと思っています。その辺の大まかなプランは少なくとも立てておいた方がいいです。決していつでも跳んでいいわけじゃないんです。
◆これからの社会にできること
小林:
最後はTさんお願いします。
新人T:
私はAさんとは対照的に、見る前に跳ぶどころか、跳ぶ前には勝算などを細かく計算するほどの慎重派なのですが、記事を読んで、銀子さんのようなある種の大胆さは持ち合わせて生きていきたいものだと思いました。
それと同時に、記事の中で銀子さんも言及している「99歳で車椅子生活になっても、世界最高年齢の現役化粧品訪問販売員としてギネスに載った女性」のような、高齢者か活躍する社会のロールモデルになる人・企業を、社会がもっとアピールしていくべきだと思いました。個人にできることには限界があっても、社会全体が変わろうとすれば可能性はもっと広がると思うからです。
銀子さんは70歳で就活をされたと記事にありますが、その経験を振り返った時、これからの社会・企業にできることは何だと思われますか。
銀子:
私は「70歳で就活する方もすごいけど、70歳を雇おうと決めた企業もすごい」と思いましたよ。働きたいという気持ちだけで挑んできた高齢者を採用しようと思う勇気と、その企業としての自信と覚悟は、本当に称賛に価すると思いました。私が採られたからほめるわけじゃないですけど。
そういう、一つ一つの小さいことへの姿勢が企業姿勢になっていくと思うので、周りに見えにくいことへの真摯な姿勢を示すことによって、社会からの信頼感を積み重ねていけばいいのではないでしょうか。
そういう企業が存在しているということそのものが、社会へ連帯を示すメッセージになっているんじゃないかと思うんですね。
小林:
銀子さんの記事を読んだ人が少し前向きになってくれたら、我々としても本望ですね。小さなことですけど、少しでも人の役に立てたらうれしいなと思います。
それと同時に、最初に道を切り開く人はいつだって一人で、その背中をみてついていこうと思う人たちが増えていくものだと思うので、世間に道を示すような企業になるべく、インソースもよりアピールを重ねていけたらと思います。
あとがきにかえて
今回は、インソース最高齢のライターである銀子さん(仮名)にお話を伺った。
この対談企画は、もともとはメディア事業部のインターン生である新入社員の三人が、一からwebページを作成するというミッションのもと立ち上がった企画だったが、銀子さんにお話を聞いていく中で、図らずも人生論を交えた深い議論に話が発展したのは興味深かった。
女性が外に出て働くということが当たり前ではなかった時代に、まさに人々に道を示すように人生を切り開いてきた銀子さん。人生の大先輩である彼女にお話を聞く機会をいただけたのは、社会人の卵としても一人の女性としても大変意義のあることだった。
「見る前に跳ぶ」。そんなことができるほど一人前になれる日は来るのだろうか。
つい、遠い目をしてしまう社会人一年目だが、銀子さんにいただいた言葉を胸に、社会の荒波に立ち向かってゆきたい。
新人T
小林です。最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この座談会は私が企画しました。
新入社員3名が、自分と違う年齢・立場の人間と話をすることで、視野・視座を高めたり、また話の内容を受け止め、咀嚼し、自分なりのアウトプットを出すことが、今後、仕事をしていく上の基礎として活きるのではというねらいで行いましたが、一定の効果があったのではと自負しています。
今後も、インソース、また新入社員3名を皆さんの温かい目で見守っていただければと思います。宜しくお願いいたします。
小林(WEB制作責任者)