大企業では,管理職とは一般に課長職以上を指すことの方が多く,部下がいなくても,組織上「係長」に就いている場合,「名ばかり管理職」といえます。今回は,係長職に求められる本当のスキルや能力について考察いたします。
できる係長になるために ―係長の役割考―
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.ヒューマン・スキルやコンセプチュアル・スキルは、若いときこそ身につける
2.テクニカル・スキルの意味や存在意義を考える癖をつける
- ■係長職とは
- 日本の大企業では,管理職とは一般に課長職以上を指します。配下に自身が管理する部下が居ないにもかかわらず,組織上「係長」に就いている名ばかりの場合もあります。係長職をきっちり務めるために求められるスキルや能力とは何でしょうか?
- ■R.カッツのテクニカル・スキル論
- 係長と課長,部長の職責の違いを,ハーバード大学のカッツ(Katz, Robert, L.)教授は,マネジメント層によって求められる能力が異なることから次のように説明しています。
-
1.テクニカル・スキル
係長クラスのロワー・マネジメント層に必要な業務知識
2.ヒューマン・スキル
ミドル・マネジメント層に求められる,目的達成のためのコミュニケーション力
3.コンセプチュアル・スキル
発生している事象や状況を構造的・概念的に捉え,事柄や問題の本質を見極める力 - 2や3のスキルは課長,部長になってから身につければよいようですが,果たしてそれで良いのでしょうか。
- ■コンセプチュアル・スキルこそ若い時期に
- 実は,ヒューマン・スキルやコンセプチュアル・スキルは,一定以上の年齢になってから身につけるのは困難です。係長職に居る若い頃にこそ,その会社の一番重要な戦略上の問題を,社員に考える癖をつけることが必要といえます。
- ■テクニカルな事象の背後にある意味を考える癖を
- テクニカル・スキルのみを切り離して教育訓練しようとするのではなく,ヒューマン・スキルやコンセプチュアル・スキルもともに高めていけるような教育プログラムであれば良いでしょう。些細なテクニカル・スキルでも,その背後にある深み―意味や構造,その存在意義―を,係長になろうとする若い社員にも考えさせるような教育の実現が課題です。